サーモスタットとはどういう部品?交換方法はどうなっているのか | CARTUNEマガジン
サーモスタットとはどういう部品?交換方法はどうなっているのか

2019年05月02日 (更新:2020年07月28日)

サーモスタットとはどういう部品?交換方法はどうなっているのか

サーモスタットはエンジンの水温を制御する大切な部品。サーモスタットが壊れてしまうと、場合によっては水温が上がり続け、オーバーヒートを起こしてしまいます。水温計の動きに異状を感じたらサーモスタットの故障を疑ってみましょう。

サーモスタットの役割・構造

役割

車におけるサーモスタットは、冷却水の温度を検知して開閉するバルブによって水温を調整する役割を果たします。サーモスタットはラジエターの入り口に取りつけられ、水温が低い暖機時には閉じることで冷却水がラジエターへ流入するのを防ぎ、水温上昇を促進させます。

エンジンが温まった状態では、ラジエターへの入口を開放することで、冷却水を走行風で冷やし、水温を一定に保つ働きをします。

構造

サーモスタットは、温度を変化により変形する金属とバネを組み合わせた構造です。常温ではバルブはバネの力で閉じられており、水温が金属の変形温度に近づくにつれてバルブが徐々に開き、ラジエターに流れる冷却水量を独立して制御することが可能です。

サーキットなど限定使用下では、開弁温度を低く設定し、水温上昇を穏やかにするローテンプサーモスタットも用いられます。

サーモスタットを交換するタイミング・目安

与助さんのマイティボーイの画像
与助さんのマイティボーイの画像

走行距離10万kmが交換のおおまかな目安ですが、交換時期は車の状態や使われ方によって大きく異なります。あまり使われていない車は閉じた状態で固着しやすく、頻繁に使われる車は開いた状態で固着する傾向にあります。場合によっては廃車まで交換不要なケースもあります。

交換する際には冷却水を抜かなければならないため、交換冷却水の交換時にあわせて同時に交換するのがよいでしょう。10万km近くなった重整備時に予防の意味を込めて交換することをおすすめします。

サーモスタット故障の症状

下り坂などでエンジン回転数が低く、速度が高い状態で水温計が下がるようなら開いたまま固着しているため、交換が必要です。この状態では燃費性能の悪化が懸念されます。

また停車中や、エンジンの回転数を上げると水温が上昇する場合は、サーモスタットが閉じたまま固着しています。オーバーヒートにならないように速やかな交換が必要です。

交換手順

もくさんのランドクルーザー60の画像
もくさんのランドクルーザー60の画像

クーラントを抜く

高温時の冷却水(クーラント)は高圧がかかっているため、非常に危険です。サーモスタットおよび冷却水交換作業は必ずエンジンが冷えた状態で作業をおこないましょう。

まずは、ラジエーター下部のドレンボルト(ドレンコック)を開け、冷却水を抜きます。ラジエター上部のラジエターキャップを外すと、冷却水が抜けやすくなります。

アッパーホース(あるいはロアホース)のエンジン側についているサーモスタットハウジングのボルトを外し、ハウジングを破損させないように外しましょう。ハウジング内にサーモスタットが設置されています。

サーモスタットを外して新しいものに取り換える

サーモスタットを交換し、ハウジングを元に戻します。車種によっては冷却水の漏れ止めとしてゴムパッキンや金属パッキン、液体パッキンが塗布されているものがあるので、古いパッキンはキレイに剥がし、新品のパッキンに交換あるいは、新しい液体パッキンを塗布してハウジングを戻します。

ハウジングボルトは、締めすぎによるは破損を防ぐため、トルクレンチで規定トルクになるように管理しましょう。

冷却水を入れる

外していたラジエタードレンボルトやドレンコックに新品のドレンワッシャーを組み付け、ラジエターに取りつけ冷却水が抜けないように封をします。ラジエター上部から冷却水を一杯近くになるまで入れ、キャップをせずにエンジンを始動。ヒーターをオンにし、ヒーターコアにも冷却水を循環させます。

冷却水が循環すると、ラジエター内の冷却水が減るため、減ったぶんだけ冷却水を補充。冷却水が減らなくなるまでこれを繰り返します。

ラジエターのエア抜き

空気は冷却作用を持たないため、ラジエターに混入した空気はオーバーヒートの原因になります。そのため冷却水を交換する際はエア抜き作業が必須になります。

十分な量の冷却水がエンジンに入り、水温が上がりきった状態で、エンジン回転数を2〜3,000rpmにまで上げ冷却水の循環を促し、ラジエターキャップから気泡がでてこなくなるまで続けます。

エア抜きが完了したらラジエターキャップをしっかり閉めてサーモスタットの交換作業は完了です。

サーモスタットの交換費用

与助さんのマイティボーイの画像
与助さんのマイティボーイの画像

部品代

品名:価格

  • サーモスタット:2,000〜3,000円
  • パッキン:約500円
  • 冷却水(LLC)1台分:約3,000円
  • ドレンワッシャー・ドレンコック・パッキンなど:約200円
  • 合計:5,700〜6,700円

品名価格
サーモスタット2,000〜3,000円
パッキン約500円
冷却水(LLC)1台分約3,000円
ドレンワッシャー・ドレンコック・パッキンなど約200円
合計5,700〜6,700円

工賃

サーモスタットの交換工賃はおよそ5,000円前後。部品代を合わせて12,000円前後が相場です。輸入車ではやや部品代や工賃が高くなる傾向にあります。また、国産車でもMRやRRなどのエンジンとラジエターが離れている車では作業に時間がかかり、工賃が高くなる場合があります。

まとめ

さかまたさんのエブリイワゴンDA64Wの画像
さかまたさんのエブリイワゴンDA64Wの画像

エンジン冷却を水にたよる水冷エンジンでは、サーモスタットが大きな役割を果たしています。サーモスタットが閉じたまま固着してしまうと、オーバーヒートにつながり、熱によって歪んだエンジンを修理するには何十万円もの費用がかかってしまう場合があります。とはいえ、最近の車でそうなることは稀であり、多くの車は経年劣化でわずかに開いたまま固着して、動きが悪くなっている状態で放置されているのが現実です。

その状態では故障の心配はないものの、燃費の悪化や、冬場のヒーターの効き始めまでに時間がかかるなどの症状が気づかないうちに発生しています。サーモスタットは、5年もしくは走行距離5万kmを経過しているのであればタイミングを問わず交換しておきたい部品です。

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