2022年06月18日 (更新:2022年07月04日)
車高調とは?種類ごとのメリット&デメリット、トラブル例を解説
カスタマイズの基本ともいえる車高調。今回は、車高調の種類とそれぞれのメリットとデメリット、トラブル例や車検の合格基準を解説します。
車高調とは
カスタムのマストアイテム、車高調。車高調とは車高調整式サスペンションの略です。純正装着のサスペンションとは異なり、車高(地面からの車体の高さ)を調整することができる機能をもつサスペンションのことを指します。
車高調がもつ機能やメリット
車高調はいくつかの機能を持っており、それぞれメリットが存在します。
- 車高を調整できる
- 減衰力を調整できる
- スプリングを交換できる
車高を調整できる
車高を上下に調整することで、ステアリングフィーリングや乗り心地、見た目を変更することができます。車高を下げると車体の重心が下がるため、ステアリング操作時にボディが外側へ振られにくくなるためリニアな操舵感が得られます。乗り心地はシャキッと締まり、安定感が増します。また、車高が下がることで全体が低く見え、よりスタイリッシュなルックスとなります。
減衰力を調整できる
サスペンションはスプリング(バネ)が縮んで衝撃を吸収する仕組みですが、このスプリングが伸縮する速度を制御し収束させる減衰力を発生させるダンパーという機構が備わっています。車高調はこの減衰力の強さを調整できるようになっており、ハード側に調整するとアクセル、ブレーキ、カーブなど走行時にボディが外側へ振られる度合いを抑えることができよりクイックな挙動に、ソフト側に調整すると段差を乗り越えるときの不快な振動を抑え、柔らかな乗り心地にすることができます。
スプリングを交換できる
ノーマルのサスペンションとは異なり、車高調はほとんどが分解可能となっています。スプリングをより硬いものに交換することで高荷重がかかるスポーツ走行に適したセッティングにすることができ、限界性能を引き上げることができます。
車高調の種類とメリット&デメリット
車高調には、車高の調整方法や仕組みによって主に3つの種類があります。
- Cリング式車高調
- ネジ式車高調
- 全長調整式車高調
Cリング式車高調の調整方法
安価かつ扱いやすいのがCリング式車高調です。Cリング式の車高調整方法は、「Cリング」と呼ばれるリングをサスペンション本体にはめ込み、ショックの本体のいくつかの溝にこのリングを移動させ、ロアシートを上下に動かすことで車高調整が可能となっています。
Cリング式車高調のメリットとデメリット
Cリング式車高調は、車高をあらかじめ決められた3〜5つの溝の中からしか選択できないため調整幅が狭い、車高の調整と同時にスプリングが伸び縮みしてしまうことがデメリットですが、ネジ式、全長調整式よりも構造が単純で安価というメリットがあります。
ネジ式車高調の調整方法
Cリング式よりも調整幅が広いのがネジ式車高調です。Cリング式車高調の車高調整方法は、スプリング最下端の台座「スプリングロアシート」と呼ばれる部品を右ネジのナットのようにぐるぐる回して上下に動かすことでスプリングの位置を変え、車高を調整することができます。
ネジ式車高調のメリットとデメリット
ネジ式車高調は、Cリング式よりも圧倒的な調整幅があるうえ全長式よりも安価な点がメリットですが、車高の調整と同時にスプリングのプリロードが変化してしまううえ、メーカーの推奨車高を超えた範囲まで下げるとストロークが減り、底突きというサスペンションがこれ以上縮まない現象に陥りやすいのがデメリットです。
全長調整式車高調の調整方法
車高調整機能に特化しているのが全長調整式車高調、別名フルタップ式車高調とも呼ばれます。全長調整式車高調は、ロアブラケットというサスペンションと車両を下部で結合する部品と、シェルケースというダンパーボディとの位置関係をネジで上下に動かすことで車高を調整します。
全長調整式車高調のメリット&デメリット
全長調整式車高調は、車高調本体の長さを変更する仕組みのため車高を調整してもスプリングのプリロードに影響がないのがメリットです。車高の調整幅は最も広く、かなり低く落とすことができます。しかし、構造が複雑で部品点数も多くなるため、Cリング式やネジ式よりも高額になる点がデメリットです。
種類 | 調整方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
Cリング式 | Cリングを溝にはめ込んで調整 | 構造が単純で安価 | 調整幅が狭く車高調整がしづらい。車高調整と同時にプリロードとストローク長も変化してしまう |
ネジ式 | ロアシートを回転させて調整 | 調整幅が広く、2ケタ万円未満が多い | 車高調整と同時にプリロードとストローク長が変化してしまう |
