2019年09月01日 (更新:2020年08月18日)
自動車に定められている法定定期点検とは?
自動車の点検義務として定められている法定定期点検は御存じでしょうか。自動車のフロントガラスに貼られている丸いステッカーが法定定期点検シールです。ここでは、法定定期点検にはどのような種類があるのか、そして車検との関係や罰則の有無など詳しく解説していきます。
法定定期点検とは
車の点検には、自動車を使用する前に、車の周りの確認やエンジンルームを覗いたりする日常点検などがありますが、法定定期点検はもっと専門的な点検方法となります。法定定期点検とは、道路運送車両法により一般ユーザーに義務付けている点検です。一般ユーザーでも法定定期点検を行うことはできますが、専門知識や技術が必要になる点検なので、整備工場で行う人がほとんどです。
道路運送車両法で定められている定期点検
道路運送車両法第48条で、車を使う人は一定の期間で定期点検を行うことを義務つけられています。
一般的に3か月・6か月・12か月・24か月の4回に分かれていますが、マイカー(自家用自動車、軽自動車)は、12か月と24か月の2回定期点検を受ければよいことになっています。法定定期点検は、一般的な自動車の使い方において、構造や装置の不具合や消耗具合を点検することが主な目的となります。
車検でチェック
自動車に乗っていれば、普通自動車も軽自動車も2年に一度車検を受けることになります。この時に整備を行いますが、その際に車検整備とは別で行う点検が法定定期点検となります。法定定期点検終える、助手席側のフロントガラス上部に、丸いステッカーが貼られてきますが、これが法定定期点検の実施を証明するステッカーとなります。
法定定期点検シールの中央には和暦の年が印字されており、それを取り囲むように月を表す1~12の数字が印字されています。これによって、何年の何月に法定点検が行われたかわかる仕組みになっています。ただし、この法定点検ステッカーは、期限が切れた後は剥がさなければ法律違反となります。
法定定期点検の種類
法定定期点検は自家用車と事業用車両とで、点検を行う間隔が異なります。
- マイカー(自家用自動車・軽自動車)1年ごとと2年ごと。
- 中小型トラック(自家用)レンタカー(乗用車)では6か月ごとと12か月ごと。
- バス、トラック、タクシー(事業用)大型トラック(自家用)レンタカー(乗用車以外)では、3か月ごと12か月ごと。
このように、使用する自動車の用途により、法定定期点検の実施間隔が異なります。
そこで、一般的なマイカーにおける法定定期点検について、詳しく見ていきます。
12ヶ月点検
12ヶ月点検は、1年に一度行う定期点検です。次回の点検実施時期は、助手席側の丸い法定点検シールで確認することができます。
自家用車の12ヶ月点検では26項目の点検を実施する義務がありますが、特例として年間走行距離が5,000km以下で前回定期点検の実施が行われていると、11項目の点検が免除されます。
点検項目
点検項目 | 点検内容 |
パワーステアリング装置 | ベルトのゆるみ、損傷 |
ブレーキペダル | 1、遊び及びブレーキを踏んだ時の床板戸の隙間2、ブレーキの利き具合 |
駐車ブレーキ(サイドブレーキ)機構 | 1、ブレーキの引きしろ2、ブレーキの利き具合 |
ブレーキホース及びブレーキパイプ | 取付状態、損傷や漏れの有無 |
マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ及びディスク・キャリパ | ブレーキ液漏れの有無 |
※ブレーキ・ドラム及びブレーキ・シュー | 1、ドラムとライニングとのすき間が適正か2、シューの摺動部分及びライニングの摩耗状態 |
※ブレーキ・ディスク及びパッド | 1、ディスクとパッドとのすき間が適正か2、パッドの摩耗状態 |
※タイヤホイール | 1、タイヤの状態2、ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩みの点検 |
クラッチ | ペダルの遊び及びクラッチが切れたときの床板とのすき間が適正か |
※トランスミッション及びトランスファ | オイル量およびオイル漏れの有無 |
※プロペラ・シャフト及びドライブ・シャフト | 連結部のゆるみの点検 |
点火装置 | ※1、点火プラグの状態(白金プラグ、イリジウムプラグは省略可能)2、点火時期3、ディストリビューターのキャップの状態 |
バッテリー | ターミナルの取付状態 |
エンジン本体 | 1、排気の状態※2、エア・クリーナ・エレメントの汚れの状態 |
エンジンオイル | オイル漏れ |
冷却装置 | 1、冷却水の漏れの有無2、ファンベルトのゆるみ、損傷 |
※エグゾースト・パイプ及びマフラ | 取付ボルトのゆるみ、排気漏れ、損傷の有無 |
※は、5,000km以下で前回定期点検が行われていると省略できる点検。 |
