かつての人気車種トヨタ・マークⅡ 3兄弟。その牙城を崩した車と言えば、FFミッドシップレイアウトによるFRルックのエクステリア・デザインとセンスの良いインテリアで人気になった「アコード・インスパイア」です。その人気の理由を探りました。
初代ホンダ アコード・インスパイアについて
アコード・インスパイアはアコードの上位車種として1989年に登場。ホンダの最上級車としてはレジェンドがありましたが、アコードからのステップアップとなると、そこには大きな価格差がありました。
そこで、その間を埋めるモデルとして誕生したという背景を持ちます。メカニズム面では、2代目レジェンドも採用していた、エンジン縦置きによる「FFミッドシップ」機構を採用。 エンジンも専用設計の直列5気筒エンジンを開発するなど、バブル景気を背景とした贅沢な車作りを経て生み出された車種といえるでしょう。
初代ホンダ アコード・インスパイアの特徴
メカニズム面ではFFミッドシップ・レイアウトを採用したことによりFRルックの伸びやかなデザインを実現。車格的にも当時人気を誇っていたマークⅡ3兄弟と同クラスとし、マルチリフレクターヘッドライトなど当時の最新装備を採用。既存のモデルでは飽き足らないユーザーから多くの人気を集めました。
直列5気筒エンジン
FFミッドシップ・レイアウトを実現するためには従来どおりのエンジン横置きでは実現が困難と判断し、新たに縦置き用に設計されたG20A型直列5気筒2リッターエンジンを搭載。エンジンはフロントバルクヘッドまで後退させて搭載したため、エンジンを車軸付近に搭載する一般的なFFレイアウトと違い、ドライブシャフトを通すスペースがありません。
そのため、トランスミッションを経由して一度フロント側にエンジン出力は戻され、オイルパンの横を左右に貫通してフロントタイヤを駆動するというスタイルに。まるでFRベースの4WD車のようで、生産コストもエンジン横置きのFF車に比べれば高額だったことは間違いないでしょう。
FRルックのエクステリア・デザイン
このFFミッドシップレイアウトによるフロントオーバーハングの短いFRルックのデザインは、直線基調の伸びやかなデザインを実現する上で欠かせないものでした。フロントドアナックルと前輪車軸との位置関係からも、説明されなければFR車に見えます。
当時は採用例の少なかったマルチリフレクターヘッドライトやワイド感を強調するヘッドライト下のコンビネーションランプのデザインも高級感を演出しており、その美しいフロントフェイスも人気の理由になりました。
高級感のあるインテリア
FFミッドシップレイアウトを基本にした新しい高級車像を訴えかけるエクステリア・デザインに対し、インテリアも負けてはいません。インパネ左右をワイドにカバーする高級感のある本木目パネルは高級家具作りで有名な天童木工製。
また、ホンダ車らしく低いスカットルによるルーミーで明るい室内も、従来のホンダユーザーの期待に沿った素晴らしいものでした。シンプルなデザインながらも上質な素材を用いて演出される高級感は、日本車と言うより欧州車的な価値観の提案ともいえるでしょう。
CARTUNEユーザーのカスタマイズ例をピックアップ
メッシュホイールの装着例が多いアコード・インスパイアに対してスポーク系のホイールチョイスに、オーナーの抜群のセンスを感じました。ディスクをボディーと同系色にし、リムはポリッシュとすることで、車体のメッキパーツとの調和を見せています。
カスタマイズされたフロントコンビネーションランプや低く構えた車高とも相まって、高級かつスポーティーという新たな次元へと到達しています。意外性を感じさせながら抜群のまとまりを見せる仕上がりに脱帽です。
前後でホイールデザインを変えるという高度なセンスが求められるカスタマイズですが、違和感は全くありません。ホイールのチョイス、カラーリングと十分に練られたカスタマイズ例です。
やはりシルバー(ポリッシュ)仕上げのリムが重要なポイントではないでしょうか。ここをボディ同色やブラックにしてしまうと車体側のメッキパーツとの調和が崩れてしまいます。メッキパーツのブラック化などを含めてトータルに仕上げる場合は、オールブラックやガンメタ系のホイールチョイスも可能ですが、車自体の高級感との両立は難しくなります。
現行車両ならカスタマイズしてもまた純正パーツに戻すのも容易ですが、パーツの入手が困難になってきているネオクラシック系の車でカスタマイズを行う際は、カスタマイズした場合の(元のパーツに戻すなどの)リスクとのバランスも重要です。
それらの点も十分に検討された上でのハイレベルなカスタマイズ例として拝見させていただきました。
まとめ
FFミッドシップレイアウトで人気車種となったアコード・インスパイアを振り返ってみました。この複雑なメカニズムはわずか2世代しか採用されませんでしたが、その伸びやかなデザインは今見ても格好良いですね。
歩行者との衝突時を考えた安全基準の改定により、低く伸びやかなボンネット高を実現することは難しく、それをベースとした伸びやかなデザインも同様に難しくなってきています。現在の安全基準で作ればもっとマッシブなデザインになってしまうことでしょう。
そう考えれば、今後、この車格でこのような素晴らしいデザインを成立させるのが難しく、その希少性と価値は下がるものではありません。