2019年05月11日 (更新:2020年08月24日)
不正を働いていた!?三菱の過去に迫る!
ダイナミックシールドなどの新デザインテーマが話題の三菱自動車。その質実剛健な車づくりは、好事家達から高い評価を得ています。しかし、過去には企業としての在り方を問われるほどの重大な不祥事を起こしたこともありました。今回は、三菱が過去に行っていた不正がどのようなものだったのか解説していきます。
三菱リコール隠し
2000年
最初のリコール隠しが発覚したのは2000年のこと。1977年から約23年という間、当時三菱が販売していた10車種、台数にして約69万台分に上る重要な不具合情報を運輸省へ報告せずに隠蔽していたことが、三菱社員から匿名での内部告発で発覚しました。
三菱側は、ユーザーから寄せられた不具合情報に関して重要度の高い順に細かく分けて管理しており、秘匿における巧妙さも報じられています。
また、販売した車両に起こった不具合に関して運輸省への連絡をしないまま、直接ユーザーとのやりとりで回収・修理をするという「ヤミ改修」も行っていたことも問題となりました。
このリコール隠しにより、当時の三菱自工代表取締役・河添克彦氏は辞任。本社と愛知県・岡崎市の工場も家宅捜査を受けています。
悲惨な事故も…
また、このリコール隠しにより痛ましい事故も発生しています。事故が発生したのは2002年1月10日。神奈川県で重機輸送中だった大型トレーラー「ザ・グレート」の左前輪が脱輪。ベビーカーを押して歩いていた親子3人に直撃し、母親は死亡。2名の子供もけがを負いました。
それだけでは終わらず、2件目の事故が発生したのは同年10月19日。山口県の山陽自動車道熊毛IC付近で発生しました。
この時も事故を起こしたのは、9トン冷蔵貨物車「ザ・グレート」。このトラックは料金所を通過後、中央分離帯を乗り越えて道路わきの歩行者用地下道の入口に激突。トラックは大破し、運転手の男性は死亡しました。
当時は、事故原因不明で容疑者死亡のまま送検されることで収束を見せていましたが、後の2004年になり、山口地方検察庁が事故原因について車両のプロペラシャフトに構造的な欠陥があったためブレーキの破損を引き起こし、それが事故につながったと判断を下したことから、男性を不起訴処分としています。
本件で、当時の三菱ふそう会長だった宇佐美隆を含む4名は業務上過失致死に問われ、一審で禁錮2年、執行猶予3年の有罪が確定しています。
2004年
この年には、一度目のリコール隠しを上回る約74万台のリコール隠しが発覚しました。このリコール隠しにより、当時の三菱自工の筆頭株主だったダイムラー・クライスラーは財政的な支援の打ち切りを発表。
同年の5月にはトレーラーの脱輪事故を受けて三菱ふそう前会長や元常務ら7名が逮捕され、三菱自工自体も提訴される事態となりました。
一連のリコール隠し問題により、三菱は国から制裁をうけることになります。国土交通省への週一回の報告を義務付けられ、警察庁からは車両の入札指名停止。また、一部の地方公共団体への三菱製車両の購入禁止という措置受けたのです。
その後、この事件は刑事裁判へと発展。全面的に三菱自工と三菱ふそう側の有罪という確定判決が下されることになりました。
三菱の燃費不正
不正が明るみになったのは2016年4月22日。きっかけは燃費数値について、三菱側の届け出と実測値に明らかな差があることを日産自動車側から指摘を受けたことでした。この指摘を受け、三菱と日産で改めて調査を行ったところ、届け出と実測値で約7%ほどの開きがあることが発覚。改めて三菱が測定を行ったうえで、燃費の数値について意図的な不正があったのを認めたのです。
不正は実際の実験データをもとに燃費を申請せず、根拠のない数字を申請していたもの。対象となったのは、三菱の「ekワゴン」「ekスペース(カスタム)」日産の「デイズ(ルークス)」の4車種。さらに、「パジェロ」「アイ・ミーヴ」「RVR」「アウトランダー」についても測定方法が不適切だったと明らかにしています。
この問題を受けて、三菱は全モデルの燃費を再測定する形で事態を収束させました。しかし、その後国土交通省独自の試験において、追加で8つのモデルでも燃費不正が行われていたことも発覚します。再測定試験でも不正を行っていたことから、三菱は「デリカD:5」など販売主力モデルの販売を停止する事態にまで発展しました。
今後の三菱
一連のリコール問題や燃費不正により、一時は企業としての信頼は底に落ちた三菱ですが、現在は企業としての在り方自体を見直しています。取り組みとして、自社の責任で発生した事件・事故を風化させないため、愛知県の技術センターに研修施設として「過ちに学ぶ研修室」を設置。その効果自体はあるのかどうか推し量れませんが、そういった取り組みは評価すべきでしょう。
また、日産の傘下に入ってからの三菱のラインアップは確実に魅力的なモデルが増えてきているのも事実です。先の3月28日にモデルチェンジした「ekワゴン」や軽SUVという新たなクロスオーバーモデルである「ek クロス」など、約60年に渡る三菱の軽自動車開発技術は流石の一言でしょう。
まとめ
検査の方法などは企業の良心頼りであるところが多い現状、ウソ偽りのないクルマの開発に期待していくしかありません。「デリカD:5」などのモデルにファンも多い三菱は過去の過ちと経験を生かして、ファンを裏切らない企業運営を続けていってくれるのではないでしょうか。