2022年02月20日 (更新:2024年08月29日)
暖機とは?暖機運転の必要性と具体的なやり方を解説
エンジン始動直後に車を暖める”暖機”。今回はたびたび話題となる暖機を行う意味や具体的なやり方についてご紹介。
よく話題となる暖機
車に乗り込みエンジンをかけてから何をすべきか。オーナーの間でたびたび話題となるのが暖機だ。暖機に関してはさまざまなウワサが飛び交っているが、そもそも暖機とはなんのために行うのだろうか、はたして必要なのだろうか。
暖機とは
暖機とは、エンジン始動後しばらくのあいだ低負荷で運転を行うこと。人でいうところの準備体操のようなもので、車を動かし始めるときに車全体をじっくりとやさしく暖める行為のことをいう。
車は暖まっていたほうが調子がいい
これはどんな車にも共通することだが、車は暖まっていたほうが調子がいい。エンジンや駆動系などといった機械部品は、暖まった状態で本来の性能を発揮できるよう設計されており、冷えている状態では多少無理をさせていることとなる。暖めることによって変化する要素は次のようなものだ。
- 各パーツが適切な状態に整う
- オイルが柔らかくなり各部へ行き渡る
各パーツが適切な状態に整う
車のパーツのほとんどは金属でできており、金属は熱で膨張する性質がある。
ガソリンを燃やすエンジンやギヤを噛み合わせて駆動力に変換するトランスミッションなど、熱が発生するパーツは熱膨張後の大きさを基準に設計されているため、暖機を行って各パーツに熱を入れることで本来の性能を発揮できる状態に整っていく。
オイルが柔らかくなり各部へ行き渡る
サラダ油をひいたフライパンを温めると硬かったサラダ油が徐々に柔らかくなっていくように、オイルには低温での流動性が低く、高温での流動性が高くなる特性がある。
エンジンやトランスミッション、デフなどにはスムーズに動くよう潤滑を目的としてオイルが注入されているが、これを細部のすみずみまで行き渡らせるにはオイルを柔らかくする必要がある。暖機によってオイルが柔らかくなると、オイルが各部へ十分に行き渡りスムーズな動きが可能となる。
暖機をする必要はあるのか
しかし、そもそも車は走っていればそのうち暖まるものだ。わざわざ意識して”暖機”を行う必要などあるのだろうか?
これについてズバリ言えばしたほうが良いが結論だ。短期的にみれば暖まるという結果は同じだが、長期的にみると大きな違いを生む。
暖機をすべき理由
先述のとおり、車は暖まることで各パーツが整いしっかりと潤滑が行われる。これは裏を返すと、冷えている状態では各部の状態が整っておらず十分に潤滑ができないということだ。暖まっていない状態でグイグイと走ると、まだ熱膨張しきっていないピストンが暴れて削れたり、ベアリングメタルなどの重要な部分の潤滑ができず致命的な傷をつけてしまったりする。
暖機するガソリンがもったいないから、急いでいるからといった理由で暖機なしでガンガンと走っていると、車に少しずつダメージを蓄積させることとなる。結果的にはエンジン交換などの高額な修理費用が発生する可能性が高まるのだ。
近年主流の暖機方法
昔の暖機と比較すると、現代で主流とされている暖機は少々異なる。ドライバーによって思い浮かべる暖機方法が異なる可能性があるので、ここで一旦整理しておく。
停車状態での暖機
昔から行われており、多くのドライバーが想像または実施しているのがこの停止状態での暖機だろう。駐車場で停車したまま数分間エンジンをかけておくというものだが、この暖機のやり方では駆動系を暖められないことから、近年では下記の走行暖機が主流となっている。
走行暖機
近年主流となっている暖機方法が走行状態での暖機だ。走行暖機と呼ばれており、エンジンを始動して少ししたらゆっくりと走り始め、エンジンと駆動系を同時に動かしながら暖めていくというもの。この走行暖機のやり方と具体的な目安を見ていこう。
暖機のやり方と具体的な目安
車の暖機のやり方と具体的な目安は次のようになっている。エンジンやその他各部を徹底的にチューニングしたような車両を除いて、ほとんどの車はこのような走行暖機でOKだ。
- 停止状態での暖機は1分〜2分
- ゆっくりを心がけて走り出す
- ギヤは無理に入れない
- エンジン回転数は3000回転まで
