2019年05月15日 (更新:2020年08月06日)
マツダにはなぜ2つのエンジンがあるの?その違いって?
マツダ車に搭載される2種類のエンジンについて解説しいます。マツダ・スカイアクティブ技術を投入したスカイアクティブ-Gとスカイアクティブ-D。このふたつはなにが違うのでしょうか。スカイアクティブ-GとD、その先にあるスカイアクティブ-Xについても触れています。
SKYACTIV TECHNOLOGYによって生み出されたエンジン
マツダでは、同一車種にスカイアクティブ-Gとスカイアクティブ-Dの2種類のエンジンを搭載します。
このふたつのエンジンは、マツダがSKYACTIV TECHNOLOGY(スカイアクティブテクノロジー)と呼ぶ技術によって、従来のエンジンに比べ大きく性能向上が図られたエンジンです。
SKYACTIV TECHNOLOGYとは
SKYACTIV TECHNOLOGY(スカイアクティブ・テクノロジー)とは、マツダが2007年3月に発表した技術開発計画「サステイナブルZoom
- Zoom宣言」にもとづき、「2015年までに、グローバルで販売するマツダ車の平均燃費を2008年比で30%向上させる」ことを目標に生み出されたマツダの次世代新技術。
具体的には、車のあらゆる構成部品の設計をいちから見直し、高出力・低燃費・フィーリングのよさと、人と車の一体感を実現したマツダらしい車をつくるための技術です。
マツダに2つのエンジンがある理由
マツダ車に搭載されるエンジンは、「SKYACTIV-G(スカイアクティブ-G)」と「SKYACTIV-G(スカイアクティブ-D)」の2種類のエンジンに分けられます。スカイアクティブ-Gは一般の車に広く使用されるガソリンエンジン。スカイアクティブ-Dは、燃料代が安価な軽油を使用し、ガソリンエンジンよりも高トルクを発揮することが可能なディーゼルエンジンをベースとしています。
環境負荷と販売需要を両立させるため
現在ではディーゼルエンジン廃絶の動きが高まっているものの、マツダが海外の販売拠点としている欧州では二酸化炭素排出量の少ないディーゼルエンジンがいまだ多くの需要を占めます。メルセデス・ベンツ、BMW、PSA(プジョー・シトロエン)など欧州主要メーカーはもれなくディーゼルエンジンをラインナップするため、その対抗馬としてマツダはディーゼルエンジンを生産します。
また、ディーゼルエンジンは、ガソリンの副産物である軽油を燃料として使えることが利点。さらに、二酸化炭素量が多く、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)が比較的少ないガソリンと、反対にNOxやPMの発生量が多い代わりに二酸化炭素排出量の少ないディーゼルエンジンを併用することで、トータルでの環境負荷バランスがとれることも重要です。環境性能と販売需要を満たすために、スカイアクティブにはふたつのエンジンが用意されています。
##スカイアクティブ-Gとスカイアクティブ-D、 2つのエンジンの違いってなに?
