2019年05月29日 (更新:2019年08月01日)
下から上まで気持ち良い!NA車について紹介します。
車は大きく分けて、自然吸気エンジン搭載車(NA車)と過給機付きエンジン搭載車の2種類に分かれています。NA車と過給機付きエンジン搭載車はその特性が大きく異なっているのですが、どのような違いがあるのかを知らない人は少なくありません。そこで今回はNA車の特徴や過給機付きエンジン搭載車との違い、現行モデルの国産NA車などを徹底的に紹介します!NA車に乗ってみたいと考えている人はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
NA車とは
スポーツカーなどでよく耳にすることの多いNA車。NA車とは具体的にどのような車のことを指しているのでしょうか。NA車とは自然吸気エンジンを搭載している車のことで、いわゆるノンターボ車のことを指しています。
一般的な車に搭載されているレシプロエンジンは、大きく分けて自然吸気エンジンと過給機付きエンジンの2種類です。過給機付きエンジンは、ターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給機を用いて自然吸気エンジンよりも高出力を発生させることができます。
自然吸気エンジンは、出力やトルク面で過給機付きエンジンに劣るものの、アクセルレスポンスや燃費性能において優れています。
NAエンジンを搭載する車両
NAエンジンを搭載している車両は数多く存在しています。軽自動車やコンパクトカーから高級セダンスーパーカーまで幅広いジャンルの車で用いられているのです。
部品点数が少ないことで製造コストがかからないことや燃費性能の高さが魅力のNAエンジンは、経済性を重視した軽自動車やコンパクトカーにうってつけのエンジンとなっています。また、高回転型であることやアクセルレスポンスに優れていることは、スポーツカーなど走りを重視した車で真価を発揮します。
過給機付エンジンしか設定していない車両も一部存在していますが、現在国内で販売されている車両のほとんどが搭載しているエンジンはNAエンジンです。
ダウンサイジングターボなど、以前よりも過給機付きエンジンが浸透している昨今ですが、NAエンジンが主流であることに変わりはありません。
NA車とターボ車の違い
NA車と過給機付きエンジン搭載車(以下ターボ車) は同じレシプロエンジンですが似て非なるものです。過給機付きエンジンはNAエンジンをベースとしていますが、それぞれに異なる特徴やメリット・デメリットが存在しています。
続いてNA車とターボ車の違いについて迫ってみましょう。すべてをお伝えしていてはキリがないので、今回はNA車とターボ車の分かりやすい違いについてお伝えしていきます。NA車とターボ車どちらを購入すればいいのか分からないという人はぜひ参考にしてください。
出力・トルク
まずは出力トルク面の違いについて。一般的にNA車はターボ車よりも出力トルク面で劣っています。なぜなら、NA車よりも高い出力、トルクを発生させることができるという点がターボ車の最大のメリットだからです。
同排気量の車両で比較すると、NA車よりもターボ車の方がはるかに高いエンジン出力を実現しています。NAエンジンと過給機付エンジンを同時にラインナップしている車両で比較してみましょう。
ダイハツ・タント
まずはダイハツの売れ筋スーパーハイトワゴンであるタントです。タントはグレードによってNAエンジンと過給機付エンジン、2種類の異なるエンジンを設定しています。どちらも同じKF型0.6L水冷直列3気筒DOHCエンジンです。
タントのNA車は、最高出力が52馬力、最大トルクが6.1kgmとなっています。軽自動車のNAエンジンとしては一般的な数値ですが、タントのようなスーパーハイトワゴンは車両重量が大きいので少々役不足です。
それではターボ車ならどうでしょう。タントのターボ車は、最高出力64馬力、最大トルク9.4kgmを実現しています。同じエンジンでありながら大幅なパワーアップです。特に最高出力に関しては、軽自動車の規制値めいっぱいの出力を達成しています。
マツダ・CX-5
次にマツダの人気クロスオーバーSUVであるCX-5のNA車とターボ車を比較してみましょう。CX-5はクリーンディーゼルターボエンジン搭載車が高い人気を博していますが、今回は敢えて2.5Lガソリンエンジンを搭載するNA車とターボ車で比較してみます。
