トヨタとレクサスのお店は何が違う? | CARTUNEマガジン
トヨタとレクサスのお店は何が違う?

2019年06月30日 (更新:2020年08月21日)

トヨタとレクサスのお店は何が違う?

2005年に日本国内での営業を始めたレクサスは、現在ではトヨタブランドの高級車として広く認知され、日本全国に多くのレクサス店が軒を連ねるようになっています。レクサスが一般的に知られるようになり、トヨタブランドとの線引きが非常にあいまいになってきました。今回は、レクサスブランドとは一体何だったのか、トヨタブランドと分けた意味合いはどこにあったのかを解説していきます。

高級車ブランドレクサスの成り立ち

つかささんのRCホイールの画像
つかささんのRCホイールの画像
引用元:つかささんの投稿

そもそもレクサスブランドが立ち上がったのは1989年のアメリカです。 当時、トヨタブランドとしてアメリカに進出していましたが、大衆車ブランドのイメージが抜けず、アメリカの富裕層からは敬遠される存在でした。どんなに良いクルマを作っても、ブランドイメージが先行し、「安い・壊れないクルマ」と思われ、クルマの質を正当に評価される状態ではありませんでした。そこで、トヨタと乖離させたレクサスブランドを立ち上げ、アメリカの富裕層に良質なクルマとサービスをアピールしたのです。

レクサスの本質は「おもてなし」

日本のクルマ業界では当たり前の「代替(だいがえ)」(同じメーカーでクルマを買い替えること)に繋げるための、ディーラーでのサービスが、アメリカでは文化として根付いていませんでした。アメリカでは「クルマが良ければ買う」ということが当たり前であり、そこに営業マンとのつながりや、お店のサービスの良し悪しは関係ありません。つまり、メーカーが良いクルマを作れば売れるし、そうでなければ他社へ流れる、このような売りっぱなしの営業が通念として蔓延っていたのです。

そこで、日本での代替率の高い売り方をしていたトヨタは、アメリカで度外視されていたアフターサービスに着目し、行き届いたアフターサービスと、店舗での日本流のおもてなしを軸にして、レクサス事業を展開しました。これが見事にハマり、一流ホテルのような接遇と、高いレベルのアフターサービスで、アメリカの高級車市場を席巻していきます。

欧州での苦戦とグローバル展開

ryohei.kさんのGSGWL10の画像
ryohei.kさんのGSGWL10の画像
引用元:ryohei.kさんの投稿

アメリカで大成功を収めたレクサスは、自動車文化の発信地である欧州へ進出します。そこで自動車文化の歴史を慮る欧州ユーザーに苦戦を強いられます。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディといった古くからの歴史のあるクルマを好む欧州のユーザーには、新参者のレクサスは到底受け入れられることは無く、販売に苦戦を余儀なくされます。

トヨタ本社では、このような状況を鑑み、レクサスブランドを、これまでのトヨタ・トヨペット・カローラ・ネッツといったチャネル制の考え方から外し、社長直轄事業として注力することとしました。全世界でのレクサスブランドの浸透も、レクサス事業の中での重要な柱と考え、世界進出とともに、本国である日本導入が始まります。

スタッフもお店も全て別物

blats2004さんのRCASC10の画像
blats2004さんのRCASC10の画像
引用元:blats2004さんの投稿

トヨタの販売チャネルは4つあり、トヨタ店・トヨペット店・カローラ店・ネッツ店と取り扱い車種が異なります。それぞれのお店には、通常、それぞれの地域の資本家が経営しており、同じトヨタといえど、ほとんどすべてが別会社です。日本全国にあるトヨタのお店は、ほとんどが地場資本で経営されており、トヨタ自動車本社が管理しているメーカー資本のお店はごくわずかです。これは、経営が安定するにしたがって、トヨタ自動車は地場資本に経営権を売り、販売の現場から離れるからです。よって東京地域は別ですが、地方都市でのメーカー資本ディーラーは、経営に難ありで、メーカーの力を借りないと立ち行かなくなっているお店となります。

ここまでで、同じトヨタといえど、別の会社が経営していることを理解いただけたと思います。2005年のレクサス国内導入に伴い、トヨタ自動車は、各販売会社にレクサス事業に参入するか否かを問い、それに賛同した販売会社にレクサスの販売権を与えています。したがって、全国各地のレクサス店を経営しているのは、ほとんどが、その地域のトヨタのお店であり、店舗スタッフもトヨタ販売店からの異動をしてきているのがほとんどです。