ガソリンエンジンのスカイアクティブ-Gと、ディーゼルエンジンのスカイアクティブ-Dの違いは、使用する燃料による圧縮比の違いがもっとも異なる点です。
圧縮比とは、燃料と空気が混ざりあった混合気をどれだけ圧縮して点火するかを比率で示したもの。高圧縮比であるほど高い出力を発揮することができますが、圧縮比を高めすぎると、加圧された混合気は自然着火温度まで発熱してしまい、不必要なときに爆発を起こしてしまいます。
これが一般的にいわれる異常燃焼(デトネーション・ノッキング)と呼ばれるもので、たった一回の異常燃焼で最悪の場合はエンジンを壊してしまうほどの破壊力を秘めています。
そのため、従来のエンジンでは、ガソリンエンジンが、空気10に対して燃料が1前後の比率、着火しにくい軽油を燃料とするディーゼルエンジンでは18:1前後の圧縮比に設定されるのが一般的でした。スカイアクティブエンジンは、テクノロジーにより従来の圧縮比を見直した画期的なエンジンです。
SKYACTIV-G
スカイアクティブ-Gの特徴は、高圧縮比ガソリンエンジンであること。最大14:1まで引き上げられた圧縮比により、約15%のトルク向上を果たし燃費性能も大幅に向上しました。もちろん、単純に圧縮比を14まで高めただけではエンジンは壊れてしまいます。マツダは、排気管設計とピストン形状、燃料インジェクターの設計を見直し、エンジンシリンダー内に残った排気ガスを徹底的に排除することで、レーシングエンジン並の14:1という高圧縮比を実現しました。
これらの手法は、昔からレース用エンジンのチューニングで用いられる技術であり、マツダのスカイアクティブ-Gは一昔前のレーシングエンジンを市販車に搭載しているようなものです。
SKYACTIV-D
スカイアクティブ-Dの特徴は従来のディーゼルエンジンにくらべて低圧縮であること。圧縮比を下げることで爆発力自体は低下しますが、ピストンリング張力を下られるためエンジン内部で失われる抵抗を少なくすることができます。また、エンジン本体やピストン、コンロッド、クランクシャフトなどの動作部品の強度も必要なくなることから、軽量化によって従来のディーゼルエンジンよりも格段にレスポンシブルなエンジンが実現します。
それにより誕生したのが、ディーゼルエンジンの持ち味である高トルクを実現しながら、ガソリンエンジン並の静粛性とレスポンス、環境性能を備えたスカイアクティブ-Dです。
SKYACTIVエンジンが搭載された車種を紹介!
デミオ
マツダのコンパクトカー。1.5Lのガソリンエンジンとディーゼルをラインナップします。
アクセラ
ミドルクラスのセダンとスポーツハッチバックボディを用意。エンジンは1.5Lガソリンと2.0Lのハイブリッドエンジン、1.5Lと2.2Lのディーゼルエンジンを搭載します。
アテンザ
マツダのフラッグシップセダン。ワゴンボディもラインナップします。搭載エンジンは、2.0Lと2.5Lのガソリンエンジンと、2.0Lのハイブリッドエンジン、2.2Lのディーゼルエンジンです。
CX-3
コンパクトクロスオーバーSUV。2.0Lガソリンエンジンと、1.8Lのディーゼルエンジンをラインナップします。
CX-5
ミドルクラスのクロスオーバーSUVです。搭載エンジンは2.0Lと2.5Lのガソリンエンジンと、2.2Lのディーゼルエンジンです。
CX-8
フラッグシップSUVのCX-8には、2.5Lのガソリンエンジンと2.2Lのディーゼルエンジンを搭載します。
ロードスター
縦置き1.5Lエンジンを搭載する後輪駆動の2シーターオープンスポーツカーです。
まとめ
高圧縮比のガソリンエンジンによる高出力と、低圧縮比のディーゼルエンジンによる着火技術が組み合わさると、HCCI(予混合圧縮着火)を応用したスカイアクティブ-Xが誕生します。
ガソリンエンジンを自然着火でコントロールする予混合圧縮着火は、随分前から各所で研究されていますが、実用に成功した例はなく、マツダが世界で初めて部分的にスパークプラグでの着火を併用したSPCCI(火花点火制御圧縮着火)の実用化に成功しました。スカイアクティブ-Xと名付けられた新型エンジンは、次期アクセラ(マツダ3)への搭載が噂されています。
スカイアクティブ-DとGの結果としてスカイアクティブ-Xが誕生したのか、スカイアクティブ-Xの構想が先にあって、スカイアクティブ-DとGの研究開発を進めることになったのかは定かではありません。
しかし、世界で初めてロータリーエンジンの実用化に成功したマツダが、再びスカイアクティブ-Xをひっさげて自動車の歴史に名を刻むことになるのは確実です。