CX-5のNA車は、最高出力190馬力、最大トルク25.7kgmです。ミドルサイズのクロスオーバーSUVとしては必要十分な数値を実現していると思います。それに対してCX-5のターボ車は、最高出力230馬力、最大トルク42.8kgmと圧倒的なパワーを実現しているのです。
このように同排気量かつ同型エンジンで比較すると、NA車よりもターボ車の方が出力トルク面で大きく優れていることがわかりました。加速性能や登坂路での力強いトルク感を求める人は、出力トルク面で優れているターボ車の方がおすすめです。
使われる部品点数が異なる
NAエンジンと過給機付エンジンでは用いられている部品点数が異なっています。そもそもエンジンは燃料をエンジン内部で燃焼させてエネルギーを発生させるシステムです。たくさんの空気を取り込む程大きな出力を得ることができます。
NAエンジンは大気圧でシリンダー内に空気を送り込みますが、ターボエンジンは排気ガスでタービンを回転させると同時に、コンプレッサーで空気を圧縮してエンジン内部に強制的に空気を送り込みます。
そのおかげでターボエンジンをはじめとする過給機付エンジンは高出力高トルクを発生することができるのですが、より多くの空気をエンジン内部に送り込むためにはターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給機が必要です。
NAエンジンをベースとしている過給機付エンジンはどうしても部品点数が多くなってしまいます。部品点数が少ないNAエンジンは、過給機付エンジンと比べて沢山のメリットがあるのです。
NA車のメリット
まず、部品点数が少ないということは製造コストを抑えることができるということ。製造コストを抑えることができれば、メーカーは安い価格で販売しても利益を得ることができます。実際に同じ車種のNA車とターボ車なら、NA車の方がリーズナブルな価格です。
例えば、ダイハツ・タントのNA車のグレードのひとつ「X"SA Ⅲ"」の車両価格は1,420,200円からとなっています。軽自動車としては高価な価格帯に位置していますが、スーパーハイトワゴンとしては一般的な価格帯です。
「X"SA Ⅲ"」と同グレードに値するタントのターボ車は「Xターボ"SA Ⅲ"」となります。「Xターボ"SA Ⅲ"」の車両価格は1,501,200円からと、「X"SA Ⅲ"」よりも約8万円高い価格設定ということです。
タントの場合はNA車とターボ車に同じようなグレードがあったので、価格差はそれほど大きくありません。しかし、基本的にターボ車は上級グレードとして設定されることが多いため、車種によってはNA車よりも大幅に高い価格帯で販売されていることもあります。
部品点数が少なく故障しにくい
部品点数が少ないNA車は故障しにくいというメリットも挙げられます。ターボ車はターボチャージャーだけでなく、ターボチャージャーを冷却・潤滑するためのオイルパイプラインなどが備わっています。また、ターボ車は構造も複雑です。
一方、NA車は構造が単純なうえに、ターボ車特有の高出力を発生させるための負荷がかかりません。そのため、ターボ車よりもNA車の方が故障しにくいとされています。もちろん、ターボ車が故障しやすいというわけではありません。
ひと昔前のターボ車は故障が頻発する車両もありましたが、近年は改善されています。とはいえ、「部品点数が少ない=故障しにくい」というのは当然の話です。必ず故障するわけではありませんが、購入後に故障で悩みたくないのであれば、NAの購入をおすすめします。
エンジンの回転具合
NA車とターボ車ではエンジンの回転具合に違いがあります。一般的に過給機の類を一切採用していないNAエンジンは、高回転までもたつきなくトルクを発生させることができるのです。そのため、スポーツカーなど走りの性能を重視した車は高出力が期待できる過給機付エンジンではなく、あえてNAエンジンを採用するケースもあります。
過給機付エンジンは吸気を強制的に行うことができますが、その代わり排気効率が下がってしまうという弱点があるのです。排気効率が下がると、エンジンが発生させる出力の一部がガスを廃棄するために消耗されることになります。
この弱点はエンジンの回転数が高回転域になるとより顕著になります。要するにターボ車は、高回転域でトルクが下がる傾向にあり高回転域が苦手だということです。それに対してNA車は過給機を搭載していないためこのような弱点はありません。
NA車とターボ車の得意な回転域をチェック!
