車の記事でよく見るトラクションって何?馬力とは違うの?わかりやすく解説します!

2019年05月15日

車の記事でよく見るトラクションって何?馬力とは違うの?わかりやすく解説します!

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トラクションとは車の推進力。車はタイヤがしっかりと地面に接していなければ、どれだけ馬力を与えたとしても推進力を得ることはできません。トラクションの定義と発生する仕組み、トラクションをかける方法を解説します。

トラクションとは?

トラクション(Traction)とは、和訳すると牽引力、粘着摩擦力を意味します。つまり、トラクションとは、車を前に進めるための推進力であり、加速するために使える駆動輪タイヤのグリップ力と言い換えることができます。

タイヤグリップ力は路面自体の摩擦力が高いほど増します。そして、タイヤの温度、接地角度、接地面積、接地荷重、スリップ率が最適である場合に最大となります。それらは走行中は常に変動しているため、たとえ一定の力でタイヤを回転させていたとしてもトラクションがかかるときと、かからないときが生まれてしまいます。

トラクションがかからないとどうなる?

トラクションがかからない状態というのは、タイヤを回転させる力がタイヤのグリップ力を大幅に超えてしまい、エンジンのパワーをロスしている状態。つまり駆動輪が盛大にホイールスピンをしてタイヤが滑っている状態です。

その状態では、タイヤの摩擦力は極端に低下しているため、空気抵抗と路面抵抗によって車は前に進むことができません。コーナリング途中であれば遠心力も加わり、駆動輪は走行ライン外側へと膨らんでいってしまいます。

トラクションと馬力やトルクは関係ない

どれだけ高出力なエンジンを搭載していたとしても、トラクションとして路面に伝えられる力はタイヤのグリップ性能が上限であるため、馬力やトルクの大きさはトラクション性能とは完全な比例関係にはありません。

大きすぎる馬力をタイヤに与えてトラクションが低下した場合は、アクセルを戻してタイヤのグリップ力と馬力が釣り合う状態まで出力を制限してやることでトラクション性能を回復してやることができます。

ドリフト中のトラクション

ドリフトは意図的にトラクションを失わせて、駆動輪を横方向へスライドさせる動作。微妙なアクセル操作によって、ゆるやかにトラクションのオンオフをコントロールするには、大きな馬力を素早く立ち上げられることが重要です。そうすることで横方向へのスライド量と、前に進めるトラクション量を上手くバランスさせ、車が斜め方向に進んでいるドリフト状態を維持させやすくすることができます。

しかし、ドリフト中に急にアクセルペダルを戻してしまうと、タイヤのグリップが回復し、トラクションが急激に立ち上がるため、反対方向に巻き込んでしまう、いわゆる「おつり」が発生してしまいます。

トラクションがかかりやすい車

駆動方式によって、瞬間的に大きなトラクションをかけられる車と、安定してトラクションを発揮できる車に分けられます。

前輪駆動車と後輪駆動車

車が加速するときには後輪に大きな荷重がかかるため、前輪駆動よりも後輪駆動のほうが瞬間的に大きなトラクションを発揮します。しかし、後輪駆動車は、減速時には荷重が前に移り、駆動する後輪は軽くなるため、減速時のトラクション性能は極端に低下しています。

駆動輪とエンジン搭載位置

軽い車よりも重い車の方が、駆動輪に大きな荷重が常に加わっているため、安定したトラクションを発揮することができます。とくに車のなかでもっとも重い部品であるエンジンが駆動輪側にあるほど安定したトラクション性能を発揮することができるため、FRよりFFのほうが状況を問わず安定したトラクションを発揮することができます。エンジンが後方にあるMRやRRは、エンジンの重さが加わった大きなトラクション性能を加減速によって増減できることが特徴です。

4WDのトラクション性能

四輪を駆動する4WDはやや特殊な例といえるでしょう。1本あたりのタイヤが路面に伝えられる馬力には上限があるため、駆動輪が多いほどトラクション性能は有利になります。そのため、4WDは2WDに比べて圧倒的に大きく安定したトラクション性能を発揮することができます。

フロントにエンジンを搭載した4WDよりも、リアにエンジンを搭載した4WDのほうが絶対的なトラクション性能は優れることになります。

トラクションをかけるには?