トヨタ販売店のスタッフになるには

トヨタのお店で働くには、その地域のトヨタのお店を経営している会社に採用されれば可能です。新卒・中途採用などで正社員となって、店舗に営業スタッフとして配属されれば、その日からプリウスでもクラウンでも売ることができます。もちろん採用試験はありますが、これはメーカーの基準ではなく、地域の販売会社の基準で採用されていきます。したがって、トヨタの看板を背負いながら働くのは意外と簡単です。

レクサス店のスタッフになるには

うさまる【チーム チャップリン副リーダー】さんの画像
うさまる【チーム チャップリン副リーダー】さんの画像
引用元:うさまる【チーム チャップリン副リーダー】さんの投稿

レクサス店のスタッフとなると、そう簡単ではありません。ここからは筆者の体験も交えながら説明していきます。

まず、トヨタ販売店に採用され、トヨタ車を売る営業として働きます。雇用されている販売店がレクサスのお店を持っていて、レクサス店の人員に空きが出て、トヨタ販売店で目に留まる成績を上げていれば異動のチャンスが巡ってくるかもしれません。

レクサス店の人員は、トヨタ自動車レクサス国内営業部への登録制となっており、トヨタの営業スタッフのように、販売店側だけで決められるものではありません。ごく少数の限られた人材だけが触れることを許される領域で、基準は極めて厳しいものです。

登録が済むと晴れて異動となりますが、すぐにレクサス車を販売することはできません。販売はおろかショールームでの接客も基本的には禁止です。レクサスで接客をするためには、専門の研修所で泊まり込みの研修を受ける必要があります。これは初めてレクサス店に足を踏み入れたスタッフが全員受講しなければならないもので、トヨタでの営業経験が何十年あっても免除されることはありません。店長やエンジニアも例外ではありません。ここで、レクサススタッフとしての「姿勢」「言葉遣い」「所作」「礼儀作法」などを叩き込まれます。同時にレクサススタッフとしての知識も植え付けられるのです。

blats2004さんの画像
blats2004さんの画像
引用元:blats2004さんの投稿

小笠原流礼法と呼ばれる、レクサスで取り入れられている所作礼儀作法は、無駄がなくスマートかつ、美しい自然な動きを体現するもので、歩き方から立ち居振る舞い、言葉遣いに至るまで、すべてがトヨタスタッフと比べて上流です。一流ホテルのような、隙のない応対がレクサスの最大の特徴であり、値引きなし、忖度なし、すべてのお客様が皆平等という、「営業マン」の当たり前を全て取り払った営業スタイルを確立します。

店舗も特別

えーだぶさんのRC FUSC10の画像
えーだぶさんのRC FUSC10の画像
引用元:えーだぶさんの投稿

トヨタのお店のほとんどは、看板の色の制約はあるものの、ショールームや整備工場などの建物は千差万別であり、統一感はありません。これは、地場資本の会社が、作りたいお店を、作りたい時期に作っているためであり、全国統一の規格はないからです。

しかし、レクサスのお店は、プラチナムシルバーのエンブレムが輝き、外装は黒色に統一、駐車場のタイルの色はグレー、店舗内の床の色は白色で統一され、商談テーブルからオーナーズラウンジのイスやテーブルに至るまで、全国どこのお店に行っても同じです。お茶の湯呑やコーヒーカップなどの小物類も、同じものを使っています。

これは、メーカー側がレクサス販売店を作る際のルールを厳格化し、少しでもルールを逸脱したお店はレクサス店として認めないからです。店舗ごとの独自の設備を置くのにも、一つ一つ申請が必要となり、レクサスの風土を壊さないものだけが認められます。店舗デザインの改修となると、全国一斉に改修工事が行われ、メーカーからは改修工事の竣工期限が決められます。

これほどまでに、形や格式に拘り、店舗などのハード面から、人材などのソフト面にまで、メーカー側の指導が入るのは、国内ではレクサスだけでしょう。トヨタ以外の他メーカーでもこのような厳格なこだわりはなく、販売現場任せとなるのが通例です。レクサスは、トヨタ自動車とも違う、唯一無二の空間演出です。

まとめ

pepeさんのGSARL10の画像
pepeさんのGSARL10の画像
引用元:pepeさんの投稿

トヨタ自動車の1チャネルと思われているレクサスですが、メーカー側のこだわりは並々ならぬものがあり、もはやレクサスという一つの会社です。単にトヨタの高級車というわけではなく、自動車ディーラーという概念を、根本から覆す、雰囲気や空間づくりをしています。

レクサスには、レクサスブランドを背負い、販売し整備するスタッフのプライドと、レクサス車を購入し、レクサスオーナーとなった顧客がもつプライドを、どちらも満足させる風土が根付いています。ショールームは舞台であり、そこに立つものはレクサスを体現する演者です。普通の自動車ディーラーとは気品やブランドに対するプライドが、最も違う点なのでしょう。

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