2019年03月12日 (更新:2024年07月30日)
サスペンションってなに?サスペンションについて徹底解説!
車のパーツのなかでも、よく耳にするにがサスペンション。この部品は一体どんな役割を果たしているのでしょうか?今回はサスペンションについて徹底解説するとともに、国内外のサスペンションメーカーも紹介します!
そもそもサスペンションとは?
サスペンションといわれて、しっかり理解できている方はどれほどいるでしょうか?
基本的にサスペンションは1つの車輪に1つ装着されているので、1台の車に4つ搭載されているということになります。簡単に説明すると、車のボディと車輪を繋いでいるパーツで、路面から伝わる衝撃を吸収し、和らげることが主な機能です。乗り心地を向上させる以外にも、走行性能を向上させるという役割も果たしています。
サスペンションは「懸架装置」
サスペンションを日本語言うと、懸架装置と呼ばれる部品になります。サスペンション自体は一つの部品ではなく、いくつかのパーツで構成されています。
- サスペンションアーム
- スプリング
- ショックアブソーバー
基本的には上記の3つを合わせてサスペンションと呼んでています。このサスペンションには様々な方式があり、それぞれの車種によって使用されている様式が異なるのもサスペンションの特徴ともいえるでしょう。
サスペンションがないとどうなる?
サスペンションが車に装着されていないと、どのようなことになるのでしょうか。サスペンションは地面からの衝撃を吸収するという役割を果たしていますから、それが無いということは、路面の段差やロードノイズを直に受けることになります。運転もシビアになってしまいますよね。
サスペンションがヘタるとどうなるの?
サスペンションがヘタるといっても、どんな状況になったらヘタっているのかを理解していないとわかりません。スプリングもダンパーも、どちらもヘタるという現象は起きます。それについて説明していきましょう。
スプリングのヘタりについて
ヘタりとは、スプリングが変形してしまうことです。通常、金属は元の形へ戻ろうとする働き(弾性変形)がありますが、長期間荷重が掛かることによって、元の形が変形してしまって戻らなくなってしまった状態(永久変形)のことを「ヘタり」と呼んでいます。
スプリングがヘタってくると、スプリングの長さが元々よりも短くなってしまい、見た目としては車高が低くなってきます。走行面では、稼動域が少なくなってくるため乗り心地が悪くなったという声もあります。よく分かるのは見た目の変化でしょう。
ダンパーのヘタりについて
ダンパーがヘタってくると、走行中にふわふわした乗り心地になって、コーナリングでは踏ん張りの効かない状態になってきます。ダンパーのヘタりについては、いくつか原因があります。
- 内部のオイルの劣化
- シールからのオイル漏れ
- バルブやオリフィスの不具合
- 内部ピストンの変形
4種類を挙げましたが、実際はまだまだあります。
ダンパーのヘタり確認の方法
取り外した時点でオイルが漏れているようであれば交換しなければいけません。外から見ただけではわからない場合は、次のような確認方法をとると良いでしょう。
まず、サスペンション単体にしてから、ダンパーとスプリングを分離してダンパーだけの状態にします。そして、ダンパーを上から地面に押さえつけて、押し戻ってくるかどうかでヘタり具合をチェックできます。
サスペンションの構成部品は?
