2019年02月06日 (更新:2020年08月07日)
EK型シビックを徹底解説!スペックから他車比較、カスタム例も!
国産ホットハッチ・FFスポーツカーの代名詞的存在として、今尚熱狂的なファンの多いホンダのハッチバック、シビック。そのシビックの6代目にあたり、初めて「タイプR」グレードが設定されたことでも有名なモデルがEK型です。この記事ではEK型シビックについて、タイプRやSiRを中心として、グレード、他車比較、カスタム事例まで徹底解説します!
EK型シビックの基本情報
1972年の登場以来、ホンダを、そして日本を代表するFFスポーツコンパクト・ホットハッチとして世界中の車好きから支持され続けてきたホンダのコンパクトカー、シビック。
そんなシビックの中でも6代目となるのが今回紹介するEK型シビック、通称「ミラクルシビック」です。
世界中の走り好きの喝采を浴びた5代目EG型譲りの前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションやB型VTECエンジンをさらに改良した上で採用したEK型シビックは、ジャパニーズホットハッチとしてのシビックの存在を不動のものとしました。
しかしライバル達もその状況に対して黙っているはずはありません。日産のパルサー、三菱のミラージュといったライバルマシン達もモデルチェンジによりさらにその走りを磨き上げていました。
そんな他車の猛追を振り切るべく、ついに1997年、あの「タイプR」が登場します。
NSX、インテグラに続くタイプRシリーズ第3弾となったこのモデルは、インテグラタイプRと同様の「本物のスポーツカーを、より多くの人々が手に入れられる価格帯で提供する」というコンセプトのもと開発され、インテグラと同様に徹底した軽量化や剛性アップ、エンジンや足回りの更なる改良といった本気の「ワークスチューン」が施されました。
このような他車では考えられない徹底したチューニングが施されたシビックタイプRは、当時の1600CCクラス最速マシンとしてのシビックの立場を不動のものとし、伝説的な日本製スポーツカーの一台として名を轟かせました。
ホンダ伝統のFFレイアウト、VTECエンジン、そして「シビック」の名前・・・EK型シビックはまさに90年代までのホンダのスポーツコンパクトの集大成と言える一台なのです。
EK型シビックのバリエーション
一口にEK型シビックといっても実は様々なバリエーションが存在します。この項ではそんなDC2インテグラのバリエーションの一部を紹介します。
これが元祖スポーティ・シビック!:SiR/SiR Ⅱ
どうしてもタイプRばかりが注目されがちなEK型シビックですが、シビックの歴史を紐解いていくと実はスポーティ・シビックの本流はSi・SiRグレードにあるとも言えます。
EK型シビックのSiRグレードには、先代EG型に搭載されたものをさらに改良した、1600CCのNAエンジンながらホンダが誇る可変バルブタイミング・リフト機構VTECを採用したに最高出力170PS(つまりリッター106馬力以上!)を発生させるB16A型エンジンが搭載され、こちらも前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションを核とする優れた設計の足回りとあいまって、当時のFFコンパクトカーとしてはトップクラスの走行性能を実現していました。
その旋回性能と切れ味の鋭いエンジン特性がもたらす走りの楽しさは、当時の同クラス車はおろか現代のスポーツカーと比較しても高いレベルにあると言えるでしょう。
このSiRグレードには、当初快適装備を廃したレースベース色の強い「SiR」とそれに快適装備を加えた「SiRⅡ」の2種類のグレードが用意されていました。
しかし後述のタイプRの登場に伴いグレードの整理が行われ、タイプRのレースベース車とキャラクターの被るSiRが廃止され、以降はその代わりにSiRⅡをSiRに改名して販売が行われました。
また、EK型シビックには1500CCエンジンを搭載したVTiやRi(型式はEK3)や1300CCのEL(型式はEK2)、天然ガスを燃料とするGXなど、歴代シビック同様スポーティ系以外にも多彩なグレード展開がなされ、幅広い層から支持されました。
タイプRの影にどうしても隠れがちなSiRですが、本来シビックの持つカジュアルかつスポーティなキャラクターや爽快なドライブフィールを味わうのであれば、タイプRよりも背負うものの少ないこちらの方が良いかもしれません。
赤バッジを手に入れた最強のテンロクホットハッチ :タイプR
1997年、ついにあの「タイプR」がシビックシリーズに加わります。
タイプRはあらゆる点において特別なモデルでした。
まず一番の特色はエンジンでしょう。タイプRに搭載されたB16B型エンジンは、排気量こそSiRのB16A型と同じ1600CCでしたが、B16Aのスープアップ版ではなく、DC2型インテグラタイプRに搭載された1800CCのB18C型エンジンをショートストローク化したシビックタイプR専用のスペシャルなエンジンでした。
