2019年06月10日 (更新:2024年03月01日)
ワイトレを装着するなら最低限知っておきたいこと
ホイールスペーサーの派生系であるワイドトレッドスペーサー(通称ワイトレ)の役割や構造、注意点、取り付け方法、工賃などを解説します。
そもそもワイトレとは
ワイドトレッドスペーサー(ワイトレ)とはホイールスペーサーの派生系で、ボルトやナットで大きなスペーサー本体をハブに固定する仕組みのものを指します。ワイトレをいままでホイールが取り付いていた面に装着し、さらにその上からホイールを装着することでホイールを外側に出す仕組みです。
ワイドトレッドスペーサーは通常15mm以上の厚みがあり、中には60mm厚の製品も存在します。
ワイトレの構造と仕組み
ワイトレは次の3つの部品で構成されています。
- アルミやジュラルミン製のボディ
- スチールやクロモリ製の圧入ボルト
- スチールやクロモリ製のナット
ワイドトレッドスペーサーは、アルミやジュラルミン製のボディに、ホイールを装着するためのボルトが圧入されています。これらを車体から出ているハブボルトへ固定するためのナットが付属しています。
ワイトレのボディ
ボルトホールが開いている
ワイトレボディに開いている穴(中心のハブ穴以外)はボルトホールと呼ばれており、車体側のハブボルトが通ります。ここにハブボルトを通してナットで締めることで、車体側に固定しています。ボルトホール径は自分の車種のハブボルトの径に合わせる必要があります。
ワイトレの厚み=ボディの厚み
ワイトレでの厚みとは、アルミやジュラルミン製のボディ本体の厚みのことです。装着すると、ボディの厚み分だけホイールが外側へ移動することになります。
ハブセンターのツバがある
ワイトレの中心の穴のオモテ面周囲にはハブセンタリング用のツバが5mm〜10mmほどの高さで立ち上がっており、ここをホイール裏面に差し込むことで、装着時に正確にセンターを出せるようになっています。ツバの外径はホイールのハブ内径に合わせる必要があります。
裏面は車体側ハブが入る凹型形状
ワイトレの中心の穴の裏面は奥行にして10mm〜20mm前後が大きく凹んでおり、ここに車体側のハブ部分がピッタリ収まるようになっています。ここに車体側ハブを差し込むことで、装着時に正確にセンターを出せるようになっています。この凹内径は車体側のハブ外径に合わせる必要があります。
ワイトレの圧入ボルトと付属のナット
ボルトは圧入されており抜けない
ワイトレから飛び出ているボルトはボディ本体に圧入されており、抜けない&回らないようになっています。このボルトの径を、ホイールに開いているボルトホールの径と合わせる必要があります。また、このボルトのピッチを、ホイールを取り付けるナットと合わせる必要があります。
特殊なナットが付属しているケースがある
ワイトレの固定用ナットは、通常のホイールに使用するようなテーパーの貫通ナットであることがほとんどですが、薄いワイトレの場合は薄型のナットが付属していることがあります。薄型ナットは舐めやすいため注意が必要です。
ワイトレをつける理由・メリット
ワイドトレッドスペーサーを使用することによるメリットには、次のようなものがあります。
ボディとホイールが近づき一体感が生まれる
ワイトレを装着すると、ボディ(フェンダー)とタイヤホイールが近づき、一体感のある見た目が得られます。ホイールをボディにピッタリの位置に調整することをツラを出すといい、ぴったりの位置関係にある状態をツライチと呼びます。
ホイールをそのまま使うため費用が安い
ワイトレは見た目に変化をもたらすにはコスパの高いカスタムです。通常、ホイールの位置を動かそうとするとホイールとタイヤ両方を新調する必要がありますが、ワイトレはホイールよりも安価で購入できるため、コストを抑えてカスタマイズできます。
トレッドが広がり安定感が増す
装着箇所 | メリット | デメリット |
---|---|---|
前輪 | 車両の動きがクイックになる | 直進安定性が悪くなる |
後輪 | 直進安定性が向上できる | アンダーステア傾向が強くなる |
ワイトレを装着すると、左右のタイヤ間の距離が広がるため車の動きがより安定するように感じられます。これはホイールのインセットを変更したときと同じ効果です。直進安定性の向上や、ステアリングを切った時の初期反応が上がったように感じられます。
ワイトレのデメリット
ワイドトレッドスペーサーを使用することによるデメリットには、次のようなものがあります。
わだちに取られやすくなる
厚みのあるワイトレを装着すると、車種によってはわだちにステアリングを取られやすくなる可能性があります。これはワイトレによってスクラブ半径というものが増してしまうからで、ワイトレの厚みを増していけばいくほど現象は酷くなります。しかし、30mmを超えない程度なら体感できるほどの変化はないともいわれています。
足回りの重量が増える
ワイトレは、アルミやジュラルミンでできたボディ部分と、ホイールを取り付けるために圧入された鉄製ボルト、ボディを車体に取り付けるための鉄製のナットで構成されています。
これらが車軸部分に取り付けられるため、足回り、特にタイヤホイールが重くなったのと同じような感覚になります。もちろんブレーキが効かなくなったりするわけではありませんが、バネ下重量が増してしまうことは覚えておきましょう。
タイヤがインナーフェンダーに接触する可能性がある
タイヤホイールが外に出ると、ステアリングを切った時にインナーフェンダーとの距離が縮まることになります。取り付け時は問題なさそうに見えても、接地してから据え切りをしたときや、走行中にサスペンションが縮んだときに接触する可能性もあり注意が必要です。インナーフェンダーと接触してしまう場合は、ワイトレを薄いものに交換するしかありません。
