2019年05月30日 (更新:2020年06月01日)
自動車におけるアクチュエーターの役割
入力されたエネルギーや出力された電気信号を受け取り、物理的な運動に変換してくれる機械「アクチュエーター」。自動車だけではなく航空機やロボットなどの圧力装置として動力シリンダーに使われたり、変換機として現在開発されているリニアモーターのも使われています。アクチュエーターには駆動装置として、時には動作制御を行う物理装置の役割がありますが、今回は車におけるアクチュエーターのお話、特にターボチャージャーに使われているアクチュエーターの解説をしていきたいと思います。
アクチュエーターの概念
そもそもアクチュエーターという物は、電動機やエンジンのようにモノを動かす駆動装置と、その動作により制御を行う機械・油・空圧・熱・電磁など物理的な装置を指します。
利用する作動原理(入出力エネルギー)により様々なものがあるのですが、伸縮・屈伸・旋回といった単純な動作をするものと、電動機(モーター)やエンジンのような動力を持続的に発生させるものも含む場合があります。ターボチャージャーに使われるアクチュエーターは前者の伸縮動作で、圧力を入力し余分な圧力がかかってしまった空気をウェストゲートからバイパスさせてターボチャージャーのブースト圧制御を行なっています。
ターボチャージャーは排気ガスを使用して回っており、タービンホイールと同軸についているコンプレッサーホイールも同じ回転数で回ります。タービンホイールが回れば回るほどコンプレッサーホイールも同調して回転するのですが、圧縮された空気を送りすぎてしまうとタービンホイールの回転数がみるみる上昇し、最終的にエンジンは圧縮空気に耐えきれず壊れてしまいます。
少し脱線してしまいましたが、アクチュエーターとは基本的にエネルギーを与えることで運動を発生させ、何らかの装置に組み込む場合は電気的な信号によって制御できるようにするなどして制御機構に組み込まれます。電子的な入力信号で制御されている車の部品にはドアロックアクチュエーターがあります。
自動車におけるアクチュエーターの役割・構造
ここまでに紹介してしまいましたが、自動車のターボチャージャーにおけるアクチュエーターの役割や構造についてもう少し掘り下げて説明をしていきましょう。「アクチュエーター」と「ウェストゲート」は平たく言ってしまうとタービン内の過剰圧を逃すためのバイパス方式で、流入量を調整するバルブとしては別の物があります。
ウェストゲートは純正タービンに対して内蔵型が採用されてます。チューニング業界での言い表し方としてはウェストゲートバルブが内蔵型か外付け型かで変えているため、前者であるならアクチュエーター方式、後者であるならウェストゲート方式となりますが、正確にいうなら前者は「スイングバルブ式」後者は「ポペットバルブ式」となります。
上記の影響があり、スイングバルブ式タービンの排気バイパスバルブそのもののことを「アクチュエータ」だと勘違いしてしまう方も少なくありません。あくまでアクチュエータはこの場に限っては伸縮動作でバルブを開閉させるための装置です。
過給圧を制御すること
アクチュエーターはブースト圧が掛かると内部にあるスプリングの反発力に負けてシャフトが飛び出してきます。アクチュエーターのシャフトが飛び出してくると、タービンに設置されている圧力を逃し、ウェストゲートが開くようになります。ウェストゲートがタービンを回転させている排気ガスをバイパスさせることでブースト圧を下げます。
どのように制御するのか
アクチュエーターがブーストの圧力を制御してくれているのは間違いないのですが、このアクチュエーターを制御する部品もあり、その部品はソレノイドバルブとなります。カンタンに考えると「アクチュエーター・ウェストゲートバルブ・ソレノイドバルブ」はセットで考えてみてください。
実際の動作は、ECUがソレノイドバルブの開閉を制御、ブーストが上がりすぎるとソレノイドバルブを閉じてアクチュエーターに圧力をかけ、ウェストゲートバルブを開き排気ガスがタービンに当たらないようにしブーストの上昇を抑えています。
ブーストが上がらないからといってソレノイドバルブを何らかの理由で開きっぱなしにしてしまうとウェストゲートバルブは開きませんのでブーストがかかり放題になってしまいます。ただ、実際にこの方法をやってしまうと間違いなくエンジンは壊れてしまいます。社外品のブーストコントローラはこの方法を用いるのですが、ソレノイドバルブを別の物にし独立制御させることでブーストアップができるようになっています。
純正アクチュエーターと強化品の違い
では、ブーストコントローラーでブーストアップさせることができる一方、社外品のアクチュエーターでなぜブーストアップが図れてしまうのでしょうか?純正と社外品の違いは吸入タンクの大きさや、強化されたバネ、ダイヤフラムとよばれる調整弁でしっかりと抑えられるため、ブースト圧が不安定になりにくくなっています。逆に言ってしまうと、純正のアクチュエーターはバネが弱くとても不安定です。
ブーストのかかり具合
強化アクチュエーターは、設定されているブースト圧まで開かないようになっていますので、ブーストのかかり方がとても安定しています。さらに、調整式のアクチュエーターであれば任意のブースト圧で制御できるのでパワーアップにも繋げることができます。
エンジン破損の可能性
強化アクチュエーターのデメリットとしては、過給圧を上げていった場合は燃料不足となってしまいエンジンが破損してしまう恐れもあります。ブースト圧をあげるとエンジンにかかってくる負担も大きくなってきますので、燃料制御装置などを使ってしっかりとセッティングを出してあげてください。
まとめ
今回はターボチャージャーにおいて使用されているアクチュエーターについてのお話でした。役割や構造など難しい部分がありましたが、ブースト管理をしてエンジンを壊さないようにしてくれる大切な部品の一部です。しっかりと理解していただいて、チューニングの役に立てていただければと思います。