このエンジンはNAながら並の上位クラスエンジンを凌ぐ最高出力185PS、最大トルク16.3kgf・mという当時の1600CCエンジンとしてはトップクラスのスペックを誇り、レッドゾーンまで勢いよく吹け上がるそのエンジンフィールは多くのスポーツカーマニアを虜にしました。
この高いエンジン性能を支える足回りやブレーキも当然ながら強化されており、専用チューニングのサスペンションはもちろん、各種スタビライザー等による足回りの強化やブレーキの大容量化、ハブの5穴化など、先に登場したDC2型インテグラタイプRの経験も踏まえた各部の強化により、通常のスポーツグレードとは一味違う「タイプR」の名に恥じない鋭い走りを実現していました。
ボディ剛性の強化や軽量化も徹底的に行われています。タワーバー等による剛性アップや遮音材の一部除去、装備の簡略化はもちろん、剛性が必要ない部分はボディの鋼板の厚みを削り、逆に必要な部分は厚みを増やすといったメーカーチューンならではの剛性強化&軽量化までもがタイプRには施されていたのです。
ホンダが持てる技術と情熱の全てを注ぎ込んで開発した究極の1600CCホットハッチ、それがEK9型シビックタイプRなのです。
シビックの走りをセダンで楽しむ:フェリオ
EK型シビックに用意されたボディタイプはスポーティな3ドアハッチバックだけではありませんでした。
先代から継続設定されたセダンモデル「フェリオ」もその一つです。
若々しい3ドアハッチバックに比べやや成熟したユーザー層を狙ったフェリオでしたが、そんなフェリオにも「EK4」の型式を持つスポーツグレード「Si」、「SiⅡ」が設定されていました。
これは基本的にはハッチバックのSiR・SiRⅡに相当するグレードで、車重こそ3ドアよりも40kgほど重かったものの、3ドアと同じB16A型エンジンと足回りにより軽快な走りを実現していました(ちなみにタイプR登場後はこちらもSiRと同じくSiに一本化されました)。
また、後期型にはSiの弟分として1500CCエンジンのスポーツグレードVi-RSが登場します。
これはD15A型エンジンを搭載するViをベースに、Siと同様の外観や足回りが与えられたモデルで、型式は「EK3」となります。
ハッチバックの印象が強いシビックですが、シビックの走りの良さを味わいながらも少し個性が欲しいという人にはフェリオのスポーツグレードはまさにうってつけであると言えます。
アメリカの風を感じる2ドア:クーペ
EK型シビックに設定されたボディバリエーションにはフェリオの他にもう一つあります。
それが、この項で紹介するクーペです。
アメリカで生産されていたモデル(そのため型式は正確には日本向けモデルのような「EK」がつかない「EJ7」)を輸入し、D16A型エンジンにCVTという組み合わせのグレードのみが展開されていたクーペですが、北米仕様にはB16Aエンジンを搭載したスポーツグレードSi(型式はEM1)も用意されていました。
スポーティなイメージの強いシビックシリーズの中で、最もアメリカンでゆったりした雰囲気を楽しめる異色のモデルがクーペなのです。
EK型シビックとN15型パルサーの比較
1990年代のFFホットハッチの代表格と言えるシビックですが、この時代にはシビック以外にも素晴らしいホットハッチが多く生み出されました。
その中でも外せない車種の一台がパルサーセリエVZ-Rです。
1978年の登場以来ヨーロッパ車のような雰囲気と走り味を売りにしてきた日産の中型ハッチバック、パルサーの5代目となるN15型に設定されたホットモデルであるパルサーセリエVZ-Rは、まさにシビックの天敵と呼べるようなモデルでした。
この項ではEK4型シビックSiR・EK9型シビックタイプRとN15型パルサーVZ-R・パルサーVZ-R N1を比較しながらシビックのホットハッチとしての魅力をより深く見ていきます。
エンジン-1600CC頂上決戦!B16B vs SR16VE
まずはエンジンから見ていきましょう。
シビックもパルサーも、どちらも1600CCエンジンを搭載する「テンロク」ホットハッチです。
まずシビックには、これまでも述べたようにSiRには最高出力170PSを発揮するB16A型が、タイプRには185PSを発揮するB16B型がそれぞれ搭載されており、どちらも可変バルブタイミング・リフト機構VTECが備わっています。
一方パルサーには、VZ-R・VZ-R N1共にシルビア等に搭載されていたSRエンジンの1600CC版であり、VTECと構造の近い可変バルブタイミング・リフト機構「NEO VVL」を備えたSR16VE型が搭載されていました。
その中でも、SiRのライバルとなる通常モデルのVZ-Rには通称「青ヘッド」と呼ばれる青いヘッドカバーを持ち、SiRを上回る最高出力175PSを発揮するものが搭載されました。
