車検に通る?通らない?ヘッドライトの“色味“を解説! | CARTUNEマガジン
車検に通る?通らない?ヘッドライトの“色味“を解説!

2019年11月07日 (更新:2020年08月27日)

車検に通る?通らない?ヘッドライトの“色味“を解説!

車検で悩む人も多い”ヘッドライトの色”。車検に通ると思ったら通らなかった、またその逆のパターンを経験した方もいらっしゃると思います。もちろん車検に通るためには光量や光軸も大切な要素ですが、今回は色味に絞って解説します!

ヘッドライトの色は色温度で決まる!

ヘッドライトのバルブの色は、色温度で表されています。販売されているバルブのパッケージに「○○○○K(ケルビン)」と書かれた数値を見たことがあると思います。これが色温度です。

外部からの光エネルギーを完全に吸収して、エネルギーを100%放射するという理想的な黒体があったとき、これを熱して温度を上げていったときに放つ光の色を、相関色温度として表されます。

ちなみに「ケルビン数が大きいほど明るい」ということはありません。ケルビン数はあくまで色を表す単位であり、明るさは関係ありません。

保安基準を確認

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第42条2-3より、【走行用前照灯の灯光の色は、白色であること】と定められています。また、道路運送車両の保安基準第2章及び第3章の規則の適用関係の整理のため必要な事項を定める告示第29条1-ハより、平成17年12月31日以前に製作された車両については、【走行用前照灯の灯光の色は、白色又は淡黄色であり、その全てが同一であること】と定められています。

表にまとめてみると、下記のようになります。

平成17年12月31日以前に製作された車白色または淡黄色で、その全てが同一
平成18年1月1日以降に製作された車白色

ちなみに走行用前照灯とはハイビームのことであり、すれ違い用前照灯がロービームを指します。車検においては、平成10年9月1日以降に製作された車は、原則すれ違い用前照灯で検査が行われ、平成10年8月31日以前に製作された車は、原則走行用前照灯で検査が行われます。

また、検査の際の光度は厳密に数値が決められてる上、テスターを用いて正確な検査が行われます。しかし色については、前述の通り「白色」や「淡黄色」と色名だけで定められており、かつその色の検査は検査官の目視によって行われています。

つまり灯光の色によっては、検査官によって判断が分かれる可能性があるということです!

白色?淡黄色?

白色と聞くと、なんとなく光の色を思い浮かべることはできると思いますが、淡黄色と聞いたら、どんな色を思い浮かべますか?

こんな色を思い浮かべたでしょうか?この写真は、純正で装着されているような無着色のハロゲンバルブを発光させたときの写真です。ちなみにこの色は淡黄色ではなく、保安基準でいう”白色”となります。

淡黄色とは、この上の写真の色です。俗に言うイエローバルブですね。整備士の方やよほど車に詳しい方ではない限り、淡黄色と聞いてこの色を思い浮かべられる人は少ないのではないでしょうか。

またこの色は先ほどの保安基準にもあった通り、平成18年以降に製作された車両のハイ/ロービームには使用できません。

灯光の色は数値で表せる

灯光の色の検査は目視で行われているということですが、もちろん検査員は白色と淡黄色はよく理解した上で検査しています。淡黄色に適合するのはもともとイエローバルブくらいしか販売されていないのであまり問題は発生しません。

しかしここで問題となるのは白の範囲。前述の通り純正の電球色も白、もちろん6500K程度の純白なHIDやLEDも白です。では8000Kや12000Kなど、青みのかかった白は...?

光度は数値で表せますが、実は色も数字で表すことができます。

JIS規格D5500で定められている白色と淡黄色の範囲は下記の通り。

白色淡黄色
0.500≧x≧0.310y≧0.138+0.580x
y≦0.150+0.640xy≦1.290x-0.100
y≧0.050+0.750xy≧-x+0.940
0.440≧y≧0.382y≦-x+0.992
y≧0.440

ちょっとよくわからないですね。

実はこの式をxy色度図へ描くと、図中の白色と淡黄色の範囲になります。

xy色度図と白色,淡黄色の範囲

淡黄色の範囲はほとんど黄色ですが、白色の範囲を見てみるとかなり橙色の部分まで範囲に入っていることがわかります。そのため、先ほどの純正ハロゲンバルブの色は、白色と判断されるのです。