ダイハツ・タントのNA車とターボ車の得意な回転域をチェックしてみましょう。タントのNA車の最大トルクは6.1kgmとなっていますが、この数値はエンジンの回転数が5,200rpmに達した時に発生します。
続いてタントのターボ車ですが、タントのターボ車は最大トルク9.4kgmを発生します。最大トルクを発生するエンジンの回転数は3,200rpmです。これらを比較するとタントのNA車の方が高回転域までしっかりとトルクが発生していることがわかります。
高回転域で最大トルクが発生した方が良いというわけではありません。ターボ車のように低回転域からしっかりと最大トルクが発生した方が少なくとも街乗りでは快適です。スポーツ走行やドライブが好きな人は高回転型エンジンの方が気持ちよく運転を楽しめるでしょう。
現行モデルのNA車
NA車の特徴やターボ車との違いについて紹介しましたが、いかがだったでしょうか。基本的に同排気量のエンジンではターボ車の方が出力トルク面で勝る傾向にありますが、NA車にはNA車の、ターボ車にはターボ車の魅力があります。
そのため一概にどちらが優れていると結論づけることはできません。最後に走りを楽しめる現行モデルの国産NA車を3車種ピックアップしました。どれも魅力的な車に仕上がっているのでNA車に乗りたいと考えている人はぜひ参考にしてください。
86
まず初めに紹介するNA車は、トヨタのライトウェイトスポーツカー「86」です。86はトヨタとスバルが共同開発したFRレイアウトの2ドアクーペとして登場しました。トヨタのスポーツカーではありますが、スバルの技術がふんだんに盛り込まれています。
2019年現在、発売から7年が経過した86は、ビッグマイナーチェンジなどで熟成を重ねてスポーツカーとしての完成度が大きく向上しています。モデル待ちとなったことで次期型の噂も出ている86ですが、熟成が進んだ現行モデルを購入するのもひとつの手です。
スペック・走行性
最大の特徴は、エンジンに一般的な直列4気筒エンジンではなく、スバル独自の水平対向4気筒エンジンを搭載していること。FA20型2.0L水平対向4気筒直噴DOHCエンジンは、スバルのエンジンをベースにトヨタの筒内直接噴射・ポート噴射同時制御技術「D-4S」が組み合わさった夢のエンジンです。
86のエンジンは、最大出力207馬力、最大トルク21.6kgmを発生します。そんなエンジンを縦置きに搭載して後輪を駆動させる本格的なスポーツカーとして発売された86は、競合する車種がほとんど存在しなかったこともあり大ヒットを記録しました。
水平対向エンジンを用いることで、小型低重心定量というライトウェイトスポーツカーには欠かせないパッケージングを実現。オーナーが自分だけの1台を楽しみながら育てることができるように、ノーマルの時点でハイパワーな過給機付エンジンの搭載は見送られました。
ロードスター
続いて紹介するNA車は、「人馬一体」をキーワードにマツダが開発したライトウェイトオープンスポーツカー「NDロードスター」(4代目モデル) です。
初代ロードスターはライトウェイトスポーツカーの代名詞的存在として世界中で人気を博していますが、現行ロードスターはそんな初代ロードスターのコンセプトを踏襲して開発が進められました。
スペック・走行性
搭載するエンジンは、1.5L直列4気筒直噴DOHCエンジンです。最高出力は132馬力、最大トルクは15.5kgmとなっています。
スポーツカーとしては小排気量かつ非力な印象を受けるエンジンですが、運転の楽しさを堪能できるエンジンとしてはベストだとマツダは考えているそうです。エンジンレスポンスの良さやダイレクト感を楽しむためにはNAエンジンが最適なため、過給機付エンジンの採用は見送られています。
絶対的な動力性能は決して高くないロードスターですが、車両重量が990キロから1,060kgと、3ナンバー車としては非常に軽量なので運動性能は優秀です。ロードスターであればひらひらと舞うように軽快なドライブを楽しむことができます。
また、ロードスターといえば美しいデザインも大きな特徴のひとつ。ロードスターにはマツダのデザインテーマである魂動デザインが採用されています。ロー&ワイドかつ流麗なスタイリングはいい意味で日本車らしくありません。
標準のロードスターはルーフに手動ホロを採用していますが、派生モデルとしてロードスターRFと呼ばれるモデルが存在しています。ロードスターRFは、電動ハードトップを採用したモデルで標準のロードスターよりもさらに快適なドライブが楽しめるでしょう。
フェアレディZ
続いて紹介するNA車は、日産を代表するスポーツカーである「34フェアレディZ」(6代目モデル)です。上記で紹介した86やロードスターは安価な価格で購入できるライトウェイトスポーツカーとして販売されています。