ワイトレ装着時の注意点
ワイトレを装着する時は、次のような点に注意が必要です。
ハブセンター付きのワイトレを用意する
車体のホイール取り付け部の真ん中にはハブ(突起)があり、このハブをホイールの裏面にハメることでホイールを真ん中に保持し、取り付け強度を上げる役割があります。車種専用のワイトレにはハブセンターがありますが、安価な汎用ワイトレではハブセンターが省略されており、ホイールをど真ん中に取り付けることが難しくなります。ワイトレを購入するときは、ハブセンターが装備されているものを選ぶようにしましょう。
ロングハブボルトへ交換が必要
厚いワイトレを使用する場合、車体から出ているハブボルトの長さが足りず、ナットをしっかり噛ませるだけのネジ長さが確保できないケースがあります。このようなときは、ハブボルトを長いものへ打ち替える必要があります。
ホイール裏面の形状をチェックする
ワイトレを車体に装着すると、ワイトレからハブボルトのあまりが飛び出ていることに気づきます(ボルトとナット両方が出ていることも)。この飛び出たハブボルトやナットはホイールの裏面に当たってしまうため、ホイールの裏面がこれを避けるような形状になっているかどうかをチェックするようにしましょう。仮に避けるような形状になっていたとしても、深さを測り確実に当たらないことを確認する必要があります。
ハブボルトの短縮加工が必要
もしホイール裏面の逃げが足りない場合は、ハブボルトを短いものに交換したり、短縮加工をする必要が生じます。薄いワイトレを使用するときは特に注意しましょう。ハブボルトが逃げ切っていないと、ホイールが正しく固定されずハブボルトの破断や緩みによって事故を招きます。
定期的なトルク管理が必要
ワイトレは金属製ですがアルミやジュラルミンのため熱による影響を受けやすいため、定期的に緩んでいないかチェックが必要です。一度つけたら放ったらかし、というわけにはいかないということを覚えておきましょう。緩みを放置すると、ハブボルトが破断して重大な事故を招きます。
ワイトレは車検に通るのか
基本的に、ワイトレを装着した状態でも車検には通ります。世間でワイトレを装着していると車検に通らないといわれている理由は、ワイトレを装着した状態でフェンダーからホイールがはみ出てしまっているケースが多いからです。
ワイトレを装着した状態でも、フェンダーからホイールがはみ出ていなければ車検には問題なく通ります。初めから車検適合となるようワイトレの厚みを検討しましょう。
強度が保証されているものが安心
車検に通るなら、と安価な粗悪品を装着すると、重大な事故を招く可能性があります。事実、安価な中華製のワイトレは本体が割れたりボルトが折れたりという不具合が多発しており、そのようなものを使用しないことも公道で車を走らせるドライバーの責務といえます。
ワイトレの中にはこのような強度試験証明書を発行し品質を保証している製品もあります。多少高価ではありますが、これらの製品を購入するようにしましょう。
ワイトレ装着に必要な作業と工賃
ワイトレ装着時に必要な作業
ワイドトレッドスペーサーの装着に必要な作業は次のようになります。
- フェンダークリアランスなど諸データの測定
- ロングハブボルトへの打ち替え作業
- ハブ面清掃&ワイトレ装着作業
- タイヤホイール装着作業
1.フェンダークリアランスなど諸データの測定
ホイールを外側へどれくらい出せそうか、フェンダーとの位置関係を測定しワイトレの厚みを決定します。同時に、タイヤホイールを取り外してハブの外径やハブボルト径、長さ、ピッチ、ホイール裏面の逃げ深さなどを測定します。
2.ロングハブボルトへの打ち替え作業
ワイトレが手元に来たら、必要に応じてロングハブボルトへ打ち替えます。車種によってはブレーキの固定ボルトを緩めてブレーキキャリパーをズラしたり、ハブを一度取り外すこともあります。
3.ハブ面清掃&ワイトレ装着作業
ワイトレを装着するハブ表面のサビなどを落とし、ワイトレを装着します。状況や製品によってはスレッドコンパウンドなどの塗布が必要になります。
4.タイヤホイール装着作業
ワイトレのうえにタイヤ付きホイールを装着します。新品のワイトレは装着直後に短期間で緩みが起きることがあるため、数十キロ走行したら、座りの確認と増し締めを行う必要があります。
ワイトレ装着作業の工賃
作業内容 | 工賃(相場) |
---|---|
ホイール脱着&ワイトレ取付 | タイヤホイール脱着の2倍(¥8,000〜) |
ハブボルト打ち替え | 左右¥12,000〜、前後一台分¥20,000〜。打ち替えにハブの取り外しが必要な場合は別途追加。 |
ハブボルト短縮加工 | 1本あたり¥800〜。短縮加工後は純正ホイールの装着が不可能になることがあります。 |
ワイドトレッドスペーサーの装着自体に必要な工賃は、お店でのタイヤホイール脱着作業の2倍程度というケースが多くなっています。しかし、測定から発注、装着までをお願いすると別途費用がかかることもあります。
ハブボルトの打ち替えなどではボルト1本あたりで追加費用が掛かる可能性もあるため、一度見積もりを行うのが良いでしょう。なお、ディーラーでは装着自体を断られるケースが増えています。
ワイトレ装着は下調べが重要
ホイールの出面を手軽に変更できるワイドトレッドスペーサーですが、装着には構造理解や部品測定など細かな作業と知識が要求されます。もし少しでも難しそうだと感じたら、カー用品店やショップに相談するようにしましょう。値段は少々高価ですが、それに見合う魅力を引き出してくれます。