つまり本来であればライトの色を計測し、図中の範囲であるかどうかをチェックすべきなのです。しかし色を計る”分光放射輝度計”は非常に高価であるほか、色は光度と違ってある程度目視でも判別できることから、色は目視で検査するようになったのでしょう。

白色と思われる灯光の色温度を実際に計ってみた

ここで何種類かのハロゲンバルブの灯光色と、分光放射輝度計を用いて計った色温度を確認してみましょう。

純正ハロゲンバルブ

純正のハロゲンバルブを計測したところ、約3170Kでした。最近では台数が減ってきましたが、一般的なヘッドライトの色ですね。余裕で白色の範囲内です。

4400Kのハロゲンバルブ

4400Kとして販売されているハロゲンバルブを計測したところ、約3840Kでした。ガラス管部分が青色に着色されたタイプのバルブですが、パッケージの色温度とは随分と差のある結果となりました。しかし純正ハロゲンバルブの色味と比べると、わずかに白くなっているのがわかります。

5400Kのハロゲンバルブ

5400Kとして販売されているハロゲンバルブを計測したところ、約5170Kでした。純正ハロゲンバルブの色を白く見せるため、かなり濃く青が着色されたバルブです。写真で見ても、純正と比べるとかなり白い光に見えます。こちらも問題なく白色の範囲内です。

白色LEDバルブ

最後は白色のLEDバルブです。写真でもかなり青く見えますが、数値的にも白色の範囲外で、分光放射輝度計では相関色温度を測定することができないほどでした。

実はこれ、日本の量販店で売られているようなメーカーものではなく、海外から輸入された安物の白色LEDです。このような商品は精度が悪く、白色と謳っていても実際は青みが強かったりして、車検に通らない可能性が高くなります。

あえて自動車の知識がない人に灯光を見せた結果...

これらの灯光を、あえて自動車の詳しい知識を持たない人々に見せ、何色に見えるかを質問してみました。

左が5400K、右がLED

すると、5400Kのハロゲンバルブでは回答者の2割が青や薄い青と回答し、LEDについては9割が青と回答しました。回答者の車にこれらのバルブが取り付けられていた場合、「この色じゃ車検は通らないかも」「これなら車検に通る」といった勘違いが発生する恐れがあります。

今回の計測で使ったハロゲンバルブですが、ガラス管を青く着色することで、いわば無理やり白く見せている状態。そのためそもそも発光方式が異なるHIDやLEDでは、同じ5400Kや6000Kでも見える色味は異なり、純白に近い白となります。

色温度が一緒でも色が違う...!?

「同じ6000Kのバルブなのに製品によって色味がちょっと違う!」という経験をした方もいるはず。それは、含まれる色の割合が異なるからなのです。

これは先ほどの5400Kのバルブを計測した分光グラフ。複数計測しているため波長が何本かありますが、要するに同じ色のバルブでも、これだけ含まれている色の割合が異なることを表しています。

特徴としてはハロゲンバルブなので、赤い光が多く含まれます。

こちらはLEDの分光グラフ。ハロゲンバルブと比較すると、含まれる色の割合が異なることが一目瞭然です。また青く見えていた原因はこのグラフの通り、青い光を多く含んでいることが原因です。

このように同じ色温度でも、色を構成する割合が少しずつ異なるため、「同じ色温度のバルブなのに製品によって色味がちょっと違う」ということが発生するのです。

まとめ

SJG_1603さんのフォレスターSJGの画像
SJG_1603さんのフォレスターSJGの画像

いかがでしたでしょうか。白色の範囲って難しいですよね。含まれる微妙な色味によって、車検では白色ではないと判断され、不合格となるケースもあります。

白色として車検に合格するための安全な範囲は、下限は純正ハロゲンバルブから考えるとおよそ3000K、また上限は6500Kといったところでしょう。それ以上色温度が高くなると青みが強くなってくるため、検査官によっては白色と判断されないケースが出てしまうかもしれません。

また海外製の商品は安いからといって安易に手を出すと、想像していた色味ではない可能性も十分に考えられます。長い目で使うのであれば、やはり国内で販売されている車検対応の製品を利用してカスタムすることが望ましいでしょう。

※灯光の写真につきまして、モニターや液晶保護フィルムなどの影響で色味が異なって見える場合があります。参考程度にご覧ください。

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