2018年08月07日 (更新:2022年03月11日)
ターボ車のブーストアップとは?メリットや注意点を紹介
ターボ車に乗っている方なら必ず一度は試みようとするチューニングのブーストアップ。今回はブーストアップに関する知識やブーストアップ方法、そしてエンジンにも関連してくるのでしっかりメリットやデメリットについても解説をしていきたいと思います。
ブーストアップとは
ブーストアップとは、ターボチャージャーなどの過給機が搭載されている車両のパワーを上げるためのチューニングで、一般的には過給圧をより高めることでそれに合わせてエンジンの出力を増加させることができます。市販車ではエンジンやタービンなどを保護するために低めの過給圧が設定されており、結果としてエンジンやターボチャージャーには出力性能に余裕が残っています。
この余力をしっかりと使い、エンジンやターボチャージャーなどが耐久限界を超えない程度に過給圧を高め、デメリットと相殺させながらより高いエンジン出力を得る事をブーストアップといいます。
ターボ車特有のチューニング
ターボチャージャーには一定の回転数を超えないようにする為、ウェストゲートという制御装置がつけられています。ターボチャージャーは排気ガスを利用して回っており、タービンホイール(タービンの羽)と同軸についているコンプレッサーホイール(コンプレッサーの羽)も同じ回転数で回っています。
タービンホイールが回れば回るほどコンプレッサーホイールも同調して回転するので、圧縮された空気をガンガンエンジンに送ることができるようになります。しかし、これではどんどんタービンホイールの回転数が上昇していき同時に空気も圧縮されてしまいます。こうなってしまったらエンジンは圧縮空気に耐えきれず最終的には壊れてしまいます。
このエンジンの破損を防ぐためにウェストゲートでタービンホイールに当てる排気ガスの量をコントロールし、圧縮圧力を調整する方法を取っています。ブーストアップとは、ウェストゲートが開くタイミングを送らせてタービンの回転数を上げる事で圧縮圧力を上げエンジンにより多くの空気を送り込んであげるチューニングという事になります。
ブーストアップする方法
では、ブーストアップをするための方法やパーツについて解説をしていきます。あくまで方法として挙げていきますので、実際の作業については自己責任でお願いします。とても簡単に言ってしまうと、ブーストリミッターを作動感知している「アクチュエーターというリミッターを誤魔化してしまう」と思ってください。実際にこの手法を使って各ショップからもブーストアップキットなどとして販売されています。
※もちろん部品はしっかりと作られているので安心です。
ここではお手軽ブーストアップではなく、「ブーストアップする方法」なので当たり前ではありますがタービン交換などもご紹介します。
1.アクチュエーターの位置を強制的にずらす
アクチュエーター自体をバールなどで強引にずらしたり、ねじ止めされている部分にワッシャーを数枚噛ませて位置をずらしたり、金属ロッド自体を曲げる事で金属ロッドが動かされてもタービン内の排圧を逃しにくくすることによりブーストアップを行います。
2.オリフィスブーストアップ
アクチュエーターにつながっているホースの中に、穴の空いた小さな球を挿入して圧を弱く流す事でブーストアップさせる。
3.アクチュエーターの金属ロッドをバネで引っ張る
バネの張力を利用してアクチュエーターが金属ロッドを押そうとする力に抵抗をかけてブーストアップをする。
4.強化アクチュエーターを装着する
アクチュエーターの内部はダイヤフラムのような弁がバネの力によって開閉する仕組みになっており、内部にあるバネの張力が強いものに交換されている製品です。上記3の手法と原理は同じですが、振動でバネが飛んだりしないので安全です。
5.調整式アクチュエーターを装着する
アクチュエーターからタービン内部の排圧バルブを開閉させる金属ロッドにネジタップを入れ伸縮可能にした製品です。ロッド部の調整をする事によりブーストアップやブーストダウンが可能になります。
6.ブーストコントローラーを装着する
アクチュエーターとコンプレッサーとの間を介する新たな接続を作り出し、純正の過給圧制御バルブをパスします。新たに接続された電子制式過給圧コントローラーでブーストアップや制御を行います。
