2019年09月04日 (更新:2020年07月29日)
ロールケージの役割って何?
モータースポーツの必需品であるロールケージ。ロールケージとは具体的にどのような役割があるのでしょうか。今回はロールケージの存在を知っているけど、詳しく知らないという人に向けて、ロールケージの基礎知識をご紹介します。
ロールケージって何?
横転やボディが変形してしまうようなクラッシュをしたとき、乗員を保護するためのパイプ状のフレームのことをロールケージといいます。レース車両など、サーキットで競技をしている車両で見かけることができ、サーキット走行の必需品です。
ロールバーと呼ばれることもあり、まれに「ロールゲージ」と呼んでいる人もいますが、正しくは「ロールケージ」なので覚えておきましょう。今回はそんなロールケージに関する基本知識をご紹介していきたいと思います。
主な素材
ロールケージは主にスチール、もしくはクロモリを材質として使用しています。クロモリとは炭素鉄にクロームとモリブデンを添加した合金のこと。スチールと比べて1.5倍もの強度を誇るため、クラッシュ時の安全性を確保するには打ってつけの素材です。
ただし、価格面ではクロモリよりもスチールの方がリーズナブルなので、スチール製ロールケージの方が使用率が高くなっています。高強度かつ軽量のアルミ製も存在しますが、ファッションアイテムとしての使用が多く、競技において使用することはできません。
競技やレギュレーションによって、素材やパイプ径が指定されていることがあります。自分が参加してみたいモータースポーツが決まっている場合は、まずは競技の規定をチェックしたあとにロールケージを導入するようにしましょう。
剛性アップの役割もある
ロールケージの主な役割は乗員の保護です。しかし、スチールやクロモリなどの丈夫な素材の製品をボディに組み込むことで、ボディ剛性を向上できるというメリットもあります。実は車はコーナリングの際、ボディがねじれています。
ボディにねじれが発生すると、前輪と後輪のタイヤのグリップが低下。それに伴いコーナリング速度も低下してしまいます。そんなときにロールケージを組んでいれば、ボディのねじれを抑制してコーナリング速度をアップすることが可能です。
ロールケージの種類
ロールケージは複数のパイプで構成されているので、ひと口にロールケージとはいっても、パイプの本数などによって様々な種類が存在しています。基本的な形状は4点式、6点式、8点式の3形状です。パイプの数が多ければ多いほど安全性と剛性が向上します。
ロールゲージの基本形状
6点式ロールゲージ
6点式ロールケージは最もメジャーな形状です。車内空間全体を覆うような形状で、ボディに6本のバーが接地しています。後述する4点式ロールケージにフロント部分の2点を追加することで、前方衝突時も高い安全性を確保することが可能です。
4点式ロールゲージ
4点式ロールケージも6点式ロールケージと同様、人気のある形状として知られています。こちらはボディのBピラーよりも後ろに、4本のバーが接地しているタイプ。フロント部分にバーがない分安全性は低下しますが、その分リーズナブルな価格で販売されています。
フロント4点式ロールゲージ
フロント4点式ロールケージは文字通り、ボディのBピラーよりも前に4本のバーが接地しているタイプです。リア席に接地しないので、後部座席の定員数を変えずに組むことができます。通常の4点式ロールケージに比べるとマイナーな部類に入ります。
基本形状にオプションバーを追加する
ロールケージは前述した4点式、6点式、8点式以外にも様々な種類が存在しています。中には10点式のようなものもありますが、あくまでロールケージの基本は4点式、6点式、8点式の3種類。そのほかのロールケージは基本形状にオプションバーを追加したものです。
オプションバーには斜行バー、クロスバー、リアセンターバー、リアバイザーバー、メインセンターバー、サイドバーなどがあります。これらのオプションバーを上記の基本形状に組み合わせることで、5点式や10点式などのロールケージが完成します。
5点式ロールケージの例
5点式ロールケージは車体後部を中心に保護する4点式ロールケージに、斜行バーを追加したスタイルのこと。ボディとの接地は4本ですが、後ろ2本にななめのバーを追加することで、強度を高めることができます。
10点式ロールケージの例
10点式ロールケージは6点式ロールケージに、サイドバー、斜行バー、リアセンターバーを組み合わせたスタイルのこと。10点式以上のロールケージはバーが鳥かごのように配置され、安全性と強度を大きく向上させてくれます。
ロールケージにはデメリットもある
安全性およびボディ剛性を向上できるロールケージ。モータースポーツには欠かせない必需品ですが、ロールケージの導入はメリットばかりではありません。例えば、スチール製6点式ロールケージを装着すると、およそ20kgの重量増加になります。
また、車内空間の快適性が低下してしまうところも大きなデメリットです。場合によっては後部座席に乗員を乗せることができなくなってしまいます。さらに、オプションバーのひとつであるサイドバーを組むと、乗降性が低下するという欠点もあるので注意しましょう。
公道を走ってもいいの?
モータースポーツをはじめるにあたって、ロールケージを導入したいと考えている人もいるでしょう。ロールケージを組み込んだ車で公道を走行する際は、以下の項目の対策が必要になります。なお、サーキット走行しかしない場合は以下の対策は必要ありません。
緩衝材などをパイプに巻く
ロールケージを組んだ車で公道を走行する際は、パイプに緩衝材などを巻く必要があります。ロールケージは金属素材のパイプの集合体なので、万が一事故などが発生してしまうと、乗員の安全性を確保できないことがあるのです。
乗員がロールケージで頭を強打してケガをしてしまっては、ロールケージを装着している意味がありません。そのようなことになってしまわないように、ロールケージを組んだ車で公道走行するときは緩衝材などを巻いて、乗員保護を努めるようにしましょう。
定員数の変更が必要
ロールケージの種類によっては、後部座席が使用できなくなることがあります。2名乗車用のロールケージや斜行バーの追加などがそれにあたりますが、乗車定員が変わる場合、乗車定員数の変更を届け出る必要があるのです。もちろん、元々が2名乗車の場合は変更不要です。
まとめ
今回はロールケージに関する基本知識をご紹介しました。ロールケージがモータースポーツにおいて、いかに重要な役割を担っているかがわかったと思います。モータースポーツは安全が確保されているとはいえ、危険であることに変わりはありません。
自分が気を付けていても、クラッシュに巻き込まれることだってあります。そんなときに自分自身の守るために、ロールケージは絶対に必要です。これからモータースポーツをはじめたいと考えている人は、ロールケージの装着からはじめましょう。
製品にもよりますが、ロールケージは基本的に高価です。製品代と取り付け工賃を合わせると、大きな出費となります。しかし、自分自身の安全を確保できるうえにボディ剛性が向上するというメリットもあるので、決してムダな出費にはなりません。モータースポーツを始める際には是非取り付けを検討してみてください。