先ほども簡単に紹介してましたが、サスペンションと一口に言っても、いくつかの部品から構成されているパーツになります。
スプリング(バネ)
皆さんがサスペンションと言われて、一番イメージしやすいのがスプリングでしょう。このスプリングは、衝撃を吸収して乗り心地を良くしてくれています。
走行距離が長くなって、スプリングがへたってくると、衝撃やノイズを吸収しなくなりますから、明らかに乗り心地が悪化します。また、車の車高を調整するために交換するパーツとしても知られており、スプリングの長さや固さによって車高を調整しています。
ショックアブソーバー
スプリングは衝撃を吸収しますが、その分反発しますよね。もしスプリングだけを車に装着すると、車はいつまでも上下に揺れ続けてしまいます。ショックアブソーバーはその反発を抑えて、急激に伸縮したスプリングの動きをゆっくり元に戻すという機能があります。
また、衝撃を吸収したタイヤがしっかり路面をとらえるという機能も果たしており、グリップ力の向上や、走行安定性を高めているパーツでもありますよ。
サスペンションは大きく分けると2種類
サスペンションの形式は、車軸懸架式と独立懸架式に分けられています。
古くからある車軸懸架式
車軸懸架式は、名前の通り、車軸で左右のタイヤが繋がっています。構造が単純で壊れにくく、製造コストも低いことから、現在でも多くの車が車軸懸架式を採用しています。しかし、これは左右両方の車輪で受けた衝撃をそのまま受けるというデメリットがあります。
現在では、トラックで採用されることが多いサスペンション形式です。乗用車ではジムニーなどが代表的ですね。
贅沢な独立懸架式
独立懸架式は、車軸懸架式とは違って左右のサスペンションが独立して可動するので、路面へのグリップ力、走行性能が高くなっています。部品点数が多く構造が複雑、かつコストがかかるので、採用されている車種も制限されますが、メリットも多い構造です。
独立していることで左右別で衝撃を吸収できるため、車軸式に比べると衝撃吸収性能は圧倒的に上です。乗り心地を最優先する方には、独立懸架式はマストでしょう。
独立懸架式サスペンションを詳しく見ていこう!
上記では、サスペンションを独立懸架式と車軸懸架式という2種類の種類に分けて紹介しました。独立懸架式さらに細分化することができ、それぞれメリットデメリットが違います。
採用されている車種もバラバラですから、種類ごとに分けて解説していきます。また、トーションビーム式サスペンションについては、独立懸架式と車軸懸架式の中間にあたるタイプのサスペンションとなっています。
ストラット式サスペンション
ストラット式サスペンションのメリットは、シンプルな構造かつ省スペースであること。そのため、エンジンルームのレイアウトの関係で、十分なスペースを確保できないFF車(前輪駆動車)に採用されることが多くなっています。
さらに、シンプルな構造なのでパーツが少なく、コストを抑えられるため多くの大衆車で採用されています。代表的な車種ではトヨタ・カローラ、ホンダ・フィットがこのストラット式サスペンションを採用しています。
もちろん、FF車のコンパクトカーに一番普及しているサスペンションと言っても過言ではないでしょう。
ダブルウィッシュボーン式サスペンション
スポーツカーや高級車に採用されることが多いダブルウィッシュボーン式サスペンションですが、他のサスペンションに比べて構造が複雑かつ、部品も多く、スペースも必要になります。
しかし、剛性や走行性能が高くなるので、コストよりも性能が求められるような車種にはダブルウィッシュボーン式サスペンションが採用されます。車種では、トヨタ・クラウンのようなセダンから、日産・GTRのようなスポーツカーまで幅広く採用されています。
マルチリンク式サスペンション
マルチリンク式サスペンションはダブルウィッシュボーン式サスペンションと似ており、構造は大体同じです。しかし、ダブルウィッシュボーン式サスペンションのような大きなアームが必要ない代わりに、リンクと呼ばれる複数の部品でサスペンションを支えています。
リンクを採用することにより、ダブルウィッシュボーン式サスペンションよりも自由度が高い設計が可能になります。そのため、車内空間を損なわずに高性能なサスペンションを装着でき、高い走行性能を実現できます。