それに対して、フェアレディZは大排気量エンジンを搭載したラグジュアリークーペとして販売されており、86やロードスターよりもワンランク上のスポーツカーです。フェアレディZが搭載しているエンジンは3.7L V型6気筒エンジンとなっています。
スペック・走行性
標準モデルは、最高出力336馬力、最大トルク37.2kgmを発生。エンジンにチューニングが加えられたハイパフォーマンスモデルの「Version NISMO」は、標準モデルと同じエンジンでありながら最高出力355馬力、最大トルク38.1kgmを発生します。
大排気量のエンジンを搭載することで、本格的な走りはもちろん優雅なドライブを快適に楽しむこともできる魅力的なスポーツカーに仕上がっているのです。
車両重量は1,480kgから1,530kgとスポーツカーとしては重量級ですが、力強いエンジンは重量級のボディをものともしません。
フェアレディZといえばあくまでクローズドモデルが主流ですが、フェアレディZロードスターと呼ばれるオープンモデルもラインナップされています。のんびりと優雅なドライブを楽しみたいのであればフェアレディZロードスターを、過激な走りも楽しみたい人は標準のフェアレディZもしくはVersion NISMOを購入すると良いでしょう。
レクサス RC/RC F
最後に紹介するNA車は、日本を代表する高級車ブランドであるレクサスの「RC」です。RCはレクサスがかつて販売していたSC(日本名:ソアラ)の後継車種として登場しました。
SCのようにオープンボディではありませんが、高い走行性能と上質感が備わっています。
RC
RCには大きく分けて「RC 350」「RC 300 h」「RC 300」の3種類が存在しています。3種類のモデルの中で純粋なNA車として販売されているモデルが「RC 350」です。RC350は3.5L V型6気筒エンジンを搭載しています。
最高出力は318馬力、最大トルクは38.7kgmと高出力です。高級クーペとしての快適性や上質感も備わっているため、車両重量は1,690~1,700 kgと重量級ですが、パワーがあるので高い走行性能を実現しています。
RC F
クローズドボディではありますが、快適かつ優雅なドライブを満喫するには最適のモデルです。高級クーペとはいえスポーツカーである以上、サーキットなどで過激な走りを楽しみたいという人もいるでしょう。そんな人におすすめのモデルが「RC F」です。
RC Fは、RCをベースにアグレッシブなサーキット走行が楽しめるハイパフォーマンススポーツカーとして開発された上級モデルです。レクサスのハイパフォーマンススポーツの証である「F」の称号が与えられています。
フロントマスクの意匠こそ異なるものの、スタイリングに大きな違いはありません。しかし、エンジンや足回り、空力パーツなどに専用の技術や装備を採用していて、レクサスのスポーツモデルを牽引する高い走行性能を実現しているのです。
RC Fが搭載しているエンジンは、5.0L V型8気筒直噴DOHCエンジン。ターボチャージャーをはじめとする過給機の類は一切採用されていません。にもかかわらず、最高出力は477馬力、最大トルクは54.0kgmと大排気量エンジンならではの高出力を発生します。
車両重量はRC350よりもさらに大きい1,780~1,790kgですが、RC FのV8エンジンが発生させるパワーは、2,000kgに迫る重量級ボディを振り回す力があるのです。フロント対向6ポット・リア対向4ポットのブレーキキャリパーは、ブレーキング時にRC Fの重量級ボディをしっかりと受け止めてくれるでしょう。
国産車屈指の走行性能を誇るRC Fはもはやスーパーカーといっても過言ではないほどの力を秘めています。誰でも気軽に購入できるモデルではありませんが、短い人生のうち1度は所有してみたいスポーツカーです。
まとめ
今回はNA車の魅力を存分にお伝えしました。NA車とターボ車はそれぞれに異なる魅力が備わっています。それは実用面だけでなく、走りに関しても同様です。特に走りの性能に関しては好みによってNA車派かターボ車派で大きく分かれるでしょう。
スポーツカーに限っていえば、過給機による暴力的な加速を味わえるターボ車と下から上まで気持ち良く吹け上がるNA車、どちらも楽しさを感じるポイントが違います。どちらも1度所有した上で、自分好みのエンジンを搭載している車種を探してみてください。
記事後半では走りを楽しめる現行モデルの国産NA車をピックアップしました。車好きならその存在を知っていて当然の車種ばかりだと思います。運転を楽しめるNA車を探している人は今回ピックアップした車種を参考にしてもらえると幸いです。