2019年09月11日 (更新:2022年10月28日)
ホンダS660ってどんなクルマ?徹底紹介!
2015年、ホンダが軽自動車規格の中で、心が昂ぶる本格スポーツカーを追求した結果誕生したのが、世界に例のない排気量660ccのオープンスポーツカーがS660です。高い旋回性能にこだわりミッドシップレイアウトを採用するなど、NSXと同じ機構を採用することでさらにユーザーの気持ちをさらに高めています。はたしてS660はどんなクルマなのでしょうか?
S660ってどんなクルマ?
ミッドシップエンジンレイアウトを採用することで理想的な前後重量配分である45:55を実現。高い旋回性能を発揮できるようになっています。
S660はホンダは開発・販売を手掛ける2シーターオープンスポーツカーです。同ブランドのモデルとしては、1996年に販売終了となったビート以来の軽規格オープンスポーツカーであり、2015年の4月2日よりデリバリーが開始されました。
ルーフには5.9kgという軽量な脱着式ソフトトップ「ロールトップ」を備え、「ロールトップ」をはずした状態でもシート背後のロールバーが残るタルガトップ風のデザインとなっています。
またミッドシップエンジンレイアウトを採用することで理想的な前後重量配分である45:55を実現。高い旋回性能を発揮できる走行性能を持ったコンパクトスポーツカーです。
エンジンには専用のターボチャージャーを配し、軽自動車として初となる6速マニュアルトランスミッションの採用に加えスポーツモードを備えた7速パドルシフト付CVTも設定!
スポーツカーらしいドライビングと日常での扱いやすさを両立。さらに、軽自動車として初の「アジャイル・ハンドリング・アシスト」を採用し、スムーズな車両挙動を実現しています。
S660のスペック
ボディサイズ | 全長3,395全幅1,475全高1,180(mm) |
---|---|
車両重量 | 830〜850kg |
乗車定員 | 2名 |
エンジン | 660cc直列3気筒 DOHCインタークーラー付きターボチャージャー |
最高出力 | 47kW[64PS]/6,000rpm |
最大トルク | 104N・m[10.6kgf・m]/2,600rpm |
トランスミッション | CVT 6MT |
駆動方式 | MR(ミッドシップ) |
JC08モード燃費 | 21.2〜24.2km/L |
燃料 | レギュラー |
新車車両価格 | 1,980,720〜2,185,920円 |
MRレイアウト!これぞ王道スポーツカー!
S660の最大の特徴として挙げられるのが、MRレイアウトを採用していることです。エンジンをキャビン後方に配置して後輪を駆動させる、フェラーリをはじめとするスーパーカーと同様の駆動方式をS660は採用しています。
また、S660はS07A型0.6L直列3気筒ターボエンジンを搭載。S07A型エンジンは、ホンダの売れ筋軽自動車であるN-BOXなどに搭載されているエンジンですが、そこに新設計のS660専用ターボチャージャーを組み合わせています。
最高出力は64馬力、最大トルクは10.6kgmです。軽自動車のターボモデルとしては普遍的な数値で、エンジンパワーの面で秀でた部分はありません。しかし、MRレイアウトを採用したことで、軽自動車らしさを一切感じさせない高い旋回性能を実現しています。
高いエンジン性能
S660の特徴の一つがエンジンです。搭載されるS07A型エンジンは同ブランドが販売しているN-BOXなどと同じものですが、最高出力47kW[64PS]/6,000rpmを発揮し、最大トルク104N・m[10.6kgf・m]/2,600rpmを発生させるS660のエンジンは、新設計のターボチャージャーが採用を採用。
低回転時ではトルクが上昇し、中速域では滑らかにトルクが減少していくという、S660ならではの独特な加速感を実現しています。
軽自動車として初の6速MTを搭載
トランスミッションは、S660専用に新開発された軽自動車初の6MTとスポーツモードへと切り替えることのできる7速パドルシフト付CVTを採用。CVTでありながら変速機構が備わっている7速パドルシフト付CVTも魅力的ですが、S660を語る上で6MTは絶対に外せません。
S660の6MTは非力なエンジンの出力・トルクを最大限活用するために、ワイドレンジ&クロスレシオに設定されています。このおかげで、軽自動車であるにも関わらずスムーズな加速性能を実現しているのです。
サスペンションは前後マクファーソン式とのことですが、厳密にはフロントにマクファーソンストラット式、リアにデュアルリンクストラット式を採用。スポーツカーらしい性能を実現するために採用したらしく、低速走行時の操縦性と高速走行時の安定性の両立化を図っています。
ボディサイズは軽自動車らしくコンパクトです。全高と全幅に関しては軽自動車規格いっぱいの数値を確保、全高に関しては、スポーツカーらしさを強く感じさせる低さに設計されています。コンパクトなサイズのマシンではあるのですが、車両重量は830~850kgとやや重め。
