2024年03月30日 (更新:2024年04月01日)
ガラスコーティングとガラス系コーティングの違いと、それぞれのメリットとデメリット
ガラス成分を含むコーティングにはガラスコーティングとガラス系コーティングの2種類が存在し、これらは似て非なるもの。購入する前にそれぞれの特徴やメリット&デメリットを理解しましょう。
ガラスコーティングには2種類ある
ガラスコーティングという言葉はガラス成分を使っているコーティング全部!という意味合いで使用されていますが、実はその成分や仕組みによってガラスコーティングとガラス系コーティングの2種類に分かれます。これらは似ているように見えますが全くの別物で、それぞれメリットとデメリットが異なります。購入時に失敗しないためにも、ガラスコーティングとガラス系コーティングの違いをしっかりと理解しておきましょう。
※ガラス成分を使用しているコーティングではありませんが、知識として3つめの樹脂系コーティングも覚えておきましょう。
ガラスコーティング
ガラスコーティングとは、ポリシラザンなどのガラス成分と、撥水を生み出す撥水基で構成されているコーティングです。液剤は空気中の水分と反応して最長1ヶ月ほどかけて硬化していき、塗装面とガッチリと結合する無機質のガラス被膜を形成します。この被膜は雨や洗車によって流れ落ちることがなく、車のボディコーティング剤の中でも最高の強度を有します。
高密度のガラス被膜による圧倒的な透明度とガラス本来のつややかな光沢が特徴で、高い撥水性能による防汚効果を兼ね備えています。耐久期間は他のコーティングよりも長く、およそ3年から5年です。
ガラス系コーティング
ガラス系コーティングとは、シリコーンポリマーやレジンと呼ばれる樹脂を使用している樹脂系コーティングに、フッ素やガラス成分のケイ素などが加えられているコーティングです。シリコーンポリマー樹脂とともにフッ素やケイ素を塗り広げ、硬化後は樹脂のような比較的やわらかい被膜が形成されます。
樹脂系コーティングのやわらかな光沢とガラスコーティングに近い透明度が得られ、ほとんどの製品が撥水性能を持ち合わせていますが、ガラスコーティングのようにガッチリとボディに結合する被膜ではないため、耐久期間は半年から1年ほどと短めです。
樹脂系コーティング
コーティングには樹脂系コーティングというものがあり、これはシリコーンポリマーレジンなどの樹脂を主成分とするコーティングです。ポリマーコーティングとも呼ばれており、ガラス成分は入っておらず、ポリマーによる油性の被膜を形成します。
樹脂系コーティングは油分による光沢と撥水性能、樹脂による多少の傷埋め効果がありますが、基本的にはボディに油分の塗膜をのせている仕組みのため、耐久期間は3ヶ月〜半年ほどです。
ガラスコーティングとガラス系の見分け方
ガラスコーティングとガラス系コーティングは、ぱっと見だけでは見分けが難しいことが多く悩みどころ。ガラスなのかガラス系なのか、いくつか見分ける方法を紹介します。
液剤の容器がガラス瓶かどうかで判断
ガラスコーティングなのかガラス系コーティングなのかを見分けるポイントのひとつになるのが、コーティング液剤が入っている容器です。液剤がガラス瓶に入っていれば、ガラス系コーティングではなく硬化型のガラスコーティングといえます。
ガラスコーティングのコーティング液剤は空気中の水分と反応して硬化しますが、完全に密閉するにはガラス製の容器を使用する必要があります。ガラス容器やガラス瓶ではなくプラスチック製の容器に入っているものはガラス系コーティングとなるため、注意してみてみましょう。
※ただし、ガラス系コーティングでもガラス瓶に入れて販売しているものもあります。この場合は成分をよく調べて判断する必要があります。
容器がスプレー式かどうかで判断