- 速度は40km/hまでに抑える
停止状態での暖機は1分〜2分
エンジン始動直後はまだオイルの循環が始まったばかり。充分な潤滑ができていない状態で回転数を上げたり走行負荷をかけると各部の極端な消耗を招いてしまうため、1分〜2分ほど停止状態で暖機を行うようにしよう。
エンジン始動直後は回転数を自動的に上げるアイドルアップ制御が入る。停止状態での暖機はこのアイドルアップ制御に任せ、むやみにやたらにアクセルを踏み足さないようにしよう。寒い時期でも、2分も経てばアイドリングは落ち着いてくるはずだ。
ゆっくりを心がけて走り出す
アクセルを必要分だけ踏み、そろりそろりと走り出そう。急なアクセル操作はエンジンや駆動系にダメージを与えるだけでなく、エンジン内部に不完全燃焼によるススを発生させる。このススは取り除くのが非常に難しいうえに、燃費を悪化させる要因となる。
ギヤは無理に入れない
MT車の場合、トランスミッションが暖まっていないとギヤが思うように入らない場合がある。その場合は無理に入れようとせず、いったん別のギヤに入れて再トライするなどの手法を取るのがベストだ。またエンジンの熱はトランスミッションにもわずかながら伝わるため、もう少し待ってみるのもアリ。普段からいろいろ試して自分の車のクセを把握しておくと、発進がよりスムーズになる。
エンジン回転数は3000回転まで
冷えたエンジンをいきなり高回転させると、適切なサイズまで熱膨張していないパーツが暴れてトラブルを引き起こすほか、オイルが硬いために潤滑が行き届かず各部が極端に摩耗してしまう可能性がある。
速度は40km/hまでに抑える
たとえエンジン回転数をおさえて走ったとしても、ギヤを上げて速度を増せば駆動系はその速度に応じた回転数で回ってしまう。トランスミッションやデフなども暖機対象を考え、速度は40km/h程度までにおさえて走ろう。
最近の車は精度が上がっているから暖機は不要?
近年の車は各部の精度が上がっているから暖機は不要であるという噂があるが、新しい車でも暖機をしたほうがいい。
たしかに金属加工技術は日進月歩で、精度は年々向上している。各パーツのサイズやクリアランス(すき間)は、古いエンジンと比較するとより設計通りに整えられているだろう。
しかしいくら加工精度が上がっても、構成するパーツが熱で膨張する金属製であることと、膨張した後をベストな状態として設計していることに変わりはない。加工精度の向上は冷えている状態でのクリアランスを以前よりもマシにしてはいるが、だからといってエンジン始動直後にアクセル全開をくれてやっても良い、という話には繋がらないのだ。
古い車が長い時間暖機するのはなぜ?
旧車と呼ばれる1980年代あたりまでの車では過剰ではないかと思うほど入念に暖機を行っていることがあるが、これには主に当時の燃料装置の仕組みが関係している。
ガソリンがもっともよく燃えるのは気体の状態だが、エンジンが冷えているときはガソリンが気化しづらいため火がつきにくい。
現代の車はエンジンの冷却水温などの各情報をセンサーによって収集し、それを元にコンピューターが導き出したもっとも適切とされる量のガソリンを霧状に噴射するインジェクションと呼ばれる仕組みを採用している。このシステムでは毎度異なるコンディションでも問題なく火をつけ爆発させることが可能となる。
しかし〜1980年代に主流だったキャブレターと呼ばれる機械仕掛けの燃料装置は、アクセルの踏み具合に応じて決められた一定量のガソリンを、ほぼ水滴のままエンジンへ流すことしかできない。なかば当てずっぽうなやり方のためそもそも火が付きにくく、暖まっていない状態でアクセルを踏み足すとガソリンと空気のバランスが崩れてエンストしてしまうこともしばしば。旧車は水滴状のガソリンが気化しやすいようにエンジンをしっかりと暖めないと、そもそも走り出せないのだ。
ていねいな暖機がコンディションを保つ
本来ならば停止状態でエンジンをしっかりと暖め、その後ゆっくりと走り出し駆動系をじっくり暖めるという2段階の暖機方法を取りたいところだが、騒音や大気汚染などの問題もありなかなかそうはいかない。限られた環境で良好なコンディションを保つためにはていねいな走行暖機が不可欠。今日から心がけてみてはいかがだろうか。