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【四輪操舵】画期的システム!?4WSシステムの誕生と解説!

2019年06月26日 (更新:2020年08月04日)

【四輪操舵】画期的システム!?4WSシステムの誕生と解説!

四輪を操舵する4WSは意外なほど古くから存在するシステム。4WSの誕生とメリット・デメリットについて解説します。4WSは2000年あたりを境に一度は消滅したものの、近年はポルシェやルノーといった海外ハイパフォーマンスカーを中心に4WSの有用性が再び注目されています。

4WSとは!?

Akira R31さんのスカイラインHR31の画像
Akira R31さんのスカイラインHR31の画像
引用元:Akira R31さんの投稿

4WSとは「4 Wheel Steering」の略称。四輪操舵システムのことであり、一般的な前輪操舵にに加えて後輪も操舵させることで運動性能を高めるシステムです。4WSが考案されたのは意外なほど古く、1937年に登場したメルセデス・ベンツ G5や軍事車両、特殊車両などのごく限られた環境下での走行性能を高めるために搭載されたのが始まりです。

スポーツ走行のための4WS

運動性能を高めるための4WSが世に登場したのは、1985年に登場した日産 スカイライン(R31)に搭載された「ハイキャスシステム」が世界初。それに続き、ホンダ プレリュード、トヨタ カリーナEDをはじめ多くのメーカーがこぞって4WSを搭載しました。4WSの運動性能の高さは、ミッドシップレイアウトの高級スポーツカーに迫るスラロームタイムを叩き出すほどであるものの、自然な操舵感覚とはいいづらい面がありました。

また、日産 スカイラインGT-R(R32)のレース車両では、あまりのパワーと旋回性能の高さに4WS機構が壊れてしまう事態になりました。信頼性の低さとコストの高さが目立ち、2000年代に入ると低迷するスポーツカー市場に引きずられるように、4WSはほぼ消滅してしまいました。

最新の4WS

近年、4WSが再び注目されています。ポルシェ、フェラーリ、BMWなどの一部車両には、緻密な電子制御と強靭な機構部をもった最新4WSが搭載されています。現在の4WSのは、自然な操舵に感じられるよう改善され、車両の旋回性能と安定性能を向上させるためデバイスとしてハイパフォーマンスカーを中心に装着車が増加傾向にあります。

メーカー名4WS名称
アウディダイナミック・オールホイール・ステアリング
BMWインテグレイテッド・アクティブテアリング
ポルシェリアアクスル・ステアリング
ルノー4コントロール
レクサスLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)
ホンダPAWS(プレシジョン・オール・ホイール・ステア)
日産DAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)

4WSのメリット

Jellyさんのメガーヌホイールの画像
Jellyさんのメガーヌホイールの画像
引用元:Jellyさんの投稿

狭い場所での操作性が向上

低速域において、フロントタイヤと反対方向にリアタイヤをステアすることで最小回転半径を小さくし、ホイールベースが長い車でも小回りがきくようにできます。アウディではリアに5°の操舵角度を与えることで最小回転半径を1m以上小さくすることに成功しています。また、フロントタイヤの軌跡の内側をリアタイヤが通ってしまう内輪差を解消することもできるため、駐車時などの操作性が飛躍的に高まります。

高速安定性の向上

高速域では、フロントタイヤとリアタイヤは同方向へステアします。そのため、高速道路上での4WSによるレーンチェンジは、車を曲げるのではなく平行移動するような動きで高速域でも安定した挙動に終始します。また、高速コーナリング時のリアタイヤは、遠心力に抗う方向に向かおうとするため、リアタイヤのグリップ限界を向上させることができます。

回頭性の向上とアンダーステア抑止

アンダーステア抑止のために、4WSでは高速域でリアタイヤがフロントタイヤと同じ方向を向く前に、一瞬だけ反対方向に向くように制御されます。高速コーナーへのターンイン時にリアタイヤが外側へ巻き込むような動きをさせることで鋭い回頭性を実現します。動作はほんの一瞬であるため、ステアリングレスポンスが向上したように感じられます。

4WSのデメリット

トムさんのスカイラインGT-RBNR34の画像
トムさんのスカイラインGT-RBNR34の画像
引用元:トムさんの投稿

車重の増加

4WSは大掛かりな装置であるため、車重の増加が懸念されます。重心の低い位置に取り付くとはいえ、油圧機構やモーターは重量物。出力に余裕のないコンパクトカーなどの実用車では、車重の増加による燃費悪化が避けられません。また、小さく軽いコンパクトカーよりも、大きく重い車の方が4WSの効果を体感しやすい傾向にあります。

コスト高

機構自体はそれほど複雑ではないものの、4WSではの導入には高いコストがかかります。大きな力を受け止めるリアタイヤを走行中にステアさせるためには、高強度の油圧アクチュエーターやモーターが必要であるうえ、自然な挙動をつくりだすために緻密な制御プログラムの開発とテストをおこなわなければいけません。またメンテナンスコストも多分にかかります。そのため、現在4WSが搭載される車は高額車やハイパフォーマンスカーに限られています。

トラックや商用車・建機にも採用された4WS

ハッチーーさんのイベントの画像
ハッチーーさんのイベントの画像
引用元:ハッチーーさんの投稿

後輪操舵であるフォークリフトはその場で回転できる優れた機動力を有しています。後輪操舵は機動性に優れる反面、挙動変化が大きいため、運用速度域の高い自動車ではわずかな舵角変化しか与えることができません。しかし、用途を限定した特殊車両ならば4WSの利点を大きく活かせるため、古くから4WSが採用されていました。

代表的なのは、アポロ計画で使われた月面探査車。アポロに4WSが採用された理由は機動性の確保の他に、万が一故障しても前後どちらかで操舵できるように、バックアップの意味もあったとされています。

また、一刻を争う人命救助のために、狭い路地に入っていかなければならない消防のはしご車やクレーン車、救急車も4WSを採用することで高い機動力を発揮。効率よい移動を必要とするトラックや商用車、建設機械にも4WSがが採用されます。もともと後輪操舵のフォークリフトのなかには、4WSを採用し平行移動を可能とするものもあります。

4WSのまとめ

OMボデーさんのランサーエボリューションXの画像
OMボデーさんのランサーエボリューションXの画像
引用元:OMボデーさんの投稿

4WSが再び注目を集めたのは、強力で小型のモーターやアクチュエーターが開発されたことと、電子制御の精密化による自然な操舵が可能になったことに起因します。また、タイヤ性能やサスペンション、デファレンシャルなどの根本部分の改善だけでは、これ以上性能を上げられないところまで、スポーツカーのコーナリング性能が高まりつつあるとも読み解くことができます。最新4WSはハイパフォーマンスカーの性能をさらに高めるためのブレイクスルーとなるでしょう。

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