2019年06月08日 (更新:2020年08月24日)
トレッド、知ってますか?役割や構造を紹介
タイヤと地面が直接接触する部分である「トレッド」という部分、何気なく呼ぶことも時にはあると思いますが、車の操縦に影響するとても重要な部分です。今回はトレッドに関する役割や構造・サイズバリエーションなどについて詳しく解説していきたいと思います。
トレッドについて
そもそもトレッドとはなんなのでしょうか?タイヤが路面と接触するトレッド面という意味で使う言葉と、車の主要諸元でつかわれるトレッドがありますが、2つの意味がありますので、「タイヤとしてのトレッド」「車としてのトレッド」と分けていただいた方がわかりやすいかもしれませんが、この記事ではタイヤのトレッドがメインになります。
タイヤの構造
タイヤのトレッドについて詳しく知っていただくためにも、タイヤの構造について軽く紹介しておきます。タイヤは黒いゴムの塊でできているように見えますが、実はゴムだけでなく化学物質やタイヤの構造を支えるためのワイヤーや繊維等も多数使われています。
カーカスという強靭な繊維構造がタイヤ全体を成形させており、これが軸に当たるビードワイヤーという部品に束ねられ、基本構造となっています。タイヤの「骨」にあたる部分とも言えます。。この基本構造をゴムが覆い、タイヤが成り立っています。ゴムはタイヤの肉にあたる部分です。
タイヤが地面に接触しない側面部分(駐車中一番目につくホイールの周り)をサイドウォールと呼び、走行中のタイヤの形状を支える役割をしています。この部分がしっかり強度を持っていないと、走行中の負荷にタイヤ全体が耐えられず、トレッドの性能自体を引き出すことができなくなってしまいます。
定義
タイヤ関連の用語として「トレッド」が使われる場合は、タイヤが路面と接触する部分のゴム層の事を指しています。このトレッド部にはいろいろな切り込みや溝が刻まれており、これを「トレッドパターン」と呼びます。車の場合には、車両における左右の車輪の中心間距離のことです。
役割
トレッドパターンの役割は「駆動力と制動力の増加」「雨天時のタイヤと路面の間の水を排除」「操縦安定性や放熱性の向上」「デザイン面の美しさ」など、タイヤの性能やファッション効果を高める役割を持っています。
トレッドパターンは左右対称のパターンが多いですが、中には回転方向の指定がある方向性パターンや、左右非対称パターンもあります。それぞれのパターンではメリットがありますので表にしてご紹介します。
対称パターン | 裏表、回転方向に関係なく装着でき多くの車種に取り付けができます。 |
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方向性パターン | ワンウェイパターンとも呼ばれ、溝や切り込みに方向性を持たせて、排水効果を高めます。サイドウォール部にRotation(回転の意味)と回転方向を示す刻印があります。 |
非対称パターン | 左右で模様を変えたパターンで、一般的に外側のブロックを大きくしてコーナリング性能を高めます。サイドウォール部にOUTSIDE(外側)、INSIDE(内側)の刻印があります。 |
このように各パターンごとにタイヤが持つ特性が違います。上記は主に一般的な乗用車で使われるものになりますが、トラックのトレッドパターンにはリブ型・ラグ型・リブラグ型・ブロック型というものがあり、こちらもメリットがありますので、こちらも念のためにご紹介します。
リブ型 | 良路(舗装路面・高速道路)走行に適したパターン。操縦性・安定性が高く転がり抵抗が少なくなっており、タイヤ音も小さくなります。 |
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ラグ型 | 悪路(非舗装路)走行に適したパターン。駆動力・制動力に優れ、非舗装路でのけん引力に優れています。耐カット性に優れるのでパンクにも多少強いです。 |
リブラグ型 | 良路。悪路両方の性能に適したパターン。リブ型とラグ型両方の性能を併せ持っています。 |
ブロック型 | 氷雪路や泥ねい路走行に優れたパターン。駆動力・制動力に優れます。 |
夏タイヤだけでなく冬タイヤにもトレッドは必ずありますが、ちゃんと冬場に必要なタイヤの性能がしっかりと考えられているのがわかりますね。
構造
一般的にタイヤのトレッドはゴムで構成され、トレッドが路面に接触することで摩擦力によってエンジンから発生した動力を地面に伝えます。定義の部分で軽く触れましたが掘り下げていくと、トレッドにはその車輪の摩擦性能(トラクション性能)を制御するための溝が刻まれます。この溝はグルーブと呼ばれ、グルーブによって描かれた模様がトレッドパターン、もしくはパターンとなります。
この紋様やグルーブ自体がトレッドとして誤認されていることも多いです。グルーブによって描き出され独立した接地面を持つ部分をブロックと呼び、ブロックに施された裂け目状の切り込みをサイプと呼びます。現在はトラック用タイヤで、一時寿命が終了したタイヤのトレッド表面を決められた寸度に削り、その上に新しいゴムを貼り付け再利用する「リトレッドタイヤ」という物も販売されています。
グルーブ | タイヤ面の太い溝。ロープロファイルタイヤ(低扁平率)では排水効果の高いストレートグルーブを持つトレッドパターンが主流になっています。 |
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スリット | タイヤ面の横溝。横方向の排水性や接地性を高めるための切り込みです。 |
サイプ | スリットより細かい溝。夏用タイヤにもありますが、冬用タイヤではエッジ効果を高めるためのサイプが多数用いられます。 |
トレッドのサイズはどれくらい?