全長式 | シェルケースを回転させて調整 | 自由度が高くプリロード変化がない | 構造が複雑なため高額な製品が多い |
車高調に発生しがちなトラブル
車高調はサーキット走行など過酷な条件下でも正確に動くよう堅牢に作られていますが、経年劣化などにより車高調特有のトラブルが発生することがあります。
- 異音
- オイル漏れ
- 各部のゆるみ
異音
車高調を含むサスペンションのトラブルで最も多いのが異音です。車高調の異音の原因は多岐に渡るため、異音が発生する状況や音の具合をしっかりと把握しトラブルシュートが必要です。
小さな段差で音が鳴る
小さな段差でコトコトと鳴る場合は、アッパーマウント取り付け部分の緩みやピロボールの摩耗などによってわずかに遊んでいる可能性が考えられます。
ある程度の段差で大きめの音が鳴る
踏切やバイパス道路の継ぎ目などでゴツゴツと鳴る場合は、ブラケットと車両のナックルの取り付け部分の緩みや、アームなどとの干渉が考えられます。ストローク不足による底付きの場合、音とともに大きな衝撃があります。
ステアリング操作で音が鳴る
停車中や走行中のステアリング操作でゴリゴリと鳴る場合は、アッパーマウントのピロボールの摩耗やダンパー内部のパーツの摩耗、破損が考えられます。
ステアリングを回してパキンパキンと鳴る場合は、スプリングとスプリングシートとの摩擦によって発生している可能性が高く、この場合はスプリングとスプリングシートの接触部分を清掃することで解消されることがあります。
オイル漏れ
車高調を含むサスペンションには減衰力を発生させるダンバーが備わっていますが、このダンパーは減衰力の制御にオイルを用いています。このオイルは通常漏れ出ないものですが、ダンパーのシール部分が経年劣化によって弱くなりオイルが漏れ出ることがあります。
オイルが漏れるとダンパー内部に空気が混入しエアレーションが発生、減衰力が正常に立ち上がらず、車体がフワフワと揺れ危険な状態となります。定期的にダンパー部を目視し、オイルの漏れが無いかチェックしましょう。ダンパー部からオイル漏れが確認できる場合、車検は不合格となります。
各部のゆるみ
車高調は分解可能であり、特に全長調整式は多くの部品を組み合わせているため定期的に各部にゆるみのチェックが必要です。車高調のゆるみは最終的に歪みや破損を招くため、ゆるみの無い状態を保つことが重要です。
車高調の寿命
車高調は一般的に3〜4万キロ程度が寿命と言われていますが、明確な寿命というものはありません。しかし、これらの症状が出てきたら寿命と考えてよいでしょう。
- 何をしても異音が消えない
- 車高が落ちてきた
- 動きがスムーズでなく渋い
- 減衰力が弱りふわふわする
- オイルが漏れてしまっている
へたりという現象が発生する
車高調は、長く使用しているとスプリングやダンパーにへたりという現象が発生します。強い衝撃に長時間さらされることでスプリングの全長が縮んで車高が下がったり、オイルの劣化によってダンパーの減衰力が弱くなり乗り心地が不快になります。新品時と比較しこれらの要素が明らかに変化してきたら交換を検討しましょう。
しかし、オーバーホールが可能な車高調もあるため必ずしも買い換えが必要なわけではありません。オーバーホールはいくつかのパーツを使い回すことで安価に仕上げられるため検討の価値があります。
車高調にまつわる車検の合格範囲
車高調を装着後の車検では次のことに注意しましょう。
- 最低地上高は9cm以上か
- オイル漏れはないか
- 各部にゆるみはないか
最低地上高は9cm以上か
車検では、国土交通省の保安基準第3条「最低地上高は9cm以上」かどうかが検査されます。空車状態で、車両の最も低い部分〜地面間の距離を測定し、9cm以上ある状態になっているかを確認しておきましょう。
最も低い部分とは、エアロのフロントリップやマフラーのサイレンサーなど、タイヤホイール以外の全ての部位を指します。
オイル漏れはないか
車検では、サスペンションからオイル漏れが確認できる場合は不合格となります。ダンパー部分にオイル漏れによるシミや、タイヤハウス内にオイルが飛び散った跡がないか確認しておきましょう。
各部にゆるみはないか
車検では、サスペンションを含む下回りにゆるみがないかチェックが入ります。ゆるみがあると不合格となるため、期間や走行距離ごとにチェックするクセをつけておきましょう。
車高調で思い通りの走りにできる
車高調はスポーツ志向に仕上げるための製品と思われがちですが、セッティング次第で乗り心地をさらに良くすることも可能です。オーバースペックな車高調を買ってしまってもコストばかりかかり持て余してしまうので、自分のスタイルに合う車高調を選択しましょう。