またタイプRに真っ向から勝負を挑んだ限定車VZ-R N1には、そのエンジンをさらにチューニングし、なんと当時クラス最強の200PSを発揮する通称「赤ヘッド」と呼ばれるスペシャルユニットが搭載されました。
ホンダのB型エンジンと日産のSRエンジンという国産4気筒エンジンの2大巨頭を搭載したシビックとパルサー。どちらも名機ですが、スペック的には後発のパルサーの方に分があるようです。
足回り
スポーティな走りを支える足回りはどうでしょうか。
まずシビックには先述のように4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションが与えられています。
EK型の先先代モデルとなるEF型(通称「グランドシビック」)から継続して採用されているこのサスペンション形式により、シビックはFFハンドリングマシンとしての名を欲しいままにしていたのです。
また、タイプRではサスペンションや各種スタビライザー、ブレーキ廻りの強化によりさらなるハイレベルな走りを実現していました。
一方、パルサーに採用されていたのはフロントがストラット式、リアがマルチリンク式という比較的コンベンショナルなものでした。
最強モデルのVZ-R N1でもタイプRと同じように各部の強化は行われましたが、サスペンション形式に大きな変更は加えられませんでした。
このように、この項目では走りという面についてはシビックに分があると言えます。
シビックのような実用車のクラスで4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用した車種は世界的に見ても希少種であり、これがホットハッチ としてのシビックの地位を確立していると言っても良いでしょう。
まとめ
以上のように、90年代のFFホットハッチを代表する2台には実は大きなキャラクターの違いがあります。
十分以上な基本性能と抜群のコーナリングでハイパワーマシンとも互角に争えるシビックと、クラス最強のエンジンを武器とするパルサー、どちらを選ぶべきかは走るフィールドと目指すドライビングスタイルに変わってくるでしょう。
CARTUNEユーザーのカスタム紹介
スタンス系でキメる!よーすけさんのシビックSiR
エアロパーツは純正のままで車高を下げ、大胆にキャンバーをつけるスタンス系カスタムで仕上げられたよーすけさんのシビックSiR。
ステッカーボムや反りの深いホイール、イエローのサイドマーカーランプといったスタンス系やUSDMの基本をしっかりと抑えつつも、よーすけさん自作のステーでかち上げたリアスポイラーや、バイクのマフラーを加工して左出し(純正では右出し)に変更したマフラーなど細かなオリジナリティが光る一台です。
レーシングスピリットを公道へ!テンロクさんのシビックタイプR
定番のチャンピオンシップホワイトにBOMEXのエアロで武装したテンロクさんのシビックタイプR。
サイドの「CIVIC」ロゴ入りゼッケンスペースやタイヤのレタリングなど、往年のシビックレース、そしてあの「大阪環状族」をイメージさせるモチーフが散りばめられた一台です。
シビックタイプRの持つレーシーなキャラクターをさらに強調し、公道に解き放った一台と言えるでしょう。
全身スプーン仕様!あじゃほいさんのシビックタイプR
サンライトイエローのボディカラー、サイドのアドバンステッカー、そして足元を固めるリーガマイスター・・・チューニングカーに詳しい読者の皆さんならすぐにピンと来たでしょう、あじゃほいさんのシビックはホンダ専門の超有名老舗チューナー、「スプーン」のデモカーをかなり意識してカスタムされているのです。
スプーン仕様なのはルックスだけではありません。
スプーンN1マフラーやスプーン製のサスペンションなど、スプーンパーツはきちんと内部にも奢られています。
スプーンのレシピにきちんと沿って作られた、ホンダファンなら思わず唸る一台がこのシビックタイプRなのです。
てるさんのシビックタイプR
一見色が珍しいだけの普通のタイプRに見えるてるさんのシビックですが、なんとこれはごく少数のみ製造されたレースベース仕様のシビックタイプRです。
その名の通りレース参戦を目的にタイプRをさらにスパルタンに仕上げたこのレースベース仕様で、てるさんはスポーツ走行を楽しまれているそうです。
レアモデルとは言え、仕舞い込んだりせずにその特性をきちんと活かして乗られているというのが良いですね。
終わりに
いかがでしたでしょうか。以上のように、EK型シビックはFF1600CCクラスの走りの限界を突き詰め、それを楽しみやすい形で市場に提供した名車です。
峠道やサーキットでVTECの快音を響かせながらコーナーを攻めることも、仲間と遊びに出かけることもできるマルチなピュアスポーツカーとしてのホットハッチの魅力を最大限詰め込んだ90'sハッチバックのベンチマークとして、EK型シビックはまだまだ魅力的な一台であると言えるでしょう。