タイヤのトレッドについての定義や役割などを見ていただいたところで次は車のカテゴリー別にトレッドサイズを見ていきましょう。
車によって様々
車にはコンパクトカー・スポーツカー・スーパーカーなどカテゴライズして呼びますが(私たちが一般的に呼ぶ物で、車検証に記載されているものとは別です)この3種類だと差がわかりやすいので例として違いを見て行ってみましょう。
コンパクトカーの場合
最近のコンパクトカーは燃費性能を向上させるために細めのトレッドに設定されたタイヤが標準装着されていることが多く、トレッド幅とタイヤの断面幅(175/65R15の175という部分)が少なめのものが選択されています。車体サイズにもよりますが、多くのものでは175/65R14〜185/60R16までの範囲で選択されているようです。
タイヤが路面に接触する面積が大きい程、摩擦の抵抗値が増えてしまいますので、燃費が悪化してしまう傾向があります。
スポーツカーの場合
スポーツカーはその名の通りスポーツ走行が楽しめるようになっていますが、摩擦の抵抗値を味方にしたグリップ力の確保や、大型のホイールに装着することにより大型のブレーキが装着できるので制動力の向上にも繋げることができます。純正で多く装着されているサイズの一つに205/55R16などがありますが、最近ではタイヤサイズの大型化が進んでおり、純正で245/40R18などのタイヤを装着している車両もあります。
スーパーカーの場合
スーパーカーはメーカーの技術の集大成としてもモデルが多く、エンジンパワーやブレーキ性能を更に引き出せるようにするため大径、かつワイドトレッドのタイヤが純正装着されることが多いです。スーパーカーの中でもコンパクトに作られているマクラーレンP1でもリヤタイヤのサイズは315/30R20と既に規格外の大きなものが選択されています。
しがしブガッティ ヴェイロン 16.4ではこれをはるかに凌駕する365-710R 540Aという21.5インチの大径であるオマケ付き…これを超えるサイズはなかなか出そうにないですが、ハイパフォーマンスであればあるほどリアタイアのトレッドは大きくなっていく傾向にあるようです。
エコタイヤのトレッド面とハイグリップタイヤのトレッド面
役割という部分では「パターンごとにタイヤが持つ性能を変えることができます」とお伝えしましたが、実際トレッド面はどのように変えられているのでしょうか?タイヤの写真を見ながら違いを探していきましょう。
エコタイヤ
エコタイヤは現在において非スポーツカーに多く装着されていることが多いのですが、有名な技術面での燃費性能の向上は「転がり抵抗(摩擦抵抗)を減らしてタイヤを転がりやすくする」「ゴムの素材や薬品の変更でウェット性能を向上する」などの技術が使われています。タイヤ自体も軽くなるよう設計されているので乗り心地の改善も視野に入れられています。
ハイグリップタイヤとの違いは、高扁平率のものが多くコーナリング時に起きるタイヤのよじれが大きいのでグリップ力が逃げやすく、スポーツ走行には不利になっています。
ハイグリップタイヤ
ハイグリップタイヤはスポーツカーに多く装着されているのですが、「コンパウンドの硬さを変更し路面に食いつきやすくする」「熱が入ることによりタイヤが溶けやすくなるよう設定し、溶け出す力を接着剤代わりに使う」などがあります。路面としっかり接触させなければならないので、トレッドに刻まれている溝は少なめに設定されているものが多いです。
エコタイヤとの違いは扁平率が低いロープロファイリングのものが主流なので、コーナリング時のタイヤのねじれが少なく、連続したカーブでも安定した走りを追求することができます。
フォーミュラーカーのタイヤは溝が無い?
モータースポーツのフィールドであるサーキット、フォーミュラーカーが走る国際サーキットはアスファルトのキメがとても細やかになっておりタイヤの接着面が稼ぎやすくなっています。フォーミュラでは溝がなくてもグリップしてくれる特殊なコンパウンドのタイヤを装着していますが、雨が降ってしまうと排水させる溝がないのでとてもスピンしやすくなってしまいます。
フォーミュラのタイヤには、雨の日専用で使うレインタイヤも用意されており、種類はインターミディエイトやエクストリームウェザーがあり、レインタイヤは市販車同様ちゃんと溝が刻まれています。
まとめ
今回はタイヤのトレッドについてのお話でしたがいかがだったでしょうか。トレッドパターンは各メーカーがそれぞれのタイヤにとって最適な物を開発してくれています。ドレスアップにも使えるトレッドパターンもありますので選ぶ際にはお好みの物を探すのも楽しみのひとつになるかもしれませんね!