2019年06月27日 (更新:2020年07月29日)
知らずに乗ってる?クラウンの歴史とその王冠の意味とは
クラウンは1955年に誕生してから60年余り、日本の高級セダンとして君臨し、今もその人気は衰えることがありません。時代の変遷の中でいつも最先端技術が取り入れられ、ミドル世代をターゲットにしてきたクラウンは、プライベートはもちろんビジネスシーンにも使用しやすい車です。近年では若者層を意識した車作りも展開し、好評を得ています。長い歴史の中で変わらず、エンブレムに輝く王冠の意味を紹介していきます。
クラウンとは
初代誕生から現在15代目になるクラウンの伝統を詳しく振り返ってみましょう。
初代クラウン「トヨペット・クラウン」(RS型/S20系・30系)1962年~1967年
当時の道路舗装率はわずか1%の時代。日本の車メーカーは海外メーカーと連携しており、例えば日産はイギリスオースチン、日野はフランスのルノーから設計図の提供を受けて車の生産をしていました。そんな中、豊田喜一郎が「日本人の手で国産車を作る」という目標を掲げ、1950年から開始された開発が実を結んで1955年1月に発売することができたのが、初代クラウン。
日本の道を走っても乗り心地の良い車を作りたいという思いがかたちになった瞬間でした。初代クラウンはアメリカへ初めて輸出されましたが、自動車大国アメリカでの評価は、「パワー不足で坂道も登らない」などの酷評を受けることになってしまいました。
採用された技術・装備
- 観音開きドア
- 1.5/1.9L 直列4気筒OHVエンジン
- 日本初 左右軸が独立して動くため接地性が高く、デコボコや傾斜への対応能力に優れる前輪独立懸架の採用。
- ストラット式にアッパーアームを装備。アームが鳥の胸骨のようにストラットを囲んでいるダブルウィッシュボーンを採用。
- 日本初のトルクコンバーター付きオートマチックトランスミッションであり、プラネタリギア(遊星歯車装置)による変速機構、変速を制御する油圧制御機構で構成されるトヨグライド(2速半自動A/T)搭載
アメリカに学ぶ車作り 2代目クラウン(S40系)1962年~1967年
初代の反省を活かし、パワーを向上。「フォードファルコン」を意識し、全長4,610mmのアメリカン・コンパクトに仕上げています。ラインアップには4ドアセダンとワゴンタイプのカスタムを用意しました。
採用された技術・装備
- 東京オリンピックに向け高速道路の高速走行にも耐えうるシャーシーであるX型フレームの採用
- 2.6L V型8気筒OHVエンジン
- 1965年トヨタ初2.0L 直列6気筒SOHCエンジン
- 日本初トヨグライド完全自動化
いざなぎ景気という高度経済成長期 3代目クラウン(S50系)1967年~1971年
ぺリメーターフレームの採用で低床化に成功し、遮音性の向上を図りました。またフロントディスクブレーキの搭載も搭載されました。グレードにより異なりますがヘッドレスト、後席の読書灯、クウォーツ時計なども装備されました。
採用された技術・装備
- 2ドアハードトップボディ
- パワーステアリング
- 日本初のペリメーターフレーム
- パワーウインドウ
- フロント・ディスクブレーキ
クジラクラウン 4代目クラウン(S60系/70系)1971年~1974年
それまでのモデルまでよりも丸みを帯びたスタイルのスピンドル・シェイプラインが特徴。現在でも「クジラ」の愛称で親しまれています。しかしこの特徴的なデザインが当時は敬遠され、クラウン史上最大の駄作といわれることに。車名を「トヨペット・クラウン」から「トヨタ・クラウン」へと変更したのはこの時期のことでした。
採用された技術・装備
- 電子制御式自動変速装置である3速EATを搭載
- 2.6L 直列6気筒SOHCエンジン
- 横滑り防止装置の後輪ESC搭載
- 電子制御燃料噴射装置EFI搭載
保守的なスタイルへ 5代目クラウン(S80系/S90系/S100系)1974年~1979年
4代目の不調を一新すべく本来の直線的なスタイルに戻りました。また、高級車にふさわしい数々の装備が搭載されました。
採用された技術・装備
- 世界初オーバードライブ付4速A/T
- 4ドアトップボディの追加
- 2.2L 直列4気筒SOHCディーゼルエンジン
- 日本初車速感応式パワーステアリング
- 4輪ディスクブレーキ
- ペダル式パーキングブレーキ
- 後方パワーシート
- TTC-C(触媒方式による排ガス対策技術)
経済大国日本の象徴 6代目クラウン(S110系)1979年~1983年
重厚感はそのままに洗練されたフォルムへ。内外装はトヨタのポリシーである豪華さを内に秘めたデザインの採用ながら、日本初の電子技術を積極的に取り入れています。
採用された技術・装備
- ツートンボディカラー
- 2.8L 直列6気筒SOHCエンジン
- ターボエンジン(2.0L直列6気筒SOHC)
- ECT(マイコン制御式自動変速装置)
- 前席パワーユニット
- 消費燃料、平均車速を表示するクルーズコンピューター
「いつかはクラウン」 7代目クラウン(S120系)1983年~1987年
