2019年09月01日 (更新:2022年10月04日)
アライメント調整の内容と費用やDIYでの調整方法を解説!
自動車のタイヤホイールの並び具合を意味するアライメント。調整することで本来の走りを取り戻すことができるだけでなく、乗り味自体をチューニングすることが可能です。今回はアライメントの概要と調整費用について解説します。
アライメント調整とは
アライメント調整とは、自動車のタイヤホイールの向きや傾き(アライメント)を、その自動車の用途に合わせて最適な角度に整える作業のことをいいます。
どんな車でも狂ってしまうアライメント
自動車のタイヤホイールは、シャシーに組み付けられているアッパーアームやロアアーム、サスペンションなどによって位置決めが行われています。
これらのパーツの接続部分には衝撃吸収や耐久性を考慮してゴム製のブッシュが使用されており、このブッシュが経年劣化などによって変形するとタイヤホイールが正しい位置に支持されず、アライメントにズレが発生します。
その他、走行距離が多い車両はボディやシャシーの歪みなども影響します。
アライメントを調整するメリット
アライメントを正しく調整することで、車が意図した通りにスムーズに走るようになるだけでなく、燃費の向上やタイヤの摩耗軽減などが期待できます。各部にかかっていた負荷も軽減されるため、ブッシュの劣化防止にも繋がります。
アライメント調整が必要なとき
車が思うように走ってくれないとき
アライメントが狂うと、ステアリングを操作していないのに車が勝手に曲がっていく、などの現象が発生します。事故を未然に防ぐためにも調整が必要です。
タイヤが偏摩耗しているとき
アライメントが狂っていると、タイヤに無理な力が掛かり続けます。タイヤの内側や外側だけが減っている場合は、アライメントが狂っている証拠です。
事故や大きな段差を踏み越えたとき
タイヤがパンクするほどの大きな段差を乗り越えたときや、縁石にぶつけたりしたときも調整が必要です。いくら堅牢に作られている自動車の足回りでも、想定以上の衝撃には耐えられません。アライメント調整は、シャシーやアーム類の歪みを直したあと、最終仕上げ段階で行います。
足回りの部品を交換したとき
サスペンションを交換した時は必ずアライメントを行ってください。基本的に足回りをいじった時はアライメントは必須ですが、特にサスペンションを交換した時は1か所であっても必ずアライメントしてください。
同じサスペンションであっても、使用された年数によって微妙に違いますので、車がまっすぐ走らない可能性があります。またタイヤホイールのみ交換の場合は不要ですが、サスペンションやアーム類を交換した場合は、アームの取り付け位置が微妙に変わるため調整が必要です。古い純正品から新品の純正品へ交換する場合でも行っておきたい作業です。
車高を変更したとき
ダウンサスや車高調、リフトアップキットなどを調整して車高が変わったときもアライメント調整が必要です。特に車高を下げる場合は、ボディと干渉しないよう綿密な調整が必要です。
車高調ではダンパーを調整しているので、キャスター角やキャンバー角が狂ってしまう可能性が高く車高調整とアライメントはセットで行うということを覚えておきましょう。
主なアライメントの種類
トー角
トーはつま先の意味。車体を真上から見たとき、左右のタイヤがそれぞれ真っ直ぐ前を向いているかというものです。左右のタイヤの位置関係がスキーのボーゲンのように前へ向かって狭まっているものはトーイン、逆に広がっている場合はトーアウトとなります。
トー角調整による車の挙動の変化
通常トー角は0度(左右のタイヤが平行)に合わせますが、調整することで車の挙動の味付けを変えることができます。
- フロントタイヤがトーイン:直進安定性の向上
- フロントタイヤがトーアウト:操舵時の初期応答性の向上
- リアタイヤがトーイン:グリップの向上
- リアタイヤがトーアウト:回頭性の向上
キャンバー角
キャンバーは、車体を正面かつ車軸の高さから見たときに、車体に対してタイヤがどの方向にどれだけ傾いているかというものです。タイヤの上部が車体からはみ出るように傾いている場合はポジティブキャンバー、車体側へ倒れ込んでいる場合はネガティブキャンバーといいます。
キャンバー角調整によって得られる効果
キャンバーは、通常0度(直立)もしくは-1度(ネガティブキャンバー)程度でセッティングされています。ネガティブキャンバーにすると、車体が大きく傾くような急なコーナリング時にタイヤの接地面積が増え、かつタイヤのトレッド面に均等に力がかかるため安定したグリップが得られます。