コーティング液剤がはじめからスプレー式の容器に入っているものは、ガラスコーティングではなくガラス系コーティングとなります。ただし、ガラスコーティングの製品の一部には、塗布時にガラス瓶からスプレー容器に移して使用する製品(シラザン50など)があります。あくまではじめからスプレー容器に入っているものはガラス系コーティングということを覚えておきましょう。
ガラスコーティングのメリット
圧倒的な透明度とツヤ感
ガラスコーティングはガラスそのものをボディに結合させるため、ガラス特有の圧倒的な透明度とツヤ感が得られます。この美観は樹脂系コーティングやガラス系コーティングとは一線を画すもので、コーティング施工前に塗装の磨き作業をあわせて行っておけば、かつてないほどの美しさが手に入ります。
高強度の被膜が長期間持続
ガラスコーティングの被膜はボディに結合するため、ガラス系コーティングや樹脂系コーティングのようにすぐに剥がれ落ちるようなことはありません。高い強度の被膜で塗装を長く保護できるので、ボディの褪色などを防ぐことができます。
洗車傷が入りにくく、汚れが落ちやすい
塗装の上に被さるガラスコーティングの被膜は非常に硬いため、被膜自体に傷が入りにくいため洗車傷が付きづらくなります。硬いガラス被膜には汚れも食いつきにくくなるため、洗車時に軽い力で落とすことができ、洗車がラクになります。
ガラスコーティングのデメリット
高価
ガラスコーティングは液状化しているガラス成分をうまくコントロールするための開発費用や、多量のガラス成分の材料費によって高額になりがちです。強くて美しい被膜を手に入れることができますが、DIYで施工できるガラスコーティング剤は¥10,000〜¥30,000ほどが相場となっています。
水シミなどが付着しやすい
ガラスコーティングで形成されるガラスは無機質で、空気中や雨水に含まれるミネラルなどの無機質をボディのクリア塗装以上に吸着しやすい性質があります。コーティングをしてからのほうが汚れやすくなった!と言われるのはこのためで、ガラスコーティングは塗装面を硬いガラス被膜で保護できるかわりに、汚れの定着を防ぐ定期的な洗車と、ミネラルを除去し表面を整えるためのメンテナンスを数年に1度行う必要があります。
ミネラルの吸着を防ぐために犠牲被膜を重ねる
ガラスコーティング剤には、ガラス被膜の上に別のコーティング被膜を形成する製品もあります。このコーティングはミネラルや汚れがガラス被膜に触れるのを防ぐためのもので犠牲被膜と呼ばれており、ミネラルや汚れをこの犠牲被膜に吸着させることで、ガラス被膜をきれいに保つことができる仕組みになっています。
犠牲被膜をもつコーティングのメンテナンスは、汚れた犠牲被膜を全て落としガラス被膜の表面も少し削り落としたあと、ガラスコーティング剤を塗布してガラス被膜を厚くし、その上に再び犠牲被膜を形成するというやり方で行われます。
洗車とメンテナンスが必要
先述のとおりガラスコーティングのガラス被膜はミネラルを吸着しやすく、汚れを放っておくと被膜が傷んでしまいます。そのため、汚れを落とす定期的な洗車と、ミネラルを除去し表面を整えるためのメンテナンスを数年に1度行う必要があります。このメンテナンスにはおおよそ¥20,000ほどかかりますが、数年に1度メンテナンスを行えば、その後の数年間は洗車のみで普通以上の美しさが手に入り、ボディも保護できると考えれば、維持費としては妥当と言えるでしょう。
落とすのが大変
ボディの表面にガラスを食いつかせるガラスコーティングは、落とそうと思っても物理的に削り取らない限り落とすことができません。DIYのポリッシャー程度で落とせるようなものではないため、業者にお願いして強い研磨でゴリゴリと削り取ってもらう必要があります。
ガラスコーティングを落とすのはどんなとき?