競合車種であるスズキ・アルトワークスは700kgを下回る車両重量を実現しているので、もう少しダイエットしてもよかったのではないかと思います。とはいえ、全体的にはホンダのスポーツカー開発に取り込む姿勢や熱意が感じられる魅力的なスペックです。
姿勢と挙動を制御するアジャイルハンドリングアシスト
こちらも軽自動車として初めて採用された機能です。ドライバーのハンドル操作に応じて、高度なブレーキ制御を行うことにより圧倒的な機動性を獲得することに成功しています。
また、コーナーを抜けた後の回転加速度を打消し、直進状態へ戻る挙動をアシスト。車両の姿勢を素早く安定させてくれます。
S660のグレード
グレード | 価格 |
---|---|
β | 1,980,720円~ |
α | 2,185,920円~ |
α レザートレッドエディション | 2,275,560円~ |
S660 Modulo X | 2,850,120円~ |
S660のグレードはベースグレードのα(アルファ)と、上級装備のβ(ベータ)の2種というシンプルな構成。それぞれにCVTと6MTを設定。
その他に、熟練のエンジニアが、ベース車両の走行性能、質感、デザインに「匠の技」を注いで完成させるコンプリートカーブランド「モデューロ」が手掛ける「Modulo X」と、2018年12月に設定されたαをベースとした特別仕様車「トラッド・レザー・エディション」があります。
また、2017年から期間限定で販売された「#komorebi edition(コモレビ エディション)」という特別仕様車も存在しており、「ヒダマリアイボリー・パール」という専用のボディカラーが設定されていました。
さらに、「無限」によりチューニングされた「Honda S660 MUGEN RA」というモデルも存在しています。これは、限定660台で販売されたコンプリートカーであり、専用開発のインテリアやS660のポテンシャルを引き出すための特別なチューニングが施されたグレードです。
ボディカラーはαとβが8色、特別仕様車の「トラッド・レザー・エディション」が3色、そして「Modulo X」が4色となっています。
公式カスタマイズグレードの「Modulo X」
「Modulo X」は300万円近い価格設定で、下手な普通車よりもはるかに高価です。トヨタの代表的なスポーツカーである86の価格が約260万円~、マツダのライトウェイトオープンスポーツカーであるロードスターの価格が約255万円~であることを考慮すると、「Modulo X」がいかに高価なのか伝わると思います。
86とロードスターはベースグレードの価格に対しS660は最上級グレードの価格なので、公平な比較ではないのかもしれませんが、やはり軽自動車であることを考えると高価すぎる価格帯です。もちろん、「Modulo X」には価格に見合った性能・装備を実現しているので、予算に余裕がある人は迷わず「Modulo X」を購入しましょう。
S660の実用性は?
昨今ではスポーツカーであっても実用性が重要視されます。軽スポーツカーであり2シーターでもあるS660の実用性はどのようになっているのでしょうか。実はお気づきの人も少なくはないと思いますが、S660の実用性はお世辞にも高いといえるものではありません。
むしろ、現在販売されているスポーツカーの中でS660の実用性の低さはトップクラスです。まず、2シーターを採用している時点で実用性が高くないことは分かると思いますが、そのうえ軽自動車なので車内空間はとてもタイトな設計になっています。
S660は走るために開発された車で、車内で快適にくつろぐために開発された車ではありません。もちろん、軽自動車としては上質なインテリアや座り心地の良いシートなど、ある程度の快適性は確保されていますが、それでも長時間の移動には向いていないといえます。
さらに、S660はキャビン後方にエンジンを搭載しています。そのため、一般的な車には備わっているトランクスペースやハッチバック車のラゲッジスペースにあたるものが存在しません。唯一ボンネット内に小さな収納スペースが存在していますが、買い物袋や女性の手提げバッグを収納してしまえば、ほかに物を入れることが出来なくなってしまうのです。
そんな小さな収納スペースでさえも、S660のロールトップを収納すれば容量がいっぱいになってしまいます。そうなると買い物袋や手提げバックですら収納することができません。ちなみにS660のドリンクホルダーですが、設置はたったの1箇所です¥
助手席シートバックポケットやグローブボックスフロントコンソールトレイなどの収納スペースは用意されていますが、積載できるのはせいぜい小物程度。S660に実用性を求めるのは間違いといえるでしょう。
これらのことから、S660でのドライブは2、3時間が限界。軽自動車とはいっても本格的なスポーツカーなので、足回りは固めにセッティングされています。荷物が積載できないので旅行などはもってのほかです。S660を購入するのであれば、走りを楽しむための車として割り切ることが大切だと思います。
S660の維持費は?