しかしネガティブキャンバーのつけすぎはタイヤ内側の偏摩耗に繋がるため注意が必要です。
ポジティブキャンバーにすることはほぼ無い
ポジティブキャンバー(タイヤが車体外側へ向かって傾いている)は自動車の黎明期にステアリングを軽くするためフロントタイヤに用いられていたアライメントセッティングで、現代ではほぼ使われなくなりました。
キングピン
キングピンは、左右それぞれのステアリングの回転中心となる軸のことで、車体を正面かつ車軸の高さから見たとき、車体側へ傾いています。
この傾きは、ステアリングを切った後に元の直進位置へ戻す手助けをします。キングピン角は構造上決まっているため、大規模なカスタムでない限り調整することはありません。
キャスター角
キャスター角は、車体を側面かつ車軸の高さから見たときに、キングピン(回転中心)がどれだけ傾いているかというものです。
キャスター角はキングピン角と同じくステアリングの自己直進性を高めます。こちらもキングピン角と同様、大規模なカスタムでない限り調整することはありません。
ホイールアライメントの調整費用
アライメントの調整を業者に依頼すると、相場はおよそ¥20,000~30,000ほど。アライメントの測定と調整でそれぞれ料金が分けられている場合がほとんどです。
- アライメント測定料金:¥10,000~15,000(4輪全て)
- アライメント調整料金:¥15,000(一箇所につき¥2,000程度)
自動車の走行安定性の確保には4輪全てのバランスが重要となるため、たとえ縁石にぶつけたのが一箇所だったとしても全ての車輪のアライメントを測定する必要があります。ミリ単位の調整を繰り返す時間のかかる作業のため、工賃は少々高めです。
またフロントのトー角しか調整できないようになっている車種では細かな調整は行えません。しかし、ダブルウィッシュボーンやマルチリンクを採用している車の場合は、細かな調整を4輪全てで行うことができます。細かな調整を行った場合、費用は4万円ほどが平均的な相場になります。
アライメント調整作業の流れ
- どのようなアライメントに仕上げるのか打ち合わせ
- 車両に測定器をセットし現状のアライメントを測定
- アライメントが狂っているところ、変更したいところを調整
- 再度測定しトータルバランスを確認
車種によっては調整できない項目があるので、それを含めショップの方と事前に相談しましょう。調整することでどのような影響が出るのかも教えてもらえます。
DIYでアライメント測定や調整をする場合
ホイールアライメントの調整は、測定や調整に時間が大幅にかかる可能性が高く、ショップに任せるのが妥当とも言えますが、水準器、糸、錘もしくはアライメントゲージ等が有れば自分でも調整する事が可能です。
今回はアライメントケージを使用したアライメント調整を例に、大まかな流れを説明していきます。
- アライメントケージでキャンバーの数値測定をし、付属するソフトでキャンバーの数値、ホイールの直径を入力し、キャンバー角度を割り出す。
- アームの位置を確認し、アームのボルトを回して調整します
- タイヤの横にケージを合わせ、タイヤ両サイドのトー角を測ります。
- タイロッドの位置を確認し、タイロッドを回しながら調整します。
- 付属するパイプをタイヤ4箇所に取り付け、糸を張ります。
- パイプを取り付けていない内側の糸とホイールの距離を測り、左右の差を見て差が無ければ問題有りません。
トー角の調整方法
タイロッドとタイロッドエンドを固定しているナットを緩めてタイロッドを回すだけでトー角が変わります。左右のタイロッドを同じ分だけ回転させないとステアリングのセンターがずれるため注意が必要です。
車高調やダウンサスを取りつけ、ステアリングラックとステアリングナックルの位置関係(距離)が変化した場合は調整が必須の項目です。
キャンバー角の調整方法
キャンバー角の変更も可能です。ストラット式サスペンションの場合、ショックアブソーバーとステアリングナックルをつなぐ2本のボルトのうち上1本を外し、キャンバーボルトと呼ばれる少し細いボルトに交換します。
キャンバー角を変更したら、合わせてトー角も調整するようにしましょう。
まとめ
アライメントを正しく理解すれば、愛車の味付けを変えたり、ビジュアルを向上させることも可能です。正しいアライメントは走りの基礎ですが費用は¥30,000前後と少しかかりますが、シャキッとした走りを手に入れることができると考えればコスパは悪くなさそうです。