ただ、マルチリンク式サスペンションの開発費は莫大で、それぞれの車種専用設計という場合が多いので、普通の一般車にはまず採用されないでしょう。レクサスGSやES、メルセデスベンツのEクラス以上の多くは、マルチリンク式サスペンションが採用されています。
トーションビーム式サスペンション
車軸懸架式と独立懸架式の中間に位置していて、他のサスペンションのようにどちらかに分類できないサスペンションとなっています。機構としては独立したサスペンションを備えつつ、トーションというパーツで繋がっているのが、車軸懸架式と独立懸架式の中間といわれる所以です。FFのコンパクトカーの多くは、前輪がストラット式サスペンションで、後輪はトーションビーム式サスペンションというパターン。
走行性や乗り心地を少し妥協することで、コストを抑えながら、スペースも確保できるのというのがその理由です。実際の採用車種としては、マツダ・デミオなどのコンパクトカーから、シエンタのような小型ミニバンまで幅広く採用されています。
車高調整式サスペンションについて
車高を下げたいのならば、スプリングもダンパーもセットで交換して、自分の好きな車高にすることのできる車高調を入れるとよいでしょう。車高調には、フルタップ式とねじ式の2種類があります。どちらもメリット・デメリットがありますのでご紹介していきます。
フルタップ式車高調
フルタップ式の場合は、スプリングのセット長を固定する「スプリングシート」と車高を調整する「ロックシート」の2つがあります。この2つに分かれていることによって、フルタップ式のメリットが発揮されます。
- メリット:スプリングの稼動域を変えずに車高が下げられる。ねじ式よりも下げられるうえ、乗り心地も変わらない。
- デメリット:ねじ式より高価。車高が下げられる量が多いが、下げすぎると走行性能が悪化する。
ねじ式車高調
ねじ式になると、ロックシートがなくなり車高の調整はスプリングシートによって、スプリングを縮めることによって行います。スプリングが縮まれば、その分稼動域が狭くなってしまいます。
- メリット:フルタップ式に比べて価格が安い。調整もシンプルで、簡単にできる。
- デメリット:スプリングの稼動域が狭くなるので、乗り心地が悪化し、下げすぎると底付きてしまう。
サスペンションそのものの違い
これまで紹介してきたサスペンションは全て、スプリングやショックアブソーバーを用いた構造になっています。それ以外にも、サスペンションにはスプリングやショックアブソーバーを用いない構造もありますので紹介していきます。
リーフスプリング式サスペンション
リーフスプリング式サスペンションは、スプリングの代わりに板バネと呼ばれる部品を重ねた構造になっています。この板バネに使われる素材は、鋼など頑丈な素材で作られており、スプリング式のサスペンションに比べて衝撃に強く、耐久性が非常に高くなっています。さらに、シンプルな構造でコストも安いことから、トラックで多く採用されています。
ただ、乗り心地の良さは圧倒的に悪くなっており、突き上げるような感覚になることもしばしば。一般車で採用する例はかなり減っています。新型ボルボ・S90やV90では新素材を採用したリーフスプリング式サスペンションを採用しており、今後も少数ながら採用する車種はありそうですね。
エアサスペンション
ごく稀に採用されるサスペンション方式となっており、トヨタ・クラウンマジェスタやレクサス・LSに採用されています。こちらは、名前の通りスプリングの代わりにゴムの風船に空気を入れたものを使用することで、スプリングでは吸収しきれないような小さな衝撃も吸収してくれるので、乗り心地はかなり良くなっています。
ただ、スプリング式などに比べると故障が多く、パッキン類の劣化によるエア漏れが多くなっています。そのため、頻繁な車高調整や、車高を落としたままの走行は、エアサスのゴムの寿命を縮めるということにも繋がるので注意が必要です。
また、空気を入れたり抜いたりすることで車高を調整できるという特徴もあり、ドレスアップと実用性を両立できるのがエアサスペンションでしょう。
サスペンションは交換できる!
