2019年04月28日 (更新:2020年08月11日)
ハイブリッド車とターボ車の仕組みをおさらい!
世の中の環境規制が車の歴史を大きく変えつつあります。EVを始めPHV、水素自動車までさまざまな動力に広がりをみせています。そんな中で、昔から馴染みのあるターボを組み合わせ搭載している車も数多くなってきました。目まぐるしく変化していくエンジンの基本を一度おさらいしてみましょう。
ハイブリッド車に関する基本説明
ハイブリッドとはエンジンとモーターを併用して動力にして車をうごかしているものという認識くらいで、あまり分かっていないという人もいるかもしれません。実はハイブリッド方式にも種類があるのです。
シリーズ式
シリーズ式は構造として最もシンプルでエンジン発電式EVといえるかもしれません。基本的にはEV、電気自動車です。バッテリーを搭載、その電力でモーターを動かし、モーターの力のみで走行するというもの。
エンジンは発電専用なので、発電効率だけを考えた設計です。最も効率の良い回転数、出力で発電機を動かすことが可能。また、エンジンとモーターが完全に切り離されているため、バッテリーが十分補充されていればEV走行もできます。
ただ、走行時はモーターのみの電気自動車なのでエンジンを補助に使った走りはできず、中高速域の走行は得意ではありません。またエンジン、発電機、ガソリンタンクを搭載しているため車両重量が重くなり、車内空間が狭くなることも。
国産市販車には日産ノート、世界的にはシボレーボルトがシリーズ式として初の量販車です。
パラレル式
パラレル式はエンジンとモーターを併用して動力としています。走行時にはエンジンがメインとなるのでモーターアシストのガソリンエンジンということができるでしょう。ひとつのモーターが駆動と発電機2つの役割をこなすことになるため、どちらか一方の働きしかできません。
バッテリーに電気が蓄えられていればモーターはエンジンを助ける働きをしますが、電池が無くなると発電機として充電します。エンジンが動力源なので、軽量化と低コスト化を実現することが可能になりました。ただモーターが発電機を兼ねているため駆動と充電を同時に行うことができません。またエンジンのみで走行することもあるため、燃費性能がほかの方式に比べると少し劣るということもあるでしょう。
採用車種にはホンダのフィットハイブリッドやCR-Zなどに搭載される「IMAシステム」のほか、スズキの「S-エネチャージ」もパラレル式ハイブリッドの一種です。また、フォルクスワーゲンのプラグインハイブリッドであるゴルフGTEでも採用されています。
シリーズパラレル式
「スプリットハイブリット」や「トヨタ式ハイブリッド」、「ストロングハイブリッド」ともいわれています。自由度の高さと制御の難しさが特徴です。エンジンと駆動モーターと発電機をひとつずつ搭載し、走行環境に合わせてモーターのみ、モーター+エンジンというように最適な組み合わせを選び走行します。
つまり走行エネルギーによる回生、エンジンによる充電、エンジンを停止した電気自動車であるEV走行もできるということ。発電機があるため充電しながらの走行が可能になり低燃費を実現した方式です。
採用車種はトヨタプリウス、アクアなどのトヨタハイブリッドシステムであるTHSでトヨタのハイブリッド車に搭載されているほか、トヨタから技術提供を受けているマツダやスバルでは一部搭載されている車種もあります。
インテリジェント・デュアル・クラッチ・コントロール
少し特殊なハイブリッド方式でエンジンとモーターをひとつずつ搭載し、モーターが駆動と発電機の2つの役割を担うというもの。クラッチを2つ搭載し、それをつなげたり離したりすることでモーターのみ、モーター+エンジン、エンジンのみと切り替え、走行を使い分けることができます。厳密にはパラレル式に分類されるものですが、この方式を取り入れているのがニッサンです。
シリーズパラレル方式はトヨタ、パラレル方式はホンダがそれぞれ特許を持っているため、他のメーカーは技術提供を受けるか、全く新しいハイブリッド方式を開発するしかありません。
ハイブリッドの歴史
ハイブリッドといえば1997年10月に世界初量産ハイブリッド乗用車として発表されたプリウスが最初だと思っている人は多いのではないでしょうか?実はそうではありません。遡ること1899年、ローナーポルシェのフェルディナント・ポルシェ博士が製造した電気自動車にあります。ハブにモーターを組み込んだ高性能モデルでしたが、渡航距離に弱点がありました。そこでミクステと呼ばれるモデルでガソリンエンジンを発電機に加えたシリーズ式を完成させました。
しかし、当時はガソリンエンジン車の覇権が確定していなかったことやさまざまな動力が混在していて、電気自動車として生き残ることができなかったようです。それから約100年後に日本から世界へと発信されていったハイブリッドの存在が次世代の方向性を動かしていくことになるとは、だれも予測できなかったのではないでしょうか。
ターボ車に関する基本説明
ターボエンジンの誕生前は自然吸気エンジンと呼ばれているNAが一般的でした。自然吸気に対して過給機を搭載したエンジンをターボエンジンといいます。自然吸気エンジンとは、エンジンに空気が自然に導入されるものです。実際には、ピストンが下がったときにエンジン内部の圧力が下がることで空気を吸い込むものですが、吸気を補助するものが他にはないため、一定以上の空気を取り込むことができません。エンジン性能以上のパワーを捻出することもできないのです。つまり、たくさんの空気を取り込み、酸素量が多くなれば、燃料を燃やす効率が上がり大きな出力を得ることができると言い換えられます。ハイパワー、高トルクを実現したのが過給機であり、その代表となるのがターボチャージャーなのです。