6.ブーストコントローラーを装着する
ノーマルのタービンよりも風量が多いもの(ハイフロータービン等)に交換し多くの空気を取り込めるようにする。
8.コンピュータプログラムを変更する
過給圧だけでなく、エンジンの作動制御を司っているコンピュータプログラムそのものをチューニングされたプログラムに書き換えてしまう。
これだけ多くの手法があり、金額としては数十円程度から数十万円までさまざまです。価格が安い方法はリスクも大きいので正直おすすめはできませんが…。
ブーストアップのメリット・魅力
ターボ車にとって良いイメージがあるブーストアップ、やはり一番のメリットはエンジン出力の向上では無いでしょうか。エンジンによってはブーストアップのみでノーマルタービンのままでも出力を大幅に向上させる例もあり、ライトチューンとはいえバカにできない手法です。
魅力はノーマルとしての扱いやすさが失われず今までの乗り方とはさほど変わらないという点です
ブーストアップのデメリット・注意点
では、デメリットとしてはどのようなことが上がってくるのでしょうか。一番に懸念されるのは耐久性の問題です。安全装置とも言えるブースト圧の制御を取り外したり変更したりするので、長期的に見るとノーマル時よりは劣化が早くなりメンテナンスの頻度も上がってしまいます。
注意点としては、ブーストアップが原因でエンジンが破損してしまったとしてもメーカー保証対象外となってしまうので修理は全て有償になります。ブースト圧を上げすぎてしまった場合は燃料系の変更や、インタークーラーを交換するなどして対策を練っていかなければなりませんので費用や時間をかけてしまう事にもなります
ブーストアップに掛かる費用
メリット・デメリット様々ありますが、やはり出力が上がると運転も楽しくなるものです。ここからはブーストアップに掛かってくる費用を見ていきましょう。
部品代
ブーストアップする方法で紹介した順で行くと、金額にはかなりの幅があります。自己責任で行なってくださいという事を再度お伝えしておきますが、表を作ってみたので参考にしてみてください。メリットは十分に伝わっていると思いますので表ではデメリットも記入しておきます。
方法 | 金額 | デメリット |
---|---|---|
1.アクチュエーターの位置を強制的にずらす | ワッシャー1枚数円 | バールでずらすと元の位置に戻らない可能性が高いうえ、最悪破損します。 |
2.オリフィスブーストアップ | 100円程度 | 仕掛けが外れてアクチュエーター内に入ってしまうと最悪です。 |
3.アクチュエーターの金属ロッドをバネで引っ張る | バネ1本数百円 | バネの硬さを選ぶのが難しく、バネ自体での微調整は不可です。 |
4.強化アクチュエーターを装着する | 1万5千円〜 | 過給圧を上げ過ぎた場合、燃料不足等によりエンジンを破損する恐れあり。 |
5.調整式アクチュエーターを装着する | 1万5千円〜 | 過給圧を上げ過ぎた場合、燃料不足等によりエンジンを破損する恐れあり。 |
6.ブーストコントローラーを装着する | 2万5千円〜 | 好きに調整できるのでエンジンに負荷をかけ過ぎてしまうことがある。 |
7.タービン自体を交換する | 16万〜 | 好みによりますが、ハイフローを買うくらいなら社外タービンの方が速いです。 |
8.コンピュータプログラムを変更する | 1回9万円〜 | 時間と費用が思った以上にかかってしまいます。 |
工賃
では、正規の部品を使ってお店で作業してもらう時の工賃はどれくらいなのでしょうか。お手軽なアクチュエーター交換の場合はほとんどのお店が1万円程度で交換をしてくれます。ブーストコントローラーの場合は2万円〜が多くなっています。タービン自体の交換は安くても4万円〜、ECUのセッティングは純正では出来ない場合もありますので、使う部品次第となってしまいます。
まとめ
ここまでご紹介してきたようにブーストアップで起きてしまうデメリットは多いと感じた方もいると思いますが、これらのデメリットを考慮しても負けないメリットや魅力がブーストアップにはあります。ブーストの制御は本来とても難しいものです、過剰に出力を上げるのではなくノーマルにプラスアルファ程度の味付けで楽しむくらいがちょうどいいかもしれませんね。