2019年06月14日 (更新:2020年08月12日)
ホンダ・NSXはなぜ速い?NSXのエンジン性能や構造まで徹底解説!
2代目ホンダ NSXは、2016年に2370万円のプライスタグを掲げて登場。名実ともに世界に肩を並べるスーパーカーとなった2代目NSXの速さの理由に迫ります。NSXのエンジン性能や構造はレーシングカーそのもの。その完成度は初代NSX登場当時のホンダスポーツマインド思い起こさせるものです。
国産ハイスペックスーパーカー、ホンダ・NSX
初代ホンダ NSXは、1990年に誕生したハイスペック・スーパースポーツカー。その後継となる2代目NSXが2016年に登場しました。
2代目ホンダ NSXは、初代NSXの延長ではなく、ハイブリッド技術で培ったモーターによる加速と車両制御技術を加えた、これまでになかった新しいスポーツ体験(New Sports eXperience)をコンセプトとした、ホンダの新たな象徴となるスーパーカーです。
一度は開発がストップした2代目NSX
2代目NSXの開発計画が持ち上がったのは2000年。F-1由来のV10年エンジンを搭載した新型スーパーカーの構想が進んでいましたが、2008年9月のリーマンショックによる景気後退が決定打となりホンダのF-1活動とともに2代目NSXの開発は正式に中止されることになります。
しかし、2010年ころから開発を再開し、2012年のデトロイト・モーターショーで次期NSXのコンセプトカーを発表。それから日米共同による開発が急ピッチで進められ、2016年に満を持して2代目ホンダ NSXが発売されました。
発売後も細かな改良が加えられ続けている現行型NSXは、さらに熟成した仕上がりになっています。
NSXのエンジン性能はどうなってる?
エンジン型式 | JNC型 |
種類 | 3.5L V型6気筒DOHCツインターボ+モーター |
最高出力 | エンジン:373kW[507PS]/6,500~7,500rpmモーター:27kW[37PS](フロント)×2基、35kW[48PS](リア) |
最大トルク | エンジン:550N・m[56.1kgf・m]/2,000~6,000rpmモーター:73N・m[7.4kgf・m](フロント)×2基、148N・m[15.1kgf・m](リア) |
トランスミッション | 9速DCT |
JC08モード燃費 | 12.4km/L |
最終的に2代目NSXに搭載されたのはV10ではなく、3.5LV型6気筒ツインターボエンジンに3基のモーターを加えたハイブリッドエンジン。初代NSXとは異なり、エンジンは縦置きに配置され、左右の車体重量バランスも改善されています。
片バンクに1基づつのタービンを備えたツインターボの全開加速は、直噴ターボならではの高ブースト圧をかけ、56.1kgf・mの最大トルクを2,000~6,000rpmの広範囲で発生。高回転域ではさらにポート噴射を追加することで6,500~7,500rpmに渡って最大出力の507PSを発揮します。
モーターを加えたシステム合計出力は581PSのパワーを、9段デュアルクラッチトランスミッションによって効率よく路面に伝え、0−100km加速は3.3秒。最高速度は280km/h(欧州仕様車では308km/h)をマークします。
加速性能はメルセデス・ベンツ AMG GT Sや、ポルシェ 911 GT3RSと並ぶ数値。
ちなみに、ホンダ フィット1.5Lの0−100km/h加速は8〜9秒。三菱 ランサーエボリューションⅩが5.2秒であることを考慮すれば、NSXの加速性能がどれだけ優れたものか想像しやすいでしょう。
NSXの真髄はコーナリング
NSXの優れた加速性能もさることながら、NSXの真髄はリアミッドシップレイアウトによるバランスのよさと、フロントに設けられた2基のモーターを駆使したスポーツ・ハイブリッド・SH-AWDのコーナリング性能です。
2004年に登場した4代目ホンダ レジェンドではじめて搭載されたSH-AWDは、スポーツ・ハイブリッド・SH-AWDとして進化。
回頭時は内輪の回生ブレーキで電力を蓄積しながらクイックな回頭を実現し、コーナリング中は、外輪を増速させることで速く安定したコーナリング姿勢を維持。立ち上がりは左右輪の速度を適切にコントロールし、優れたトラクションとモーターアシストで車を前へと押し出します。
NSXのコーナリング性能の高さは、加速勝負では及ばない日産 GT-Rに対して、サーキットタイムではNSXのほうが勝っていることで証明しています。
NSX専用の新開発エンジン
エンジン型式はホンダ レジェンドと同じJN型3.5L V6エンジンですが、その中身はすべての部品が専用設計される、まったくの別物。NSXのエンジン部品は、レーシングエンジンの名門コスワースが製作しています。
エンジン本体は特殊な鋳造法で製作される高強度のアルミブロックを用い、強度・冷却・潤滑性能を徹底して煮詰めた、ほぼレーシングエンジン同様の設計手法。通常よりも広い75度のバンク角に設定することでエンジンの重心を下げ、さらにエンジン取りつけ位置を下げるために、エンジン下部のオイルパンを廃して、ポンプでオイルを循環させるドライサンプ化はレーシングカーの機構そのものです。
VTEC(可変バルブリフト機構)は搭載されず、F-1エンジンから技術転用され、N-BOXにも用いられるスリッパー式スイングアームを採用することで、高回転でも優れた精度でバルブを駆動します。
すべてがNSX専用に設計されたエンジンは、タイプR以上の精度による加工と回転バランスの最適化が施され、選ばれた職人による手作業で組み立てられます。
NSXの価格や装備
2代目NSXの価格は、初代NSXのおよそ3倍となる2370万円。フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンなと肩を並べる価格帯にまで上昇。その理由は、世界的なスーパーカーと互角に戦うためには、同等性能のパーツの装備が必須だからです。
NSXが装備するそれぞれのパーツは、一般の車とは桁違いの性能と精度と価格を備えた世界トップクラスの装備であり、2代目NSXの高い価格にはしっかりとした意味があります。
NSXの装備
サスペンションには、ダンパーオイルに磁石を混ぜ、磁力を変化させることで素早くダンピングを変化をさせることのできる「マグネティックライドダンパー」を装備。ブレーキは300km/hからのフルブレーキングにも耐えるカーボンセラミック製です。
サスペンションやブレーキをはじめ、エンジンパワーや姿勢制御は「インテグレーテッド・ダイナミクス・システム」によって統合制御され、走行条件に併せて4つの制御モードを選択可能。使用中のモードはインフォメーションディスプレイに一括表示されます。
ホイールは前19インチ、後20インチの専用鍛造ホイールを装着。純正タイヤはコンチネンタルに専用オーダーした特注品。またタイヤの空気圧センサーやパーキングセンサーなどの実用装備も揃っています。さらに、カスタムオーダーとしてカーボン製の外装パーツや、アルカンターラ内装などが個別オーダー可能です。
NSXのまとめ
初代NSXは純国産のスーパーカー。それに対し、2代目NSXは日米共同開発。その中身は、ややもすれば高級パーツの寄せ集めてつくったレーシングカーであり、非常に現代的な車づくりであるともいえます。
しかしホンダは、骨格となるボディだけは断固として日本内製にこだわったといいます。2代目NSXの性能は、高性能パーツの性能をしっかりと調和させることのできるシャシー性能があってこそ。
独自性にこだわってつくった初代NSXを超えるために、より広い視野をもってつくり上げたスーパースポーツカーが2代目NSXです。