実用性に関しては一切の魅力を感じることができないS660ですが、維持費に関しては、ほかの軽自動車と比較してもさほど変わらないリーズナブルな維持費を実現しています。S660が搭載しているエンジンは、N-BOXをはじめとする「Nシリーズ」と同型のエンジンなので、毎年やってくる自動車税の税額はたった10,800円です。
仮に86やロードスターであれば、毎年の自動車税額は34,500円から39,500円にもなります。これらのスポーツカーも決して高価な自動車税ではありませんが、いかにS660の自動車税が安いか伝わるはずです。
車を所有するうえで最も出費が大きいものといえば車検ですが、S660なら車検すらもリーズナブルに抑えることができます。S660の車検費用は一般的な軽自動車と変わりありません。
自賠責保険料(2年分) | 25,070円 |
---|---|
自動車重量税 | 6,600円 |
印紙代 | 1,400円 |
合計 | 33,070円 |
S660に一切の故障・不具合がないと仮定すれば、ユーザー車検でわずか33,070円で車検を通すことが可能です。もちろん、上記の金額には法定点検や整備料が含まれていないため一概にはいえませんが、これが仮に86やロードスターであれば倍近くの車検費用が発生します。
ちなみに、ホンダディーラーであればS660の車検費用は7万円から8万円程度が一般的です。故障の有無や部品交換代などを含めるとさらに高くなってしまう可能性はありますが、それでもほかのスポーツカーに比べると、車検費用をリーズナブル抑えることができるという事実に変わりはありません。
S660の燃費性能は?
S660がスポーツカーを名乗る以上、気になってくるのが燃費性能です。スポーツカーの中では燃費性能が優秀な86やロードスターでさえ、一般的な車と比べると燃費性能は決して高くはありません。
優秀なカタログ燃費
ところがS660のカタログ燃費は、CVTモデルがJC08モード・24.2 km/L、6MTモデルがJC08モード・21.2 km/Lと非常に高い数値を記録しています。ほかのスポーツカーはもちろん、コンパクトカーのガソリン車でさえS660の燃費性能にかなわない車種があるほどS660の燃費性能は優秀です。
S660は本格的なスポーツカーでありながら、一般的なコンパクトカーと変わりない高い燃費性能を実現していることがわかりました。それでは実燃費ならどうでしょうか。
実燃費でも優秀
スポーツカーに乗っているとエンジンを高回転まで回したくなることがありますよね。普段からハイペースで走行することを考えるとどうしても燃費性能は悪化してしまいがちです。しかし、S660はカタログ燃費だけでなく実燃費であっても優秀な数値を記録しているのです。
街乗り
S660の街乗りでの燃費性能は、CVTモデルが17.0~19.0 km/L、6MTモデルが16.0~18.0 km/Lほどとなっています。軽自動車とはいえ、本格的なスポーツカーでこれだけ優秀な燃費性能を実現しているのは本当にありがたいです。
高速道路
高速道路での燃費性能は、CVTモデルが19.0~22.0 km/L、6MTモデルが19.0~21.0 km/Lほどとなっています。これほどまでに低燃費であれば、お財布の中身を気にすることなく気軽にドライブを楽しむことができそうです。
S660の新車と中古車の価格比較
グレード | 新車価格 | 中古車価格 |
---|---|---|
β | 198万円 | 169万円~ |
α | 218万円 | 184万円~ |
α レザートレッドエディション | 228万円 | 218万円~ |
Modulo X | 285万円 | 239万円~ |
モデューロXは239万円~となりますがコンプリートカーとしては多くの台数が流通しており人気の高さがうかがえます。S660は他の車両と比べると価格の落ち幅は非常に少なくなっていますが、オープン2シーターというスペシャリティ感が相場を支えているように思います。
※(価格は2021年7月時点を参考に独自調査)
CARTUNEユーザーさんのカスタム事例
そのままでも十分カッコ良いS660ですが、CARTUNEユーザーさんの手にかかるとさらに魅力が倍増しています。
シルクブレイズのフロント/リアスポイラーと、カーボンボンネットでS660のスポーティなムードをさらに高めている一台です。ADVANにこだわりのあるオーナーは、ステッカーはもちろんホイールもADVANの『RG-D2』という本格派です。
ホワイトボディにブラックアウトされた各部がアクセントになっているS660。BLITZ車高調でローダウンし、足元にはRAYSの名作ホイール『TE37』をインストール。リアのディフューザーなどは自作という、驚きのクオリティの一台です。
注目度マックスのシザーズドア登場です!まるでスーパーカーのようです。これで国産車、しかも軽自動車とは到底思えません。
まとめ
1996年に販売を終了したビートは、イエローのボディカラーとサザンによるCMソングによって大ブームとなり、それから約19年ぶりに復活したS660。世界を驚かせたわずか660ccのミッドシップの2シーターオープンスポーツカーは、現在でもファンを魅了しています。
その魅力は兄貴分のNSXを彷彿とさせる完成度の高さによるところが大きく、軽規格の為、絶対的なパワーと速さは望めませんが、オープンエアの爽快感は唯一無二の存在となっています。
また、ノーマルのまま乗っても、カスタムのベースとしても大人気のS660。ラゲッジスペースがないなどの一部欠点はあるものの、スタイリッシュなデザインと何よりドライブを楽しむには最高の一台であることは間違いありません。ホンダを代表する一台として、これからのS660の進化に期待してもよさそうです。