ターボといえばターボラグの存在を否定できません。これはアクセルを踏んでからターボが効き始めるまでのタイムラグのこと。エンジン回転数が低い時にアクセルを踏み込んでもすぐにしっかりとした加速が得られず、ワンテンポ遅れて加速が始まるというもののことです。
ターボラグはどうしても起こる現象なので、解消することは難しいと言われています。
1980年代のスポーツカーに搭載されていたターボは、大きな排気量にターボを搭載することで鋭い加速と、さらなる最高速度を生み出すことを目的に作られていました。そのため燃費が10㎞/Lを切っているものが多くターボは燃費が良くありませんでした。
環境性重視のターボ
今まであまりイメージの良くなかったターボですが、最近「ダウンサイジングターボ」という言葉をよく耳にするようになりましたよね?これはターボエンジンを燃費向上のために活用するというもの。低燃費でありながらハイブリッドとは全く違います。
内燃機関であるエンジンと小型のターボを採用し、電気モーターは搭載されていません。昔のような高出力を出すためにターボを使用するのではなく、レスポンスと低速トルクを重視し、エンジンの性能低下を補う役割を担います。ターボチャージャー自体は燃費を増加させてしまいますが、排気量の低下や気筒数を減らすことで基本的な燃費の向上と軽量化の効果が生まれます。つまり、さまざまなものをダウンサイジングし、ターボと組み合わせることによって走りの質を落とすことなく低燃費を実現しているのです。
現行ターボ車
昔とは全く違うかたちで搭載されている新しいターボ車の数々を紹介します。
マツダ CX-5
2.5Lのガソリンターボ。注目されるのは、4本のシリンダーから出ている排気管を3本にまとめ、さらに1本に集約する4-3-1排気マニホールドにした、ダイナミックプレッシャーターボ技術を採用していること。また、クールドEGRの採用によりターボに起こりがちなノッキングを抑制していることも特徴的です。
ニッサン GT-R R35
3.8L V6ツインターボ。VR38DETTエンジンはフラッグシップスーパースポーツであるGT-Rの心臓として毎年改良を重ねて作り上げたものです。
2019年4月17日、同年6月に発売される2020年モデルが発表されました。また「GT-R NISMO」、「GT-R 50th Anniversary」モデルも公開されています。見る角度によって表情を変える「ワンガンブルー」を是非実物で見てみたいものですね。
スズキ スイフト
2017年に発売されている1.4L直噴ターボエンジン搭載のスイフトスポーツ。970㎏と軽量でスポーツカーの軽快な走りを備えた動力性能と、高速域での操縦安定性能を実現しています。スイフト初のターボエンジンを楽しめそうです。
現行ハイブリッド車
各社から新しいハイブリッド車も続々登場しています。
トヨタ CH-R
最近人気のあるSUV。CH-Rは1.8L直列4気筒です。「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ―」の頭文字から取った「TNGA」をプラットフォームにして、パワートレインは全てプリウスをベースに製造されています。開発リソースは削減しながらも、動力性能、燃費性能、などは大幅な向上を実現しました。これにより驚くほどの快適なドライビングを可能にしています。
セレナe-POWER
e-POWERはエンジンが発電に専念し、駆動はモーターが担うシリーズ式ハイブリッドです。システムはノートと同じでエンジンも1.2Lのままですが、最高出力や駆動モーターの出力をアップさせ、リチウムイオン電池の容量を拡大するなど、細部まで最適化しています。カタログ燃費26.2㎞/ℓで人気の高いモデルとなっています。
ターボを搭載するハイブリッド車
ハイブリッドでありながらターボを搭載する新しいかたちの車も登場しているので、紹介します。
スズキ ワゴンR
2017年にフルモデルチェンジが行われたワゴンRスティングレーは水冷4サイクル直列3気筒インタークーラーターボです。そのうえクリープ走行でのEV走行が可能で、ハイブリッドシステムを搭載といえるようになりました。2WDで28.4㎞/Lのカタログ値。軽ワゴンでは他社にはない低燃費を獲得しています。
スズキ クロスビー
直列3気筒1Lターボを搭載し、マイルドハイブリッドも併用しています。ターボの過給効果は比較的低い回転域から発動。1,500回転付近での落ち込みが少なくスムーズで運転がしやすいようです。4,000回転を超える高回転域でも運転がしやすいという声も。居住性、積載性に優れ、走破性もあるため人気が高いようです。
ホンダ NSX
NSXといえば、1990年代は横置きで切れの良いNAのスポーツカーでした。2005年に販売を中止してから10年を経て2016年に3.5L V6ターボエンジン+モーターというハイブリッドスポーツとして新しく生まれ変わっています。2019年5月にマイナーチェンジをした新型が登場する予定に。エンジンシステムの構造に大きな変更はありません。しかし、インテグレーテッド・ダイナミクス・システムにより、走行シーンに応じて車の特性を変更することができます。ハイブリッドシステムでは、最高出力では世界のスーパーカーに比べると非力だと言われることがありますが、サスペンションの熟成や制御系の見直しで、力ではなく、高い運動性能で勝負できるスポーツカーになったのではないでしょうか。
まとめ
新技術の開発ばかりに目が行きますが、今までの技術を活かして取り込むことのできる柔軟性の高さがこれからの車には必要なのかもしれません。まだまだこれから新しい扉を開くことのできる車であってほしいものですね。