12ヶ月点検は、かなり簡単な点検項目となっていますが、それでもブレーキの点検や下回りの点検には、それなりの設備や技術、知識が必要になるので、専門の整備工場で行うのが良いでしょう。
24ヶ月点検
24ヶ月点検では、12ヶ月点検の項目も加えることになっているので、総点検項目は56項目となります。この24か月点検も、1年間の走行距離が5,000km以下で前回の該当点検を行っている場合は、18項目省略することができます。
24ヶ月点検は車検時に同時に行われることが多く、車検と法定24か月定期点検と混同している人が多くいます。しかし、車検と法定24ヶ月定期点検は全く別の点検となります。
車検では保安基準を満たした車であるか点検しまするのに対し、法定24ヶ月点検では次の法定24ヶ月定期点検まで問題なく走れるか点検するのです。
点検項目 | 点検は12ヶ月点検に以下の点検を加える |
ハンドル | 操作具合 |
※ギヤ・ボックス | 取付けの緩み |
ロッド及びアーム類 | (※)1 緩み、がた及び損傷2 ボール・ジョイントのダスト・ブーツの亀き裂及び損傷 |
※かじ取り車輪 | ホイール・アライメント |
パワー・ステアリング装置 | 1 油漏れ及び油量(※)2 取付けの緩み |
制動装置
マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ及びディスク・キャリパ | 機能、摩耗及び損傷 |
ブレーキ・ドラム及びブレーキ・シュー | ドラムの摩耗及び損傷 |
ブレーキ・ディスク及びパッド | ディスクの摩耗及び損傷 |
走行装置
※ホイール | 1 フロント・ホイール・ベアリングのがた2 リヤ・ホイール・ベアリングのがた |
緩衝装置
取付部及び連結部 | 緩み、がた及び損傷 |
ショック・アブソーバ | 油漏れ及び損傷 |
動力伝達装置
プロペラ・シャフト及びドライブ・シャフト | 自在継手部のダスト・ブーツの亀裂及び損傷 |
※デファレンシャル | 油漏れ及び油量 |
電気装置
電気配線 | 接続部部の緩みおよび損傷 |
原動機
燃料装置 | 燃料漏れ |
ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置
ブローバイ・ガス還元装置 | 1 メターリング・バルブの状態2 配管の損傷 |
燃料蒸発ガス排出抑止装置 | 1 配管等の損傷2 チャコール・キャニスタの詰まり及び損傷3 チェック・バルブの機能 |
一酸化炭素等発散防止装置 | 1 触媒反応方式等排出ガス減少装置の取付けの緩み及び損傷2 二次空気供給装置の機能3 排気ガス再循環装置の機能4 減速時排気ガス減少装置の機能5 配管の損傷及び取付状態 |
エキゾースト・パイプ及びマフラ | マフラの機能の状態 |
車枠および車体 | 緩みおよび損傷 |
※は、1年間の走行距離が5,000km以下で、当該の点検が行われていた場合は、免除されます。
法定24ヶ月定期点検となると、専門技術や知識が必要となり、ユーザー自身で24ヶ月定期点検を行うのはかなりハードルが高いでしょう。
ユーザー車検における法定定期点検
ユーザー車検を指南しているサイトなどに、24ヶ月点検記録簿を車検の書類と一緒に提出するよう説明があることがありますが、現在のユーザー車検では、法定24ヶ月定期点検記録簿の提出は義務付けられていません。車検が合格した後、書類提出時に「後整備」と告げることで問題なく車検を終えることができます。ただし、法定定期点検は法律で定められている点検なので、車検に必要なくても行う必要があります。
法律で定められているが罰則はない
普通乗用車の法定定期点検は、道路運送車両法で点検を行うことが義務付けられていますが、罰則規定はありません。しかし、新車で購入した際にメーカーの補償を受ける場合には、法定定期点検を受けていないと補償対象外のケースとなることがあるため、メンテナンスノートを確認しておきましょう。
また、もし法定定期点検をせずに事故を起こし、その原因が整備不良であった場合、ドライバー本人が多大な責任を負うことになります。このように法定定期点検を受けていないだけでは罰則対象とはなりませんが、受けていないことで不利になるケースがあります。
ユーザー車検における注意点
24ヶ月点検記録簿をユーザー車検で持っていく必要はなくなりましたが、もし24ヶ月定期点検記録簿を持参する場合は、車検証記載の使用者の住所氏名を点検記録簿に記入する必要があります。
持参の必要がなくなった法定定期点検記録簿ですが、後整備をしなければならないことには変わりないので、ユーザー車検後には整備工場などで法定点検の実施をしましょう。
まとめ
自動車には、法定定期点検の義務付けがありますが、受けないからといって罰則規定はありません。しかし、自動車は約3万点のパーツからなる精密な機械です。大きな故障を避けるためにも必ず法定定期点検を行い、快適なカーライフを送りましょう。