車のサスペンションは交換することができます。主な効果でいえば、走行性能の向上や車高調整によるドレスアップが考えられます。ただ、自分で交換するのは難しいので、プロにお願いすると良いでしょう。
その場合の工賃としては約4万円〜が相場と言われており、このほかにサスペンションの部品代が必要になってきますから、それなりの費用を考えておかなければなりません。基本的に、サスペンションは車の性能アップやドレスアップの意味合いが強いですが、新車購入から5年もするとサスペンションの性能が落ちてきますから、交換するという方もいるようですよ。
国内サスペンションメーカーを紹介!
ここからは国内のサスペンションメーカーを紹介していきます。サスペンションは普段見えない部品なので、メーカーについてあまり知らないという方がほとんどだと思います。サスペンションの交換を考えている方は、ここで紹介していくサスペンションのメーカーを参考にしてみてはいかがでしょうか。
KYB
KYBといえば有名なのは、ショックアブソーバー(ダンパー)です。その信頼性の高さから純正品としても装着されており、スバル・レヴォーグなどでKYBのサスペンションが採用されています。
世界的に見てもKYBのサスペンションは高評価で、知名度も高いです。本格的なスポーツタイプのサスペンションもラインナップされていますが、「NEW SR SPECIAL」のように、ミニバンなどにも装着可能なサスペンションも発売されていますよ。
ショーワ
バイクや車向けのショックアブソーバーを製造しており、ホンダ系列の企業になっています。ホンダ車に多く純正として採用されることが多く、他の国内メーカーにも提供しています。もちろん純正品だけでなく、ショックアブソーバーとスプリングをセットにしサスペンションとして販売している、「SHOWA TUNING」というブランドもあります。
中でも「COMFORT」シリーズは、純正の乗り心地をさらにしなやかに、優しくしたサスペンションとなっていて、純正以上の乗り心地を実現してくれるサスペンションになっています。それでいて、しなやかさの中に強さもあるので、高速走行時には身をもってその安定性の高さを実感することができるでしょう。ショーワのサスペンションの代名詞でもある赤いサスペンションは、スポーティさも演出してくれますね。
テイン
車高調整式のサスペンションとして有名で、元はラリー車向けのサスペンションを開発していました。モータースポーツを主眼に置いているサスペンションであり、車高調なので足回りは固めのセッティング。
そんな本格派サスペンションのテインですが、価格もお手頃な価格帯です。中でもFLEX Zというシリーズに関しては、ミニバンやコンパクトカーに装着しても無理なく車高を落とせるため、ドレスアップパーツとしての意味合いもあります。
海外のサスペンションメーカーを紹介!
国内メーカーだけでなく、海外有名メーカーも紹介していきます。
ビルシュタイン
ヨーロッパの車大国であるドイツが生んだサスペンションメーカーが、ビルシュタインです。
日本でもスポーツカーなどにも採用されることが多く、メルセデスベンツ・BMWなどの純正サスペンションとして使用されています。プロ仕様のB12は、ドイツ国内生産されサーキット走行も可能な本格派サスペンション。また、比較的幅広い車に対応したB16などもあります。
オーリンズ
スウェーデンで創業したオーリンズは、かなり高級路線のサスペンションです。定期的にオーバーホールしながら手入れすることで、半永久的に性能を維持することができると言われているサスペンションです。
また、見えにくいサスペンションでありながら、外見が非常にカッコイイのもオーリンズのサスペンションが選ばれる理由の1つでしょう。有名なシリーズはオーリンズDFVで、スプリングが伸びる時と、縮む時の減衰力を個別に調整できる画期的なサスペンションです。
オーリンズでネックになるのは、やはり高額であるということでしょう。スプリングとショックアブソーバーを1台交換するとなると、30万円~となりますので、それなりの資金を用意しなければなりません。
まとめ
サスペンションはかなり奥が深いパーツです。サスペンション1つで乗り心地から走行性能、さらには見た目まで変わるので、車のカスタムには欠かせないパーツといえます。サスペンションのメーカーはたくさんあり、それぞれ乗り心地が違います。自分の車の乗り心地を変えたいと感じているならば、ぜひ交換してみてはいかがでしょうか。