2ドアハードトップが廃止され、4ドアセダン、4ドアハードトップ、ワゴン、バンのラインアップへと変更されています。この世代で起用されたCMのキャッチコピー「いつかはクラウン」が話題となり、さらにクラウンのブランド力を確固たる地位へと押し上げていきました。
採用された技術・装備
- 3.0L 直列6気筒DOHCエンジン
- 日本初2.0L 直列6気筒DOHCスーパーチャージャーエンジン
- 日本初四輪独立懸架サスペンション
- 日本初ABSの前身となる四輪ESC搭載
- 前席マルチアジャスター・パワーシート
- リアラウンジ・パワーシート
- 世界初、ステアリングコラムにあるレバーでステアリングを前後に自動で調整する、メモリー付きチルト&テレスコピックステアリング
国産高級車のプライド 8代目クラウン(S130系)1987年~1991年
バブル全盛のこの時期、高級志向の波はクラウンにも押し寄せます。電子制御システムをふんだんに取り入れたハイテク仕様は、カローラを上回る販売台数を記録したこともあります。
採用された技術・装備
- 3ナンバー専用ボディ
- 4.0L Ⅴ型8気筒DOHCエンジン
- 電子制御エアサスペンション
- 日本初、TRCトラクションコントロール
- ナビシステムの前身となるCDインフォメーション
「すべてはクラウン」 9代目クラウン(S140系)1991年~1995年
このモデルからクラウンの派生モデルとして「マジェスタ」が登場します。この時期、バブルの崩壊により、クラウンの売り上げも不調となりました。
採用された技術・装備
- 3.0L 直列6気筒DOHCエンジンの新開発
- 5速A/T
- エレクトロマルチビジョン(GPSナビ付)の装備
40周年の節目 10代目クラウン(S50系)1995年~1999年
モノコックボディの採用により、高い剛性を実現するとともに100㎏の軽量に成功。現在は搭載が義務付けられているABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やデュアルエアバッグを全車標準装備、またVSA(横滑り防止装置)、SRSサイドエアバッグが設定されました。
採用された技術・装備
- モノコックボディ
- 4WD設定
- コンピュータ制御による連続可変機構VVT-iの搭載
- 横滑りをセンサーで感知しブレーキやエンジン出力を自動制御するVSC搭載
- 衝突安全ボディ(GOA)
- ブレーキアシスト
「21世紀へ。このクラウンで行く」 11代目クラウン(S170系)1999年~2003年
若者層をターゲットにした8代目以来となる「アスリート」の復活。「クラウンS17#型」の型番から通称「17クラウン」と呼ばれています。従来の直列6気筒エンジンに加え、直噴エンジンに小型モーターと小型2次バッテリーを組み合わせた「マイルドハイブリッドシステム」搭載モデルを設定。環境性能を重視する車へと転換の時期を迎えました。
採用された技術・装備
- 「アスリート」シリーズ登場
- ガソリン筒内直噴噴射D-4エンジン
- 世界初マイルドハイブリッドシステム(THS-M)
ZEROからの出発 12代目クラウン(S18系)2003年~2008年
キャッチコピー「ZERO CROWN かつてこのクルマはゴールだった。今、このクルマはスタートになる」から、通称ゼロクラウンと呼ばれています。今までの価値観を刷新し、新しく生まれ変わった瞬間です。プラットフォームの新開発、エンジン、トランスミッションなども見直され、スポーティーなフォルムとなり若い世代にも好評を得ています。
採用された技術・装備
- 新プラットフォームで新開発したV型6気筒エンジン
- シーケンシャルシフト付6速AT
- 減衰力制御付電子制御サスペンションAVS
- 進行方向へのヘッドランプ自動照射インテリジェントAFS
- 歩行者検知機能付夜間運転支援システムナイトビュー
- 世界初歩行者障害軽減ボディ構造
- スマートエントリー&スタートシステム
環境への挑戦 13代目クラウン(S200系)2008年~2012年
ゼロクラウンを進化させ、本格的なハイブリッドモデルが登場しました。12代目クラウンと比べ外見上のデザイン変更はわずかながら、メカニズムはより高いレベルに引き上げられました。
採用された技術・装備
- ハイブリッド車にはTFT液晶ファイングラフィックメーターを搭載
- 世界初、衝突被害軽減ブレーキであるドライバーモニター付プリクラッシュセーフティシステムの搭載
- 総合車両姿勢安定制御システムVDIM
- ギア可変ステアリングVGRS
- 歩行者検知機能付ナイトビュー
- アクティブノイズコントロール
「CROWN Re BORN」 14代目クラウン(S210系)2012年~2018年
60周年を迎えた14代目は人々を驚かせました。今までにないアグレッシブなフロントグリルのデザインもそうですが、なんといっても限定カラーです。純正カラー名「モモタロウ」のピンク、青色、若草色のカラフルさに目を疑った人も多かったのではないでしょうか?
