2019年06月05日 (更新:2020年08月11日)
最低限知っておきたいカーボンのこと
自動車のパーツにカーボンが使われているモノがあることを知っていても、カーボンそのものがなんなのか分からない、という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、巷でよくいうカーボンの正体についてご紹介します。
カーボンとは
定義
カーボンとは炭素のことです。原子番号は6番であり、元素記号はC。非金属元素で、単体のままでも化合物にしてもいろいろな形状をとることが可能な元素です。一般的に自動車業界でカーボンといえば、アクリル繊維や石油・石炭などを原料にして炭化させて作った繊維のこと。これを炭素繊維といいます。
JIS規格(日本工業規格)で、その規格について定められていて「有機繊維のプレカーサーを熱炭素化処理して得られる、質量比で90%以上が炭素で構成される繊維」と規定されており、アクリル繊維を原料とした場合はPAN系、石油・石炭などを原料とした場合はピッチ系と区別されます。
特長
炭素繊維最大の特徴は、なんといっても「軽くて丈夫」であること。次から、炭素繊維が持つメリットとデメリットについて詳しく解説します。
カーボンのメリット・デメリット
メリット
炭素繊維がもつメリットは「軽さ」と「丈夫さ」です。「軽さ」は、比重で鉄の1/4しかありません。物質の重さは密度により表現され、物質を構成する原子の重さと配列によって決定されます。
密度で比較してみると、アルミニウムが27.0、鉄が55.8、金が197.0ですが、炭素の原子量は12.0しかありません。また、同じ炭素原子で構成されているダイヤモンドと比較してみても、ダイヤモンドの密度は3.52g/㎤、鉛筆に使われている黒鉛で2.25g/㎤と違う密度になっています。
この炭素原子の配列の〝すき間〟が広いために、炭素繊維は金属と比べて軽いのです。強さの秘密は、炭素原子の配列方法に由来しています。炭素原子は3方向で互いにつながっているので、網平面方向での引っ張り強度が強いため強靭な性質を持っているのです。
デメリット
炭素繊維が持つ工業的なデメリットは3つ。加工しにくい、デザインに向かない、値段が高いことです。炭素繊維で成形された製品は金属ではないため溶接もできず、削り出すことも難しいうえ、補修も不可能です。
強度を犠牲にしたタイプの炭素繊維ではある程度融通が利くケースもあるようですが、それでは炭素繊維本体の特性を生かしきれません。さらに、炭素繊維は基本的に色が黒であり、塗装は非常に困難。表面が繊維形状に依存することから、デザインすることも難しい素材です。
まれに、色付きのカーボンシートが販売されていますが、そのほとんどは色をつけた繊維を混合したものであり、ピュアな炭素繊維シートであるとはいいがたいのです。また、コストの高さは、炭素繊維の製造方法がネックになっています。
冒頭で、炭素繊維は熱炭素化処理をして製造するとお伝えしましたが、この製造方法のせいで工業製品が大型のモノになればなるだけ大規模な設備が必要になるわけです。加えて、気泡が混入したり未硬化のままでは破損が発生してしまうことから、製造には時間もかかってしまうのです。
カーボン製自動車パーツのバリエーションやその価格帯
炭素繊維がそのまま自動車パーツとして流用されることは珍しく、そのほとんどがCFRPと呼ばれる炭素繊維と樹脂を合わせた炭素繊維強化プラスチックとして使用されます。どのような製品があるのか、その一部をご紹介します。
ボンネット
自動車パーツとしてカーボンといえば、カーボンの織り目が美しく映えるボンネットを想像する方も多いのではないでしょうか。
事実、カーボン製のボンネットは多く流通しています。様々なメーカーがクルマの軽量化のためにカーボンボンネットを製造しており、サーキットマシンなどにも積極的に採用されています。比較的大型の製品であるため、価格は150,000円を超えている場合がほとんどです。
GTウイング
エアロパーツとして、カーボン製の人気が高いのがGTウイングです。ステー(取り付け部)から全てフルカーボン製のモノやウイングの部分だけピンポイントにカーボン製になっているものなどいくつかに分けられます。車種にもよりますが、100,000円~ほどで購入できる製品が多いようです。
ホイール
量産化にはいたっていませんが、フルカーボン製のホイールも存在しています。メーカーとして史上初となるフルカーボンのホイールを装備していたのは、2017年の6月に世界限定500台で製造された、ポルシェ・ターボSエクスクルーシブシリーズでした。
本体価格も3334万円~という高額な車体でしたが、オプションとして準備されていたフルカーボンのホイールだけでも約200万円という、まさにハイグレードなオプションだったのです。
カーボンデザインを楽しみたい方向けのカーアイテム
前述したように、高価なフルカーボン製品を購入しなくてもリーズナブルにカーボンでドレスアップする方法があります。それは、カーボンシートを施工する方法。現在、カーボンシートはカー用品店や通販などでも手軽に購入できるほど普及しています。
内装のインパネ周りや、外装であればピラーや給油口に張り付けるのがポピュラーなドレスアップ法となっています。施工自体もDIYレベルで可能な簡単なモノ。購入したカーボンシートを張りたい場所に合わせて切断し、張り付けるだけです。
気泡などが心配という方向けには、エア抜き溝が入れられている製品などもあります。そういった物をチョイスすれば、さらにお手軽にカーボンデザインを愛車のカスタムに取り入れることが出来ます。
まとめ
世の中に出回っているカーボン製品は、一般的にとても高価な製品です。これまで、なぜ高いのだろう?と考えていた人も、今回で理由に納得がいったのではないでしょうか。自動車業界にも浸透しつつある炭素繊維技術で、ドレスアップにも新しい方法が確立されていくかもしれませんね。