昭和の遊び心満載のワーゲンバスはウエストファリア快適キャンパー！【第3回オレンジMT】

• 車種：Volkswagen TYPE II
• 年式：1974年（昭和49年）
• 走行距離：40,750km（正確な距離は不明）
• ボディカラー：純正オレンジ（オールペン済）
• オーナー：YASTUDIO
• 所有年数：8年

この日、オレンジMTの会場で一際存在感を放っていた1台。

クラシックで可愛いルックスが大人気の”ワーゲンバス”でお馴染みのフォルクスワーゲン タイプII。たまに街中で見かけると思わず「可愛い！」と思ってしまう1台だ。きっと車に興味がない人にとってもその注目度は抜群だろう。スポーツ系の車が多いオレンジMTの会場でも、ほとんどのオーナーが足を止めこの車に注目していた。

YASTUDIOさんのタイプIIは1974年式。取材時は2021年だから、まもなく半世紀が経過しようとしている。ODOメーターは現在40,750kmを示すが、5桁しかないため何周目の40,750kmかはわからないそうだ。

鮮やかで暖かさを感じるボディ色は純正色のオレンジ。同色でオールペンされているとはいえ、隅々まで手入れされた愛車はとても50年近く経過しているとは思えない綺麗さだ。

この日はオレンジMTに合わせてイベント限定のネコ目仕様。普段はVWのエンブレムが掲げられる前面中央はネコの鼻に付け替えられ、まるで童話やアニメからそのまま飛び出してきたかのような雰囲気がたまらない。この”仮装”が許される車はそうそういないだろう。

今回取材を行わせていただいた第3回オレンジMTは10月31日とまさにハロウィン当日の開催。この日のためにオーナーも気合を入れて愛車を徹底的にハロウィン仕様へと仮装したそうだ。しかもどれもこれもオーナーが手作りで製作したものばかり。できることならみなさんに直接実車を見ていただきたいところだが、本記事でできる限りお伝えするのでぜひ一緒に楽しんでいただければ嬉しい。

上の写真は通常時の状態。仕様を知らなければ一般的なワーゲンバスだ。

ポップアップ式のルーフを開くとご覧の通り。とても開放的な車内空間が生まれる。

こんな仕様が当時はメーカーから販売されていたのだからなんとも羨ましい時代である。

キャンピングカーの老舗、ウエストファリア。コロナウイルスの影響もありさらに注目度を増しているキャンプブームの中ではぜひ抑えておきたいメーカーだ。同社が手がけた中古車はタマ数が少ないし、あってもなかなかポンと購入できる金額ではないが、キャンプを趣味とするならぜひ検討したい。

先ほど外側から見たポップアップ式のルーフを中から見ると上の写真のようになっている。通常時は右側に見える屋根の部分が室内の高さだが、かなり広いスペースが生まれることがわかるだろう。

屋根の部分は引き出すと2段ベッドに早変わりする。奥様やお子さまと一緒にキャンプへ出かけた際、「何もなければ下で一緒に、喧嘩したら上下別々に寝られます。（笑）」と冗談混じりに話してくれた。

MT中はオーナーお気に入りのアイテムが所狭しと並べられ、ショップによる特装車のデモカーのようだった。その車内は基本的にほとんどの部分がオーナーによるDIY製というからまた驚かされる。

開くとカセットコンロをちょうど置ける手前の収納ボックスや、中央奥のソファの下は収納スペースとウーファーが仕込まれている。限られた車内スペースを可能な限り有効に使い切ったレイアウトは、実際に何度もキャンプをしているオーナーが手作りするからこそ生み出せる一品ものだ。　

オーナーがセレクトした小物もセンス抜群で、さながらカフェのような室内空間となっている。リサイクルショップやネットオークションはよくチェックして、何か良いものがないか探しているという。

とはいえ1品1品を無理してヴィンテージものを揃えているかといえばそうではなく、あくまで”雰囲気重視”でアイテムを選んでいるそう。サーモスのウォータージャグが乗っている下の台なんかは、実はホームセンターに普通に売っているゴミ箱だそうだ。測ってみたら直径がピッタリだったらしく、切り込みや同じカラーのカッティングシートを切り貼りして専用品かのように仕上げられている。

こんな車が家にあったら、休みのたびにいろんなところへキャンプへ行きたくなってしまう。

どうしても後席の空間に目が行きがちだが、前席周りもしっかりと作り込まれている。シートカバーはもちろんお揃いのデザインだし、カーペットも敷き直されている。右側のダッシュボード下に見えるスピーカーは、ホームオーディオのBOSE 501をバラしたものを流用しているそうだ。

直径の大きなウッドステアリングが車とよく似合っている運転席周り。ステアリングの奥に見える古いラジオのようなパネル、実はこれヒンジで装着された化粧パネルで、パカっと開くと奥には最新の1DINサイズオーディオが仕込まれていた。

やはり新しく便利なものも使いたい。けれども雰囲気も大事にしたい。YASTUDIOさんの工夫は随所に散りばめられており、その工夫を探すのもまた楽しくなってしまう。

古い車だからこそ構造も単純で、ある意味容赦無く手をかけられるのもメリットかもしれない。仮にピカピカの新車であれば躊躇してしまって、隅々まで自分好みに仕上げるのはかえって難しいだろう。

ホイールにはベンツ純正の15インチ鉄チンホイールを流用装着している。ホワイトに塗装されVWのキャップを装着したその姿は、純正ホイールのようでありかつオシャレな雰囲気を漂わせており、ホワイトレター仕様のヨコハマ ジオランダーH/Tもよく似合っている。主張しすぎず他のタイプIIとも被らないナイスな流用技だ。

少しはこのタイプIIの魅力をお伝えできただろうか。本当に驚きの連続で、当日は取材スタッフも大人気なくずっとワクワクして話を聞いてしまった。リアシートに座っているガイコツ君の腕が飛び出してきたかのようなドアのステッカーは、今回のために製作したという。人体模型を元にしたので骨の形の再現度もばっちり。やるからにはクオリティも欠かさない。

息子さんがお2人いらっしゃるそうだが、「車には全く興味を持ってくれなくて...キャンプとかは一緒に行って楽しんでくれるのですが。」とこの日唯一寂しそうな表情で語っていたオーナー。お父さんがこんな素敵な車に乗っていたら自然と車に興味を持ちそうなものだが、なかなか上手くはいかないみたいだ。

ハロウィン当日ということもありお菓子を用意していたそうで、取材のあと他の参加者のお子さんと「トリックオアトリート♪」のやりとりをする1コマも。

自らが楽しみ、そして関わる周囲まで楽しませてくれるどこまでも素敵なオーナーと愛車に巡り会うことができ、心から嬉しく思っている。この場をお借りして感謝を申し上げたい。

• YASTUDIOさんのマイガレージ
• 取材イベント：2021年10月 第3回オレンジMT

（photo：CARTUNE運営 Hiroki）

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