かけられるトラクションの上限を増やすことは、タイヤのグリップ性能を引き出すこととほぼイコールです。そのためには、太く柔らかいハイグリップタイヤに交換するのがもっとも簡単な方法ですが、車がタイヤに加えられる荷重に対して極端に太すぎるタイヤでは接地荷重が低下し、トラクション性能はむしろ低下してしまいます。

上手くトラクションをかけるためには、車を前に進ませたい状況で必要なトラクションを発揮できる車の状態と、車のトラクションを引き出す操作ができていることが肝心です。

トラクションがかかるセッティング

トラクションをかけるには、タイヤを路面に押し付ける力を強くすることが肝心です。駆動輪にかかる重量を増やしてやることでトラクションを向上させることができますが、単純に重量を増やしただけでは、遠心力が強まるとともにエンジンパワーをロスしてしまうため、トラクション性能向上のメリットは相殺されてしまいます。トラクションが掛かるようにするには、車重の増加を抑えたままタイヤに加わる荷重を増やしてやらなければいけません。

サスペンション

ノーマルの柔らかいサスペンションでは車のロール量が大きく、左右の駆動輪の荷重差によりタイヤのグリップ性能を引き出せているとはいえません。また、サスペンションが柔らかいと、トラクション性能タイヤ車重がタイヤを押し付ける荷重が最大になるまでにタイムラグが生じてしまい、必要なときにトラクションをかけることが難しくなります。

サスペンションを固くすることで、荷重をより素早く、ダイレクトにタイヤへと伝えることができるようになりますが、固すぎるサスペンションでは荷重の伝わり方が唐突になってしまうため、トラクションを発揮できる操作に対する許容範囲が狭くなります。

LSD

ノーマルデフ(オープンデフ)は構造上、過度にロールが発生した状態では、外輪に伝わるはずの駆動力が、接地荷重の小さな内輪のほうへと伝わってしまい、空転してトラクションがかからない状態に陥ってしまいます。

それを解消するのがLSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)。ロック率が高いLSDほどコーナリング中の左右輪の回転差を少なくして空転を抑え、イニシャルトルクが高いLSDほどトラクションをかける操作がコントローラブルになります。4WDが搭載するセンターデフの場合は加速時のフロント浮き上がりによるトラクション抜けを防止する効果があります。

リアスポイラー

車の横断面は、飛行機と同じ翼断面形状であるため、速度が上がるほど浮力が発生し、タイヤに加わる荷重が少なくなることでトラクション性能は低下します。それを解消するには、空気の流れを妨げるスポイラーや、翼断面形状の反対向きにすることで地面に押し付ける力が働くGTウィングなどの空力パーツが有効です。

トラクションがかかる操作

どれほどトラクション性能に優れた車でも、急にアクセルを踏み込み、一瞬にして100馬力や200馬力のパワーを与えればタイヤは空転しトラクションを失ってしまいます。そのためには、アクセルを一気に踏み込まず、少しだけスロットルを開け、トラクションがかかることを確認してから段階的にアクセルを踏み込むことが大切です。

ハイパワーでレスポンシブルなエンジンを搭載しているほど、連続的に変化する現在のトラクション上限を感じながら丁寧なアクセル操作を心がける必要があります。

トラクションコントロールシステム(TRC)

トラクションコントロールシステムとは、タイヤの空転を検知し、エンジン出力やタイヤの回転を制御することでトラクション抜けを防止するシステムです。アクセル操作に気を配らずとも、自動的にタイヤの空転を抑え、トラクションが抜けないように制御してくれるため、滑りやすい路面でも安定したトラクション性能を確保することができます。

制御技術の向上により、人間よりも精密にエンジン出力を制御したり、空転するタイヤだけにブレーキをかけたり、デフの動作を直接コントロールするなど、一定状況下であれば人間の操作以上の性能を発揮することが可能になっています。

まとめ

トラクションとは、車の推進力。車の動作はすべてタイヤを使っておこなっているため、タイヤがしっかりと接地していなければ良好なトラクション性能を発揮することはできません。つまり、トラクション性能がよい状態とは、アクセル操作に対して、タイヤを上手に使えるように車全体が協調している状態です。

ただし、走行中のトラクション性能は常に変動しているため、車の機械的なトラクション不足なのか、操作によるトラクション不足なのかを判断できることがもっとも重要です。車をカスタムする際は、トラクションについて理解し、必要なときに必要なだけトラクションをかけられる、安全な車を目指してセットアップすることが大切です。