ガラスコーティングを落とす必要に迫らせるのは、コーティングをしてからメンテナンスをせずに長らくそのままだったけど、またボディを綺麗にしたくなったというときです。
ガラスコーティングは定期的な洗車とメンテナンスを続けていれば美観を長期間保つことができますが、メンテナンスをサボるとガラス被膜が傷んで修復不可となり、傷んだガラス被膜でボディがくすんでしまいます。ここからまた綺麗にしようとコーティングを上塗りしても傷んだガラス被膜を取り除いていないのでくすみは取れませんし、塗装の上に硬いガラス被膜があるため塗装自体の磨きも不可。ここで古いガラスコーティングを落とすという作業が必要になります。
施工の難易度が高い
ガラスコーティングは硬化後かなりの硬度のガラスとなるため、液剤の拭き残しやムラが出来てしまうとDIYでは修正が困難です。しかし、最近はボディに霧吹きでスプレーしマイクロファイバータオルで塗り伸ばすだけで施工できるタイプの製品が出てきており、施工難易度がグッと下がってきています。
ガラス系コーティングのメリット
安価
ガラス系コーティングは、成分の大半を樹脂が占めるためガラスコーティングよりも安価です。DIYで施工できる製品の相場は¥3,000〜¥10,000あたりと幅広く、手軽に購入できるのが魅力です。
ガラスコーティングに近い仕上がりが得られる
ガラス系コーティングは、ガラス成分が含まれているためガラスコーティングに近い透明度やツヤ感が得られます。ツヤ感はガラスコーティングのようなパリッとしたものではなく、少し柔らかいなめらかなものになります。
水シミの発生はほどほど
ガラス系コーティングは、ガラス成分が配合されているものの完全なガラス被膜ではないため、ミネラルの吸着はガラスコーティングよりもゆるやかです。しかし、これはガラス成分の配合具合にもよって変わるため、購入前に成分を確認してみましょう。
比較的簡単に落とすことができる
ガラス系コーティングは、ガラスコーティングよりも被膜が弱いため、落としやすさも特徴といえます。耐久期間が経過するかポリッシャーによる軽い研磨を行えば落とすことができるため、ガラスコーティングのように未施工時の状態に戻す難易度が高くなく、気軽にトライできます。
施工難易度が低い
ガラス系コーティングは施工時間などをシビアに管理する必要があまりなく、万が一失敗しても比較的半年から1年で取れてくるため、心理的負担が少ないのが特徴です。手軽にコーティングを施工してみたいという方にはおすすめといえます。
ガラス系コーティングのデメリット
美観はガラスコーティングよりも劣る
ガラス系コーティングの仕上がりは、ガラスコーティングがもつ圧倒的な透明度やツヤ感よりもやや劣るため、パリッとした仕上がりを求める方には向きません。実際にガラス系コーティングを容器に溜めて硬化させると少し白く濁ってしまうものがほとんどで、ガラスコーティングのような完全に透明な被膜が形成されるわけではありません。ガラス系コーティングは手軽さが魅力ですが、これ以上ないという完成度を求める方はガラスコーティングを選択しましょう。
定期的な洗車が必要
ガラス系コーティングも、ガラスコーティングと同様に定期的な洗車が必要です。樹脂被膜は排気ガスなどに含まれる油汚れなどに弱く、ガラス成分も含まれているのでミネラルも大敵。被膜を耐久期間いっぱいまで持たせるために定期的な洗車が要求されます。なお、被膜がやわらかいため、ガラスコーティングと比較すると汚れは食いつきやすくなります。
微細な傷がつきやすい
ガラス系コーティングの樹脂とガラスの被膜はガラスコーティングよりもやわらかいため、どうしても傷がつきやすくなります。ボディの塗装自体は保護できるものの、コーティング被膜に微細な洗車傷などがついてしまうことがあります。
被膜がやわらかく落ちやすい
ガラス系コーティングはベース成分が樹脂のため、耐久期間が経過したり強い洗車を何度も行うと徐々に剥がれ落ちてしまいます。落ちやすいという点はメリットでもありますが、美観があまり長く続かないためコスパを考慮する必要があります。
ガラスとガラス系は別物
ガラスコーティングという言葉はガラス成分を使ってるコーティングという意味合いで安易に使用されていますが、正確には純粋なガラス成分のみを使用しているコーティング剤のことを指します。ガラス成分が含まれるコーティングを試したいと思ったら、ガラスコーティングとガラス系コーティングのそれぞれメリットとデメリットをよく理解して選択するようにしましょう。