2015年のマイナーチェンジでは『ジャパンカラーエディション』が加わり、日本の色を登場させています。これは、トヨタが長い間進めてきたユーザーの若返りに貢献しました。
採用された技術・装備
- 新開発2.5Lハイブリッドシステム
- 「いなし」と「張り」をテーマにチューニングした新開発サスペンション
- トヨタマルチオペレーションタッチ
- アダプティブハイビームシステム
- インテリジェントクリアランスソナー
- ドライブスタートコントロール
クラウンの「王冠」エンブレムの意味
自動車メーカーとして世界に名をはせるトヨタ自動車が唯一固有のエンブレムを使用するクラウンには、長い歴史のほかに国内初の国産車として歩んできたプライドがあるのかもしれません。ではなぜ、クラウンという名前をつけたのでしょうか?
『創造限りなく トヨタ自動車50年史』の中で、小型車トヨペットの次は自家用乗用車の王座を確保するとの願いをこめてクラウンと名付けたとありますが、『トヨタ自動車75年史』の中で豊田英二最高顧問は、もともと新車開発の時点で豊田喜一郎氏の発案で決まっていたとの逸話も残されており、いずれにしても技術者全員の思いがかたちになった車だといえるでしょう。
初代から変化を続ける「王冠」エンブレム
1955年からそのフロントグリルに輝き続ける王冠のエンブレムも、時代によってさまざまなデザインで彩られていたことを知っていますか?
気品のある初代王冠デザインに始まり、3代目では浮き出ているように見える王冠、そしてZEROクラウンから王冠のラインを太くし、角を際立たせることで近代的な王冠に仕上げています。14代目ではスッキリした印象で、6代目に使用されていた青色が復活しました。
さまざまなデザインの王冠が使用されてきましたが、いつの時代もクラウンのエンブレムには王冠が輝き、誰もがクラウンだとすぐ分かる車になっています。車の進化と共に今後、王冠がどのように変化していくのも楽しみのひとつですね。
現行クラウンを紹介
2018年6月に発売された現行クラウンは「未来とつながるか。CROWN BEYOND」のコンセプトにあるように、専用の車載通信機DCMを標準装備しています。ほかには、予防安全技術の充実、ハイブリッドモデルの燃費向上、新プラットフォームTNGAの採用など、先進技術が装備され、いつの時代も最先端をいくクラウンの歴史を継承しているようです。
また世代の若返りを定着させるべく、世界最難関の「ニュルブルクリンク」のテストを繰り返し、スポーツセダンのイメージを前面に押し出したグレード展開を図りました。従来の「ロイヤル」、「アスリート」、「マジェスタ」が廃止され、標準仕様のB/S/G/G-Executiveに加えてスポーティ仕様のRS/RS-B/RS Advanceの2つに見直され、装備もさることながら、走行性能でも人気を集めているようです。
まとめ
海外に頼ることなく誕生した初の国産というプライドを持ち、現在も中国を除けば国内だけで製造販売されているクラウンは、日本の誇りといえるでしょう。2019年6月に「GAZOO Racing」が手がけるチューニングモデル「クラウンGR」、台数限定モデルも発売されています。
伝統を継承しつつ、自らの手で壊しながら進化を続けるクラウンを、もう一度見直してみてはいかがでしょうか?